「期待はずれ」を英語で言うと…日銀の金融緩和策について
■本日の言葉「underwhelmed」(期待はずれ、がっかり)■
英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介する水曜コラム、今週は日本銀行の金融緩和策に対する英語メディアの評価についてです。臨時の金融政策決定会合を開くというニュースに「おっ」と顔が上がった分だけ、「……なんだ」とがっかり感が高まった。その「期待はずれ」感覚を英語で語る際の色々な表現をご紹介します。(gooニュース 加藤祐子)
日本銀行は1日午後、10兆円の追加供給を決定しました(リンク先はPDFです)。急激な円高や株安に対して、政府と共同歩調で景気を下支えするのが目的です。白川方明総裁は1日の記者会見で「広い意味での量的緩和」と説明(このリンク先もPDFです)。この量的緩和を英語で「Quantitative Easing (QE)」と言います。ちなみに日銀(Bank of Japan)は英語記事では「BOJ」と略されることが多いですし、英語の会話でも「BOJ(ビー・オー・ジェイ)がどうしたこうした」と言います。
ただし英米の日本ウォッチャーたちは、狭い意味での「量的緩和(QE)」を期待していたらしく、故にがっかしりたようです。英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、英米で「QE」と言うとそれは中央銀行が資産買い上げのために資金を作り出すことを意味すると。一方で日銀の量的緩和というと2001〜2006年のゼロ金利時代に、金融機関が日銀に預ける資金量(当座預金残高)が目標量に達するまで金融機関に大量の資金を供給した政策を意味してきました。白川総裁は1日の記者会見で、今回の措置も「量が制約となって金融機関行動が制約されることがない状況をしっかり作り出すと言う意味では、広い意味での量的緩和だと考えています」だと説明しています。
日銀流のこの「量的緩和」は、金融システムの安定化には一定の効果があるものの、需要拡大・景気浮揚の効果はあまり期待できない。というのも、いくら日銀が金融機関に資金供給しても、その資金が肝心の民間に流れなかったからだ(金融機関が貸したい企業は借りなかったし、借りたい企業には銀行が貸し渋りしたから)と、FTは解説しています。
よって今回の日銀の「QE」について、FT記事には「underwhelmed(がっかりした⇒「overwhelmed」(圧倒させられた)の反対語)」と。そのほかにも、「今回の措置はlimited significance(限定的な意味合い)しかないだろう」「a sideshow(ほんの余興)に過ぎない」などの厳しい意見が並びました。
マッコーリー・リサーチのチーフ・エコノミスト、リチャード・ジェラム氏も「2000年代はじめの頃を思い出す。あの頃の日銀は政府からの圧力に応えて、何か名目上の(token)、そして基本的に無意味な(basically meaningless)政策変更を、その都度繰り出しては、政治家を満足させていた。一時的に満足した政治家たちはそれでまたしばらく日銀を放っておく。その繰り返しだった」と手厳しいです。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今回の日銀決定について、日銀が以前にもやっていた「政策金利0.1%で資金を貸し出す」という措置を「essentially a rehash(本質的に焼き直したもの)」に過ぎないというアナリストたちの意見を紹介。同紙によると、日銀が臨時の政策決定会合を開くというから、アナリストたちは日銀が国債購入を増額するか、あるいは政策金利を0.1 %からさらに引き下げるのではないかと期待していた。だから「market expectations(市場予測、市場の期待)」と比べて、「BOJ's move(日銀の動き、日銀の措置)」は「relatively weak(比較的弱い)」と評されています。
またロイター通信も「日本の新しい資金計画」が「fell short of market expectations(市場予測に達しなかった)」として、「日銀の動きを市場が全く歓迎しなかったわけではないが、臨時政策決定会合の結果は市場が期待したよりも少なかったし、その効果のほども限定的なようだ」と見る日本金融関係者のコメントを紹介しています。
昨今の急激な円高や株安を前に、日銀としては何もしないわけにいかなったのかもしれません。それで敢えて積極的な姿勢をアピールしようと臨時の会合を開いたのかもしれませんが、その臨時性で「おっ!」と期待させてしまった分だけ「……なーんだ……」と落胆されてかえって批判されてしまう。こういうとき日本語だとたとえば「骨折り損のくたびれ儲け」などの慣用句がありますが、英語だとそうですね、「caught between a rock and a hard place(岩と硬い場所の間にはさまれている=身動きとれない、にっちもさっちもいかない)」とか、あるいは「heads I win, tails you lose(表が出たら僕の勝ち、裏が出たら君の負け)」の反対だ——という言い方もできるかもしれません。
◇本日の言葉いろいろ
・underwhelmed= がっかりした、残念
・Bank of Japan=日本銀行
・BOJ=ビー・オー・ジェイ、日銀
・quantitative easing (QE)=量的緩和
・significance =意味合い、重要性
・rehash=焼き直し
・fall short of=達しない、至らない
・caught between a rock and a hard place = 岩と硬い場所の間に挟まれている⇒身動きとれない、にっちもさっちもいかない
・heads I win, tails you lose = (コインの)表が出ればこっちの勝ち、裏が出れば君の負け
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◇筆者について…
加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。
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