肩パッド、ついに復活か めぐりめぐる美的感覚の不思議――ひまだね英語
■本日の言葉「○○ is back」(○○が戻ってきた、○○復活)■
肩の力を抜いたゆるい「暇ダネ」の英語をご紹介するこの金曜コラム、今週は肩の力は抜けているかもしれないけれども、思い切り肩をいからせた話題について。何かというと、めぐりめぐるファッションの摩訶不思議。肩パッドの復活についてです。(gooニュース 加藤祐子)
○ジョーダン復活並みの驚き…かどうかは
今週のネタを探していて、「肩パッドが復活(shoulder pads are back)」というBBC記事に激しく驚きました。その昔マイケル・ジョーダンが「I'm back」の二言で引退から復活した時も驚きましたが、それと同じくらいびっくり喜び……というのは噓ですが、まあ、かなり驚いたと。
ニューヨークは今週、恒例の外交ウィークでしたが、ロンドンでは恒例の「ファッション・ウィーク」。そこで色々なデザイナーが、肩パッドやパフ袖で肩を強調したデザインを発表しているのだとか。
何ということでしょう……。
1980年代後半ってついこないだの話でしょ——と勘違いしがちな世代の女性ならば誰しも身に覚えがあって苦笑する、ああ肩パッド肩パッド。まさに「power suit」とか「戦闘服」と呼ばれていた、ボディコンシャスでバブリーな姿の象徴です。
三角錐みたいな肩パッドで肩のラインをキンキンにいからせて、ウェストをギュッと絞り。日本では更に、ソバージュパーマに鶏冠(とさか)のような前髪を立て。ぶっとい一直線の黒い眉毛でまなじりキリリと、真赤な口紅で挑発的に。何百年も後の研究者が当時の写真や映像を遺跡で発掘したら、「これは戦さ装束のようだ。女性戦士の社会かもしれない」と分析しかねない、そんな姿でした(そしてその分析は特に間違ってもいない)。
自分はあんなカッコしてなかったと抵抗しても無駄です。当時、肩パッドの入ってない服を見つける方が大変でしたから(こちらは80年代アメリカの典型的なキャリアウーマンの姿です)。
そんなやる気満々で戦闘的なファッションは、1990年代以降のナチュラル志向やカジュアル志向ですっかり姿を消し、むしろ「fashion disaster(ファッションの大惨事)」「fashion faux pas(ファッションの大失敗)」「fashion suicide(ファッション的自殺行為)」と呼ばれる苦笑と失笑のネタだったのに。それがそれが。
今年の春ごろから、美容院で見るファッション誌で「どこそこのコレクションが肩を強調したジャケットを発表」と読んだりしても、「でもそれが大きな潮流になることはあるまいよ」と信じることを拒否していたのですが。
○まわるまわるよ時代はまわる
でも本当にファッションの循環というのは摩訶不思議で。まさかあんなものが復活するわけないじゃないか!と頑なに信じていた色々なものが、とっくに復活しましたから(主に70年代的な、ベルボトムとかパンタロンとかロンドンブーツとかが。名前を変えて)。なので順番からいったら80年代が復活するのも当たり前と言えば当たり前。
こちらのBBC記事によると、ファッションの変遷には「レイヴァーの法則」と呼ばれるものがあるそうな。ジェイムズ・レイヴァーというファッション史の大家が1937年に提唱したもので、いわく、10年前の流行は「みっともない」、20年前の流行は「バカみたい」、30年前の流行は「面白い」、50年前のは「レトロ」、70年前のは「素敵」、100年前のは「ロマンチック」——と見なされるとか。これは1937年に提唱されたサイクルなので、情報化が進んで流行変遷のペースがもっと速くなった現在では、25年前くらいに流行した肩パッドが、「かっこいい」と復活してきたのではないかと。
それにしても不思議なのは、ついこないだまで「……うわ…」と思っていたものを、どうしていつしか「カッコいい」と思うようになるのか。自分というひとりの人間が同じものを見ているのに。なんでそうなるんでしょう。自分は自分なりに価値判断しているつもりなのに。自分の判断基準そのものが、雑誌や店頭で見る情報にそんなに影響されるものなんでしょうか? とすると、自分自身の主体性というのはいったいどこに? 女性誌が大好きな「自分らしさ」とかのキャッチフレーズは下手したらフィクションなんですね。
肩を強調したシルエットが2010年春夏コレクションにたくさん登場したということは、来年の春ごろまでには一般的なブランドもコピーするようになって、日本のあちこちでも、特に最新ファッションに詳しいわけでもない私のような人間でも、肩をいからせて街を闊歩するようになるのでしょうか。ついこの間まで、肩パッドなんて全くあり得ないものだったのに。
景気低迷にただ肩を落としてうなだれているよりは、背筋を伸ばして前を見て歩いた方がいいに決まっていますが。そんなに肩をいからせて世界に立ち向かっていこう!と思える状況に、世の中はいつの間にか変わっていたのでしょうか。
ただし、いくらケイト・モスやアギネスといったトップモデルたちが見事に着こなしているからといって、こちらの記事では、華奢な首と背中の持ち主でないと、アメフット選手みたいになりますよと注意しています。なので、私はその忠告を聞き入れようと思います。
◇本日の言葉いろいろ
・○○ is back = ○○が戻ってきた、○○復活
・disaster = 災難、惨事、大失敗
・suicide = 自殺
・faux pas = 失敗、失態
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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラム、フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。
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