英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースが、こんなに重みをもつ事態が起きるだなんて……。東日本大震災とそれに伴う被害に遭われた皆様、大事な人を亡くされた皆様に、心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。ご承知のように震災発生からこちら、海外メディアには「JAPAN」のニュースが溢れかえりました。悲嘆の言葉、応援の言葉、称賛の言葉、そして批判の言葉も。そこから透けて見えたのは、日本と日本人の姿もさることながら、伝える側の恐怖、そして伝える側の地金でした。(gooニュース 加藤祐子)

○最初は日本称賛で始まった

3月11日からこちら、ご承知のようにほとんどの海外メディアのトップニュースは(多国籍軍のリビア空爆が始まるまで)ずっと日本でした。その最中にあって私は、単発の記事がどうだったとストレートニュースとして伝えるならともかく、コラムという形式の難しさを痛感し、原稿を書いては何度も自らボツにしていました。

阪神大震災の1000倍とも言われるエネルギーによる破壊は、阪神大震災の現場取材を経験した私の「これからこうなるだろう」予想など吹き飛ばしました。というのも発生直後は、つまり原発事故が起きるまでは、今の悲惨な状態をなんとかみんなで乗り越えれば長い復興の日々が始まる……と思い、英語ニュースに溢れた希望と称賛の言葉を集めていたのです。そういう内容の記事は日本でもたくさん報道されたから今さら詳しく繰り返しませんが、たとえばオバマ米大統領は地震と津波の発生から間もなく記者会見で、「日本は必ず、前より強くなって立ち直る。それに私たちが協力できればと思います」という力強い希望の言葉を発してくれました。各国政府からも同様に「私たちは皆さんと共にあります」などのお見舞いと支援の言葉が届きました。

影響力のあるジャーナリストですぐに日本を応援・称賛したのは、ピュリツァー賞を2度受賞している米『ニューヨーク・タイムズ』紙の有名コラムニスト、ニコラス・クリストフ氏です。阪神大震災の時に東京支局長だった同氏は3月11日当日の日付で「Sympathy for Japan, and Admiration(日本の同情と尊敬を)」というコラムをあっという間に発表。

「私たちみんなの思いは今日、日本人と共にある」という書き出しで、「今から数日、数週間にかけて日本人をじっと見ているといい。学べることがいくつかあるはずだ」と書いていました。阪神大震災当時の日本政府の対応は実にひどいものだったが「日本の人たちは忍耐強く、ストイックで端然としていて、実に気高かった」と。今回の震災についても、「日本人の強靭さと忍耐力には、何か崇高で勇敢なものを感じるし、今からそれが表に出てくるだろう。日本社会の緊密な形、そのしぶとい強靭さが、光ることとなるだろう。そして日本人はおおむね、一致団結して協力するだろう」と予測し、「要するに、私たちは気持ちを日本に向けているし、悲惨な震災に何より深い同情を寄せている。と同時に、何より深い尊敬の気持ちも」と結んだのです。

このコラムが地震・津波発生から1日もたたない内に『ニューヨーク・タイムズ』に載り、クリストフ氏自身がTwitterで周知したことは、この時点での英語メディアにおける報道の方向性に一定の影響を与えたのではないかと思います。少なくとも、日本や日本人についてあまりよく知らない人が「そうなのか」と思うきっかけにはなったかと(同氏はバーレーン政変で現場から政府を批判し続けた挙げ句、王家関係者から「クビにしろ」運動を起こされるほどの影響力の持ち主なので)。多くのハリウッド・スターなど著名人が次々と日本に応援のメッセージを発してくれた効果も、もちろん大きかったでしょう。

『ニューヨーク・タイムズ』以外のメディアも、被災した日本人は「疲れ切っているが毅然としている」(英フィナンシャル・タイムズ)と書いたり、「なぜ日本人は略奪しないのか」と首をひねったりしていました。理由としては「日本人が伝統的にストイックだからだ」という意見もあれば、「日本は結びつきの緊密な社会だからだ」という、このところ国内で言われていた「無縁社会」議論からすれば「ん?」と思う見解もありました。

とりわけ私が「ほう」と思ったのは、CNNの東京特派員キュン・ラ記者のこちらの記事でした。これまでは「ん? それはちょっと誤認では」と思う内容の日本批判が多かったラ記者ですが、この記事では、こうした大災害がよそで起きると略奪や暴動や、あからさまに悲憤慷慨する人の姿が見えるものだが、日本は「静かに悲しんでいる。人々は数本の水を手に入れるためにじっと我慢して整然と何時間も並んでいる。これに驚くのは、日本で暮らしたことがない人、あるいは日本社会の仕組みを経験したことがない人だけだ。この国で3年暮らした私からすると、日本人が違う反応をしていたら、むしろその方が驚くだろう」と書いています。また、出る釘を常に叩き一体性を重視する日本社会を前に自分のような外国人は「不満が爆発しそうだった」と認めています(なるほど、ゆえに震災以前の一連の批判報道か……と私はここで納得)。そして日本人が子供の頃から教え込まれる「みんなと一緒に行動する」という体質ゆえに日本人は団結して悲劇に取り組んでいるし、その悲しみは静かに自分の内側で噛みしめているのだと。

日本に好意的な外国メディアの論調の集大成的なものが、これもさかんに日本で紹介された、13日付の英『インディペンデント』紙一面、「がんばれ、日本 がんばれ、東北」でした。これが実は、宮城県でロケ中に被災した仙台市出身のお笑い芸人「サンドウィッチマン」伊達みきおさんがブログに書いた「日本をナメるな! 東北をナメるな!」がきっかけだったという朝日新聞が発掘した驚きの情報と併せて、私はこうした「世界が日本を応援している」という切り口の原稿を作っていたのです。けれども15日の時点で福島第一原発の事故はどんどん拡大していて、英語メディアは「日本えらい、日本がんばれ」から、「おいおい日本、大丈夫なのか?」という不安と恐怖の論調にはっきりシフトしていきました。そんな状況で「英語メディアは日本をほめてますよ」などというコラムを発表する気にはとてもならず、原稿を自らボツにし、そして私自身が恐怖と不安にかられながら必死に情報収集することになったわけです。

被害甚大な被災地の実態を伝えるべく、12〜13日にかけては米国メディアのスター記者たちも次々と現地入りしていました。ABCニュースのクリスティアン・アマンプール、ダイアン・ソーヤー、CNNのアンダーソン・クーパーなどなどです。つい先日まで私がエジプトやリビア情勢にハラハラしながらテレビやネットにかじりついていたその画面の向こうで、エジプトのムバラク派に襲われたり、リビアのカダフィ大佐にインタビューしたりしていた有名記者たちです。その人たちが、次々と自分の国に入ってきて、エジプトやリビア情勢を伝えるのと同じような調子で「大変なことがおきています」とリポートするその姿に、私は何とも言いがたい違和感を覚えていました。

自分の国が彼らスター記者にとっての「最新の大ニュース」になってしまった事態を、なかなか受け入れられなかったのです。と同時に、CNNにしろABCにしろ、ふだんから見ているそのスター記者たちが日本に詳しいわけではないと知っているだけに、その報道内容を「大丈夫か?」と見てしまう自分の目線が、違和感を生み出していました。