英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は民主党の小沢一郎氏についてです。英語メディアでは、小沢氏がアメリカ人を「単細胞」、イギリス人を「紳士面」と公言したことを大きく取り上げ、そんな人が「逆襲」に打って出てきたぞという論調です。なかには小沢氏が首相になるのは「とんでもない」と社説で断言する主要紙まで。(gooニュース 加藤祐子)

○それは大人になるための通過儀礼?

民主党代表選がトロイカだとかトロイカプラスワンだとかいう言葉が飛び交う流動的情勢なので、以下は31日午前現在の話ということでお含み置き下さい。

それにしてもです。そもそも、いくら「もうお前たちの言いなりにはならないぞ」と言いたいからといって「だってお前の母ちゃんでべそだからさー」と言うのは、あまりにガキっぽいことだと思うのです。唐突ですが。だとするならば、「もうお前たちの言いなりにはならない」と言うために「だってあいつら単細胞だからさー」と言うのはどうでしょう?

子供が親から独立する時に、過剰なまでに親に反発したり否定したりしてみせる様子をも連想します。心理学で言うところの、いわゆる通過儀礼としての精神的な「親殺し」でしょうか。オイディプス的というか。

小沢一郎氏がどういう思惑でもって25日の「小沢一郎政治塾」で、「アメリカ人は好きだが、どうも単細胞なところがあってだめだ」と言い、イギリスを「さんざん悪いことをして紳士面しているから好きではない」と言ったのか、真意のほどは分かりかねます(またそういう、国民に真意を伝達することなどどうでもいいと思っているらしいところが小沢氏の政治家として厄介なところです)。けれどもまさかそんな、「もうアメリカの言いなりにはならない」と言いたいがためのパフォーマンスなどではなかったはずです……よね? 日本の総理大臣になろうという人が。

小沢氏の「単細胞」発言を25日のAP通信は「monocellular」とまず直訳した上で、それは「simple-minded(単純)」という意味だと。「なぜそんなことを言い出したのか不明だ」とも。

米『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の記者ブログは同日、読者に向かって、小沢氏によると「アメリカ人は……覚悟はいい? 単純なんだそうだ。『単細胞(monocellular)』という意味の表現を比喩的に使って、小沢氏はそう講演した」と書いています。「決してアメリカ人は利口だと思っていないが、国民の意思による選択がきちんと実行されていることを非常に高く評価している」と、褒められているのか何なのかよく分からない発言もあったのだと。

イギリスの保守系『デイリー・テレグラフ』紙は25日、「未来の日本首相とみなされる」小沢氏が「イギリス人はきらいだ」と言ったと見出しにとり、「映画『戦場にかける橋』のイギリス人捕虜たちが整然と行進する姿は、イギリス人の最も優れた資質を表していると述べた」と書いています。

さらに、よほど腹に据えかねたのかそれとも面白がっているのか、続く26日には「『戦場にかける橋』のイギリス人しか好きじゃない日本人が代表選に出馬」と続報を書いています。「なにかと物議を醸すこの政治家は(中略)過去には仏教と比較して『キリスト教は排他的で独善的な宗教』とも発言している」と小沢氏情報を追加しつつ。<おいおい、そんな男が首相になるのか?>という呆れもしくは失笑が行間からにじみでてくるようです。

○小沢氏に比べれば単純で結構?

英『エコノミスト』誌は「機能不全な日本政治、小沢一郎の逆襲、壊し屋の再来」という見出しの26日付記事で、こう書き出しています(「strikes back」を「逆襲」と訳したのはもちろん、『スター・ウォーズ』にちなんでいるはずだと思うからです)。

「日本で最もマキャベリストな政治家の小沢一郎は先日、アメリカ人を『単細胞(monocellular)』と切って捨てた。これは日本語で『単純』という意味の表現だ。権謀術数に充ち満ちた小沢氏の頭の中と比べて『単純』と言われたなら、それはアメリカ人にとって褒め言葉と言えるだろう」と。そして小沢氏が民主党の代表選に出馬することで、民主党は政権を失うかもしれないとも。

小沢氏がこれで総理大臣になれば「驚異的なカムバックだ」としつつ、同誌は「なぜ与党・民主党が小沢氏を要職に戻したいのか、よく分からない」と。小沢氏は「foul-smelling(いやな臭いのする)」政治資金問題で訴追される可能性も残しているし、新聞世論調査では国民の約8割が小沢氏の政権要職復帰に反対しているのに。小沢氏自身が勝てると思っているかどうかはともかく、菅政権で冷遇されている小沢派議員たちの復権をねらってのことかもしれないし、そのために鳩山派の支持をとりつけるため鳩山氏に外務大臣のポストを約束したとも噂されていると、記事は書きます。

そして『エコノミスト』は、そんなことをしている場合かと。「円の高騰と株価急落で経済に対する信頼性が傷ついている」のに、「デフレが居座っている」この状況で与党が分裂し、総理大臣が「たえまないメリーゴーラウンド(constant merry-go-round)」でくるくる変わっている場合か、と。