オーガスタ魅了の片山晋呉が「turn it around」 ――ひまだね英語
■本日の言葉「turn it around」(ひっくり返す)■
毎週金曜のこのコラムでは、エンタメやスポーツなどについて、たとえば居酒屋トークでちょっとウンチク語りできるような英語表現を紹介したいと思います。「よう、ハッつぁん、テンガロン・ハットがメリケンで強かったらしいぜ」「へえ、クマさん、そうなのかい。メリケンでも麻雀がねえ」「誰が麻雀の話をしてるよ」「で、テンがロンでハッとしたってのは、そりゃどういう手だったんだい」——など、ここまでベタではないにせよ。たとえば、ゴルフのマスターズ大会で単独4位を達成した片山晋呉選手が、英語メディアにどう呼ばれていたか、など。(gooニュース 加藤祐子)
○回って回って回って回る……
「Shingo Katayama turns it around」。男子ゴルフのマスターズ・トーナメントが終わった翌日、ボストン・ヘラルド紙のサイトでこういう見出しを見つけました。直訳すれば「片山晋呉がそれを回した」。では「it(それ)」とは何か。この場合は、試合や戦局だと思います。6位タイでスタートした最終ラウンドで、4アンダーを叩き、見事4位で終わったという片山の奮闘ぶりを、「turn it around」と表現したわけです。あるいは、これまで最高順位27位タイだったマスターズで今年いきなり4位に急浮上したのも、「he turned it around」にふさわしい活躍でした。
まずい状況をグワッとひっくり返したい。あるいは、クルっと反転させたい。回って回って回したい。そんな時に使える表現がこれ、「turn it around」です。文脈が何であれ、何かの状態をひっくり返したり、反転させたり、逆転させたり、事態が大きく動く場合なら何でもOKです。事態を私が動かしたなら「I turned it around」。私がこれから動かすと宣言するなら「I will turn it around」。
ちなみに、「心配するな、ひっくりかえしてやるぜ」とアニキ的に格好つけたいなら、「don't worry, I'll turn it around, buddy」となります。「buddy=相棒」はちょっと余計ですが、アニキ的には必須かと。「心配するな、なんとかしてやるぜ」と言いたい場合は、「don't worry, I'll fix it」や「don't worry, I'll take care of it」とかも便利です。
なぜこういうアニキ的な連想が出てきたか。それは最終ラウンドの片山の姿を観ていたから。頼りになるアニキっぽくて、チャーミングだったというか。ピンクのポロシャツも。英語記事は「cowboy hat」と書いている、トレードマークのテンガロン・ハット(ten-gallon hat)も。「swooping bow(ブワッと大きなお辞儀)」と形容されていた、派手派手しい大きなお辞儀も。
○さらにちなみに……
さらにちなみに、そういう彼の様子にボストン・ヘラルドの記者も魅了されたようで、「彼はどこにいっても、観客の人気者(crowd favourite)だ」と。「funky cowboy-style hat(カウボーイ・スタイルの帽子はファンキーだし)と。またAP通信のこちらの記事は、見出しからして「Shingo the Showman: Japanese star charms Augusta(シンゴ・ザ・ショウマン、日本のスターがオーガスタを魅了)」と、「シンゴ好き好き」モードに。
「Shingo the Showman」という表現は、古いプロレスファンならおなじみの「アブドラ・ザ・ブッチャー」や「アンドレ・ザ・ジャイアント」と同じ成り立ちです。回りくどく訳せば、「まさに巨人である、アンドレ」ということに。なので、片山のことを「まさにshowman(見事な演技を披露してくれる演者、千両役者)そのものであるシンゴ」と絶賛しているわけです。おまけに「Shingo」と「showman」の頭文字を共に「S」でそろえて頭韻させて、さらにキャッチーにしている芸の細かさ。
ついでに言えば「charm=魅了」という言葉には「魔法をかける」という意味もあります。「charm」という同じ形で、「魔法、お守り」などの名詞にもなります。つまり「理屈を超えた、めくるめく魔法のような魅力を振りまく人」くらい魅力的でないと、「charm」とか「charming」とかの表現はふさわしくないわけです。すごいな、片山。シンゴ・ザ・ショウマン。テンがロン。
◇コラム開始にあたって
新聞業界用語で「ひまだね」という言葉があります。「暇だね〜」とあくびしているわけでなく、「暇ダネ」=「暇なとき用のネタ」=「大きなニュースがない時に紙面を埋めるための、日付ものではないネタ」という意味。めまぐるしい日々のニュースからはこぼれ落ちてしまいがちな面白い話題もの、という意味でもあります。毎週金曜のこのコラムでは、エンタメやスポーツやライフスタイルの話題で使われた英語表現を、肩の力を抜いた感じでご紹介したいと思い ます。
なお、これから金曜日のこの「ひまだね英語」コラムのほか、月曜日には国際ニュースで使われた英語フレーズを拾い出す「ニュースな 英語」コラム、水曜日には英語メディアで日本がどういう表現で報道されているかを見る「JAPANなニュース」コラムを連載していきます。専門用語という よりも、簡単な言葉の組み合わせが深い意味をもつ、そんな日常的に役に立つ言い回しを、ご紹介していけたらと思っています。よろしくおつきあいくださいませ。
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◇筆者について…加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」 の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。米大統領選コラム、「オバマのアメリカ」コラム、フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。
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