ワシントン裏話の第一人者が鳩山首相を酷評 しかも古典ジョーク(?)で
■本日の言葉「who's on first?」(一塁にいるのは誰? 一番は誰?)■
英語メディアが伝える「JAPAN」なコラムは水曜のはずなのですが、今朝になって見逃せない記事に「おおお」となったので、番外です。というのも、米メディアでワシントンの裏話を語らせたらこの人という有名コラムニストが、鳩山由紀夫首相を痛烈に酷評したからです。しかもおそらく、古典的なジョークとからめて。(gooニュース 加藤祐子)
{コラムニストAl Kamen氏の名前を「カーメン」と表記していましたが、「ケイメン」の間違いなので、訂正します]
○「フーが一番」と
昨日はネタ探しに苦しんでなんだかお茶を濁すみたいなコラムを書いてしまったのですが、朝になったら、ワシントン・ポスト紙のコラムが話題になっていました。
筆者はワシントン裏話の第一人者、アル・ケイメン記者。米政界で誰が上がって誰が沈むのか、誰が仲良しで誰が犬猿の仲なのかなど、人間くさいあれやこれやを描く、名物コラム「In the Loop」の筆者です。「in the loop」とはちなみに「輪の中=情報の輪の中=情報通」という意味です。
14日付のコラムでケイメン記者は、核保安サミットで各国リーダーたちがどうだったかを「Among leaders at summit, Hu's first(サミットのリーダーの間では、フーが一番だった)」と寸評。この見出しにはおそらく古典的ジョークがひっかけてあるのですが、それは後で解説します。
集まった各国首脳36人中、誰が勝ち組で誰が負け組かという内容のコラムで、ケイメン記者は、「勝者は明らかにオバマ大統領とbilat(bilateral=二国間の略)会談をしてもらった人たちで、その筆頭は明らかに、中国の胡錦濤国家主席だ」と。
そして対する「the biggest loser(一番の大負けをしたのは)」は鳩山首相だという評価です。「bilat」を求めたのに、応えてもらえなかったと。
続けて鳩山首相につく形容がすごい。「不運な」とか「気の毒な」という意味の「hapless」。加えて、「『一部のオバマ政権関係者の意見によると』日に日に変でおかしくなっている」と。後半のくだりは原文で「(in the opinion of some Obama administration officials) increasingly loopy」。この「loopy」というのは「ルーピー」というなんだか間の抜けた音が語感の全てを表していると思って正解です。「いかれてる」という言い方が近いかも知れません。
ワシントン・ポストは鳩山政権誕生前から、鳩山氏の対米外交転換にずっと批判的でしたから、その辺を考慮するとしても、かなりバッサリやられている感じがします。
コラムはさらに、正式な日米首脳会談が叶えられなかった鳩山首相に与えられた「consolation prize(残念賞)」が、ワーキング・ディナーの最中の短時間の話し合いだったと。そして、普天間移設問題という「日本とアメリカを隔てる重要課題について鳩山氏は、信頼できないという印象を、オバマ政権幹部に与えてしまった」と。「信頼できない」と訳したのは「unreliability」です。「当てにならない」とも訳せます。
このくだりの英語は「Hatoyama has impressed Obama administration officials with his unreliability on a major issue dividing Japan and the United States: the future of a Marine Corps air station in Okinawa」です。
前述のように、ワシントンのインサイド情報に詳しいことで定評のあるコラムニストが「オバマ政権幹部たちは鳩山はあてにならないと思っている」と書いているのですから、これにはなかなか重みがあります。
鳩山首相を「金持ちの息子」と紹介したケイメン氏は、「えっと、ユキオ。君は同盟国のはずなんだよ、覚えてる? こっちが金のかかるアメリカの核の傘をあげたおかげで、そっちは莫大な金が節約できたんだよ。まだトヨタ車とかも買ってあげてるでしょ?(Uh, Yukio, you're supposed to be an ally, remember? Saved you countless billions with that expensive U.S. nuclear umbrella? Still buy Toyotas and such?)」と。
いやはや……。
○どうして「フーが一番」なのか
ではなぜ「Among leaders at summit, Hu's first」という見出しが、おそらくジョークに違いないのかを解説します。
「Hu」はこの場合、中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席のこと。英語では「Hu Jintao」と表記します。そしてここからがややこしいですが、アメリカの古典的お笑いに「Who's on first?」という名物コントがあるのです。
私もリアルタイムでは見たことのない1930〜50年代に、アメリカで一世を風靡した「アボット&コステロ」というお笑いコンビがいました。その2人の有名コントがこれで、「Who's on first?(一塁にいるのは誰だ?)」と聞き続けるコステロに、アボットが「Yes, Who's on first(そうだ、一塁にいるのはフーだ)」と答え続けて、コステロがひたすら混乱する様子を笑うものです。「So, who's first? (だから、誰が一塁なんだよ)」「Yes, Who's first!(そう、フーが一塁なんだよ)」と。
お笑いを言葉で説明しても全くおかしくないのは分かっているのですが。二人のやりとりのテンポや表情が絶妙なのです。あとは「Who」が一塁手の名前なんだという言葉遊びの面白さ。ちなみに、二塁手の名前は「What」、三塁手の名前は「I Don't Know」、レフトは「Why」(おそらくこのコント台本は英語の疑問詞の勉強になるはず)。
このコントは確か映画『レインマン』にも出てきたと思います。ダスティン・ホフマンがブツブツつぶやくのだが、なかなかオチが理解できないというあれです。たとえが適切かわかりませんが、日本で言うところの「まんじゅう怖い」くらいに古典的な、誰もが(なんとなくなら)知っているお笑いネタです。1999年には米タイム誌が「20世紀最高のコント」に選んでいるほどです。
なので「Who」と同じ音の「Hu」という名前の中国リーダーについて、ましてやその中国が今や「first(一番)」になる勢いで台頭している時代に、「Who's first」ならぬ「Hu's first」と書いてあったら、「ああ、あれのことね」と多くのアメリカ人にはピンとくるはず。
そしてだから、このコラムでも、オバマ大統領に(事実上)袖にされた鳩山首相をただ一人、大事にしてくれたのは誰か?というジョークをオチにしているのだと思います。
「核保安サミットで鳩山首相に優しくしたのは誰だ?(Who did give Hatoyama some love at the nuclear summit?) 」
「胡(フー)だよ(Hu did)」
あー訳しにくい……!
(16日・金曜日のコラムはお休みします)
◇本日の言葉いろいろ
・Who's on first? = 一塁にいるのは誰だ?(フーだ)、一番目は誰だ?
・in the loop = 輪の中にいる、情報の輪の中にいる、情報通だ
・hapless = 気の毒な、哀れな
・loopy = 頭のおかしい、変な、いかれてる
・consolation prize = 残念賞
・unreliable = 信頼できない、あてにできない
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◇筆者について…
加藤祐子 東京生まれ。シブがき隊と同い年。8歳からニューヨーク英語を話すも、「ビートルズ」と「モンティ・パイソン」の洗礼を受け、イギリス英語も体得。怪しい関西弁も少しできる。オックスフォード大学、全国紙社会部と経済部、国際機関本部を経て、CNN日本語版サイトで米大統領選の日本語報道を担当。2006年2月よりgooニュース編集者。フィナンシャル・タイムズ翻訳も担当。英語屋のニュース屋。
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