世界で最も多くのゾウが生息する国ボツワナが、象牙取引の禁止に向け舵を切った。

 南アフリカ共和国ヨハネスブルクで183の国と地域が参加して開かれているワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)締約国会議で10月3日、ボツワナが、象牙取引禁止へ向けた世界の動きを支持すると表明した。

 これは、条件付き取引を支持する他のアフリカ南部諸国と一線を画する決断だ。最新調査によると、ボツワナには13万頭と最も多く野生のゾウが生息しており、同国の方針転換は象牙問題全体に大きな変化を促すことになりそうだ。

「ゾウを保護するなら、象牙取引は廃止すべきとのコンセンサスが世界的に広がっています」。ボツワナのシェケディ・カーマ環境・野生生物・観光相は会議の席上そのように語り、さらにオンラインで発表した声明でも、「したがってわが国は、明確で全面的、かつ恒久的な象牙取引廃止を支持します」と付け加えた。

 ワシントン条約の元関係者で、現在は象牙市場の全面閉鎖を推進する非営利団体「デビッド・シェパード野生生物基金」で顧問を務めるロバート・ヘプウォース氏は、これは「大地を揺るがす」決断だと思う、とコメントしている。

象牙を輸出できる国の決断

 カーマ氏が声明の中で認めているように、ボツワナはこれまで、持続可能な象牙取引を支持していた。

「わが国はかつて、ゾウの個体群をうまく管理し、条件付きで合法的に象牙取引を行うことを支持してきましたが、もはやそれすら容認できない状況になってきています。私たちは近隣諸国および世界と協力してこの危機を乗り越えなければなりません」

 ボツワナ、ナミビア、ジンバブエは、大量に抱えた象牙の在庫の一部を1999年に日本へ輸出することが認められた。2008年にも輸出国に南アフリカ、輸入国に中国が加わって象牙輸出が行われている。ところが最新の調査によると、この2回の取引がアフリカ中でゾウの密猟を激増させる結果になってしまったという。

 ボツワナの方針転換は、「密猟の削減へ向けた大きな一歩となるでしょう」と、ボツワナに拠点を置く野生生物保護団体「エレファント・ウィズアウト・ボーダーズ(国境なきゾウ)」の代表マイク・チェース氏は語る。

 現在、年間約3万頭のゾウが密猟者の手によって殺され、その象牙は中国やその他のアジアの国々へ違法に運ばれている。これらの国々では象牙細工が珍重され、象牙で作られた芸術作品は投資対象と考えられているのだ。

 種の保全状況を監視する国際自然保護連合(IUCN)の最新報告によれば、アフリカ大陸のゾウは2007年以降約30%減少している。また、ボツワナを含むアフリカ南部での密猟は他の地域と比較してそれほど深刻ではないものの、密猟者の次なる標的はこのエリアへ向かいつつあるという。この報告書は、ワシントン条約締約国会議の開催期間中に公開された。

「条件付き取引可」から全面禁止へ

 現在、ボツワナとナミビア、南アフリカ、ジンバブエに生息するアフリカゾウの個体群については、ワシントン条約の付属書IIに分類されている。これは、生息数が安定し、管理体制も整っているため、象牙取引を条件付きで認めるという分類だ(ほかのゾウはすべて「取引全面禁止」の付属書Iに分類)。

 今回の締約国会議では、付属書Iにすべての種のゾウを含めようという提案がなされた。提案したのは主にアフリカ北部の国々を含む13カ国(ボツワナは含まない)。

 アフリカ大陸全体のゾウの3分の1に当たる13万頭が生息するボツワナは、長い間、ゾウの砦と言われてきた。ところが、カーマ氏によると「2010年に最後に調査して以来、15%のゾウが失われてしまいました。大量殺戮は今も続いています」という。

「わずか5年でおよそ2万頭のゾウが象牙のために殺されたことになります」と、チェース氏も付け加えた。「これは南アフリカあるいはナミビアのゾウの総個体数に匹敵する数です」

 一方、EU(欧州連合)とワシントン条約事務局は、すべてのゾウを付属書Iへ分類することには反対の立場をとっている。

「象牙の販売は保全対策にもなるのです」と、南アフリカの環境相エドナ・モレワ氏は言う。すべてのゾウを付属書Iに分類するのではなく、一部は付属書IIに残しておくべきだと、多くの国が主張する理由はここにある。

「象牙取引で得られた利益を、保全対策に還元することができるためです」。南アフリカをはじめとするアフリカ南部の国々は、健全なゾウの個体数を維持しており、中には「数が増えすぎている」地域もあるという。モレワ氏によると、合法的な象牙取引はゾウの個体数を管理する有効な手段なのである。