料理の数だけ発祥の店は存在する。しかし、「発祥のお店」だからといって必ずしも“一番おいしいお店”とは限らない。発祥のお店のうち、グルメが今も通う本当においしい店はどこか? あのメニューが生まれたエピソードとあわせてオススメ品を紹介!

◆値段も味も手頃だから愛される発祥店の料理


 普段何げなく食べている料理のなかには「発祥の店」が存在する。そこで日本各地にある発祥の店を巡ってきた編集者・菊地武顕氏に、これらの店の魅力を聞いた。

「必ずしも『元祖の店=日本一おいしい』というわけではありません。同じ料理でも、高級店など素材がいい店ほど味がいいのは当然ですし、時代とともに改良された末、現代人が想像する味や見た目とは様子が違う料理を提供する店も多いです。ただ、『なぜその料理が生まれたのか』という背景を知ることができるのが、発祥店ならではの楽しみ方の一つですね」

 例えば、すき焼きの発祥のお店、横浜「太田なわのれん」では文明開化の時代、獣臭い肉を食べやすくするため日本人に馴染み深い味噌を使い牛鍋を作った。東京「丸善」では、栄養バランスを考えた従業員のための夜食としてハヤシライスを発明したという。

「こうした開発者の工夫や気配りを知ることで、いつでもどこでも食べられるメニューがありがたいものに感じられるんです」

 そして、発祥店の料理に共通するのは、味的にも金額的にも親しみやすい点だと菊地氏は続ける。

「例えば味噌ラーメンと聞くと濃厚な印象がありますが、発祥の店である北海道『味の三平』はさっぱりしていて毎日食べられるような味付けだし、値段もお手頃。これが、刺激が強すぎる味だったり、高額すぎた場合は全国に広まることもなかったかもしれません」

 親しみやすいからこそ庶民に愛され、文化として日本に定着した数々の料理。そんな日本の食文化の始まりを食す体験ができるのは、まさに発祥店だけと言えるだろう。

●うさみ亭マツバヤ
…きつねうどん/大阪・心斎橋/明治26年

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いなり寿司をヒントに生まれたというきつねうどん。「甘いのにしつこくない油揚げと、関西風の出汁がたっぷり染みこんだモチモチしたうどんの組み合わせが絶品です」

【DATE】
住:大阪市中央区南船場3-8-1
電:06-6251-3339
営:月〜木11時〜19時(金・土は19時半まで)
休:日曜・祝日

●ヨーロッパ軒
…ソースカツ丼/福井/大正2年

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大正10年に早稲田で生まれた卵とじのカツ丼より、数年早く同じ早稲田で生まれたソースカツ丼。「震災で同店が福井へ移転しなければ、カツ丼はソースが主流だったかも」

【DATE】
住:福井県福井市順化1-7-4
電:0776-21-4681
営:11時〜20時
休:火曜

●玉ひで
…親子丼/東京・人形町/明治24年頃

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客が軍鶏すき焼きの鍋に卵を流してご飯にかけて食べたのが、親子丼の始まり。「高級店の矜持から『汁かけ飯』を店で出せないとして、当初は出前限定だったとか」

【DATE】
住:東京都中央区日本橋人形町1-17-10
電:03-3668-7651
営:平日11時半〜13時/17時〜22時、土日祝11時半〜13時/16時〜21時
休:夏季・年末年始

●カトレア
…カレーパン/東京・森下/昭和元年頃

当時、周辺には肉体労働者が多く、「腹持ちのいいパン」を追求して生まれたのがカレーパン。「具がギッシリ隙間なく詰まっている様子は、まさに『洋食パン』です」

【DATE】
住:東京都江東区森下1-6-10
電:03-3635-1464
営:7時〜19時、祝のみ8時〜18時
休:日曜、祝日の月曜

●太田なわのれん
…すき焼き/神奈川・横浜/明治元年

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「現代で主流の薄切り肉・醤油ベースではなく、元祖牛鍋の角切り肉・味噌ダレの組み合わせが、逆に新鮮に感じられます」。なお人気店ゆえ、来店時は予約必須

【DATE】
住:横浜市中区末吉町1-15
電:045-261-0636
営:平日17時〜22時、土日祝12時〜15時、17時〜21時
休:月曜、第3日曜(ただし1月・12月を除く)、夏季・年末年始

●丸善
…ハヤシライス/東京・日本橋/幕末〜明治初期

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カレーが上陸する明治4年よりも前に、丸善の創業者・早矢仕有的が提供した「早矢仕ライス」。「ドミグラスソースを使った現代のハヤシライスより濃厚な味わいです」

【DATE】
住:東京都中央区日本橋2-3-10 日本橋丸善東急ビル3F
電:03-6202-0013
営:9時半〜20時半(LO.20時10分)
休:元旦

●舟定屋本店
…芋ようかん/栃木・足利/明治32年

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当初芋問屋だった同店が、捨てる芋クズを加工して誕生した芋ようかん。「寒天を使わず、芋の粘りを活かして固める製法は、代々一子相伝で受け継がれているそうです

【DATE】
住:栃木県足利市通4−2812
電:0284−21−3807
営:9時半〜18時半
休:水曜、第4火曜

【菊地武顕氏】
編集者・記者。’11年から『週刊文春』で数々の料理の発祥店の連載を担当。編書に同連載をまとめた『あのメニューが生まれた店』(平凡社)や『日本全国 おいしいものお取り寄せ』(文春文庫)など