在日米軍再編について日米合同発表、奥に透けて見える「建国の父」たちの仕掛け

gooニュース・JAPANなニュース2012年2月10日(金)10:15
英語メディアが伝える「JAPAN」なニュースをご紹介するこのコラム、今週はいつもの曜日から遅れてしまいましたが、在日米軍再編についてです。日米両政府の発表は日本では当然大きいニュースですが、アメリカではさほどでもない……といういつもの図式ではありますが。それでも、アメリカ「建国の父」たちが国の基礎にそもそも組み込んだ「仕掛け」が奥に透けて見えるのが、なかなか味わい深いとも言えます。(gooニュース 加藤祐子)

○「commit」することの難しさ

日米両政府が8日発表した、在日米軍再編見直しに関する基本方針について、アメリカ側の発言や報道を少し見てみます。日本で詳しく報道されているように両政府は、沖縄の海兵隊のグアム移転と米軍嘉手納基地以南の米軍5施設の返還を、米軍普天間飛行場移設から切り離して進める方針です。

まず日米両政府の発表文です。日本語は外務省サイトのこちら、英語は米国務省サイトのこちらにあります。翻訳者としては、いつも訳し方に困る「strongly committed to〜」が「〜強く決意している」と訳されているのに対して、同じ第一段落にある「remain committed to〜」が「引き続きコミットしている」になっているあたりに、少なからず同情しました。

そして肝心の部分の表現は、英語が「have started official discussions to adjust our current posture plans set forth in the Realignment Roadmap, in particular delinking both the movement of Marines to Guam and resulting land returns south of Kadena from progress on the Futenma Replacement Facility」。日本語が「再編のロードマップに示されている現行の態勢に関する計画の調整について,特に,海兵隊のグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことについて,公式な議論を開始した」です。きわめて正確な翻訳だと思います。

この両政府発表について、米国防総省サイトには米軍広報局によるこちらの記事が掲載されていました。記事によると国防総省のリトル報道官は、今回の両政府発表は、海兵隊の沖縄県内移転、および一部のグアム移転について両国が「committed to(決意している、コミットしている)」ことを確認したものだと発言。海兵隊のグアム移転と普天間移設を「切り離す=delink」することで「それぞれの作業について個別に進展させつつ、両方に完全かつ平等にコミットし続けることができる」と述べています。さらに、アジア太平洋地域を重視するアメリカの新しい国防戦略が成功するには「我々のプレゼンスと、長年の同盟国・日本との軍事協力が不可欠な要素だ」とも。

こうした状況について米紙『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー東京特派員は、普天間飛行場移設問題を「両国関係に常につきまとう慢性的なイライラの元(a chronic underlying irritant)」と呼び、普天間移設が進展しなければ沖縄県内の海兵隊を削減できないようになっていたこれまでの取り決めが「事実上、交渉全体を凍り付かせていた」と書いていました。さらに「アメリカによる戦後日本占領の名残で沖縄には海兵隊が大勢いる。県民はその存在をかねてから嫌ってきた」とも。

記事は玄葉光一郎外相が「沖縄の人たちの信頼を少しでも取り戻そうと努力している」と話したと紹介し、その信頼は2年前に当時の鳩山由紀夫首相が普天間県外移設の公約を破った時に失われたのだと説明。「裏切られたという県民の怒りはあまりに激しく、普天間移設計画はもはや死に体も同然だというのが、ほとんどの専門家や政治家の一致した意見だ」とも。一方でアメリカ側は海兵隊の規模を縮小しても危機に即応するには新しい基地が必要だと主張しているし、中国の軍拡に懸念を強める分だけ日米関係を重視する野田政権もアメリカ側の主張に理解を示していると説明しています。

記事では慶応大学法学部の細谷雄一助教授(政治学)が、基地一つのために日米同盟全体を膠着させるにはいかない、日米安保は重要すぎると野田政権が結論したから今回の合意に至ったのだろうと指摘。そして複数の専門家たちの意見として、先にまず海兵隊員8000人がグアムへ移転し、米軍基地数カ所を返還すれば、飛行場新設への反対もやわらぐのではないかという見方を紹介しています。

米紙『ワシントン・ポスト』ではチコ・ハーラン特派員が、日米両政府が「長く膠着していた軍の再編計画に手を加え」ることで、普天間の移設先をめぐる問題を「迂回した」と説明。「海兵隊のグアム移転を普天間飛行場問題から切り離すことでアメリカ政府は、そのどちらの交渉もダメになりそうだという懸念を和らげた」と評しています。

「ただし東京の専門家たちによると、普天間移設問題は解決していない。現行案に代わる代替地候補もはっきりしていない」し、日本の歴代首相は飛行場の辺野古移設について、沖縄県民の支持も沖縄の政治家の支持も獲得できずにいるとも。

記事では沖縄国際大学の佐藤学教授が、県内移設に反対する沖縄の声は今でも強固で、団結していると指摘。東京の政府は沖縄県知事に様々な支援を約束して説得しようとしてきたが、沖縄県の反対の意思は変わらないと釘を刺しています。

さらに記事は、「日本最大の新聞、読売新聞」の7日付社説が普天間飛行場の固定化に対する「fear(懸念、恐怖)」を浮き彫りにしていると指摘し、「最も懸念されるのは(中略)危険な現状が固定化することだ」という引用の仕方で締めています。

やや前向きな『ニューヨーク・タイムズ』と、困難を強調する『ワシントン・ポスト』。対照的でした。

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