TPP亡国論のウソ 「TPPは食料自給を考える最後のチャンス」 第2回 庄内こめ工房・斎藤一志代表取締役

日経ビジネスオンライン2011年11月9日(水)09:00
 株式会社「庄内こめ工房」代表取締役の立場にあってTPP賛成論を貫く、斎藤一志氏。山形県鶴岡市で約120戸のコメ農家を束ね、集荷・販売を一手に引き受ける斎藤氏は「TPPは国民の皆さんに食料の自給、いまの農業現場のことを一度考えてもらう最後のチャンス」と語る。

 いま、農業界では、TPP(環太平洋経済連携協定)参加を巡って大きな反対運動が起きていますが、私もこのTPPに参加するのが本当にいいことなのか、さっぱりわかりませんので、いま考えている最中です。

食料生産の仕事はいまや風前の灯

斎藤氏は「TPP交渉への早期参加を求める国民会議」に農業者のパネリストとして唯一参加した
(写真:的野弘路)

 TPPに参加する、しないはともかくとして、いま食料の生産現場で何が起こっているのか。構造改革が非常に遅れ、あるべき日本の国土、田畑を使いながら食料を生産する仕事がいまや風前の灯になっている。TPPの問題は置いておいても、5年か10年で食料の生産が途絶えるのではないか、現場でそう思っています。

 後継者がいないということで、都会から若者を農村に送り込もうというプランはたくさんありますが、実現するはずがありません。収益性が非常に落ちており、15〜20ヘクタールの大規模経営を志した農地でも、思ったような収益が出てきていません。畑作も台風1つで利益が飛んでしまうような世界です。

 そんな中でTPPに参加するということには、農協をはじめ、農家の中には大変不安が広がっているのは重々承知していますが、私は、逆にTPPに参加しながら、国民の皆さんに食料の自給、いまの農業現場のことを一度考えてもらうには、本当に最後のチャンスではないかと思っています。

 10年後にやはり国産の食料が必要だと言われても、それを作る生産者、技術を持っている人たちがもう既にいなくなっていると思います。いま、農家の平均年齢は65歳と言っていますが、一番問題になっている、778%の関税で守っているコメの世界では70歳でしょう。この秋にコンバインで稲を刈っている姿をみると、高齢化がひしひしと感じられます。リタイヤする農家もどんどん出てきています。

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