宋文洲の傍目八目 マスコミの裏側をご存じですか [1/2]
昨年のワールドカップのことを覚えておられますか。日本VSオーストラリア戦の前ではほとんどのマスコミの予想では日本が勝利することになっていました。
実はあの時、僕はたまたま別のテーマで番組の出演を依頼され、著名なスポーツコメンテーターの方の近くにいました。楽屋ではその方は「日本代表がオーストラリアチームに勝つのは難しい」と雑談していましたが、撮影スタジオに入り、ライトアップされた途端、彼はまったく異なるコメントをしました。
「日本は必ず勝つでしょう」
本人に聞けませんでしたが、テレビ局の知人に「なぜ豹変するか」と聞きましたら、「日本中の期待が膨らんでいる中で、開戦前から『負ける』と言える人はいませんよ」と解説してくれました。
「空気」が電波を左右する
有名な通信社に勤める知人に聞いたことがあります。
「世の中にいろいろなニュースがあるのになぜ地方新聞まで、一面に朝日新聞や読売新聞と同じ記事が多いのですか」
すると彼は「宋さん、地方新聞はわれわれの顧客です。違うニュースを配信すると、『なぜ朝日と読売と同じニュースをくれないのか』と文句を言われますよ」と答えました。
僕は、新聞や雑誌の記者または編集者をやっている知人や友人がたくさんいます。これらのマスコミの人の中には、僕は正直言って性格が合わない人がいても、人間として問題のある人はいません。どちらかといえば、社会に興味があってしっかり物事を考えるタイプがほとんどです。そういう人でないと、マスコミを志望しないでしょうし、また入社できないと思います。
そんな人たちの集っているマスコミですが、何か事件があると当事者ではないのに、それを報道したマスコミが悪いと批判されることがあります。そんな状況を見ると、「理不尽な批判を受けて、なんかかわいそうだな」と思います。マスコミも毎日薄氷を踏んでいる世界です。公正さにあまりにも気を使って自分の意見が言えなくなり、少数の意見も取り上げられなくなりま。少数意見は取り上げられないから、少数意見なのですが。
結局、記者が安心して取り上げられるのは、その時点で皆が取り上げるテーマです。そうすれば何かあったら自分だけがつるし上げられるリスクが減るからです。その結果、世論は1つの方向に走りやすいのです。
例えば、最近、飲酒運転による事故や違反が続きました。すると、しばらくは記者がそのテーマを追いかけます。各マスコミの記者が全国各地で「あっ、ここにも」と始まるのです。多くの問題テーマはこうして日本中の関心を引きつけていくのです。
しかし、これはマスコミだけの問題かというとそうではないと思います。マスコミも商売であり、読者と視聴者がいて初めて成り立つものです。より多くの人に読まれたり見られたりするニュースを中心に報道するのは、冒頭に挙げたように読者や視聴者の要望もあるからです。そうした報道姿勢を批判するのは、読者、視聴者自身への批判とも受け取るべきところもあります
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