初日から5連勝と、今のところ取りこぼしがないものの、それでもいまひとつ信用ならないのが大関稀勢の里(30)だ。過去にも優勝まであと一歩という場面で、何度も綱とりに失敗している。稀勢の里が所属する二所ノ関一門の総帥で協会ナンバー2(事業部長)の尾車親方(59=元大関琴風)はどう見ているのか。

――稀勢の里が優勝するために、足りないものは何ですか。

「うーん……気持ち、だろうねえ。特に先場所は、横綱を3タテした直後に、平幕の栃ノ心に負けてしまった。『ここで負けちゃいかん』とか、余計なことを考えてしまったんじゃないか」

――気負ってしまった、と?

「気負いというか、大事にいこうとし過ぎた。横綱との3番は『いってまえ!』という、積極的な気持ちで臨んでいた。それが栃ノ心戦では『負けられないから、大事に大事に』と消極的になってしまったんだろうね」

――年頭の一門連合稽古では足の違和感で、最後のぶつかり稽古を回避。二所ノ関親方(元大関若嶋津)から「あそこで稽古していれば、横綱になったのに」と、苦言を呈された。

「問題は痛いから休む、という姿勢です。力士は大なり小なり、どこかしら痛みを抱えている。仮にあの時に土俵に上がっていれば、次に同じ状況になった時も『以前もぶつかり稽古をやったんだから』と頑張ることができます。それが1年に50回あれば、確実に力はつく。二所ノ関親方が言いたかったのは、そういうことではないか」

■「弱い横綱をつくるわけにはいかない」

――しかし、稀勢の里は優勝経験がないにもかかわらず、理事からは「高いレベルの優勝なら横綱も」という声も上がっています。ひいきし過ぎでは、との見方もありますが。

「週刊ポストの記事でも、私が稀勢の里の昇進をアピールしている、ってあったけど……ビックリですよ。誰がそんなことをしゃべっているのか。酒も飲めないこんな(不自由な)体で、どこで言いふらせるんだって(苦笑い)」

――事実ではない、と。

「確かに、稀勢の里は昨年の年間最多勝を獲得したように、力だけなら横綱になれるだけのものは持っています。だからといって、優勝したから横綱に、という簡単な話ではない。そこはやはり、世間の声が必要になる」

――ファンが稀勢の里の昇進を認めれば、ということですか。

「先場所も12勝3敗ですが、これは優勝した鶴竜に次ぐ成績です。今場所の内容によっては、これを『優勝に準ずると見てもいいのではないか』と、綱とりを後押しする声が出てくるかもしれない。いずれにせよ、前半に取りこぼさず、順調に勝ち進めばの話です。私が何かアピールしたところで、稀勢の里が横綱になれるわけじゃありません。われわれとしても、弱い横綱をつくるわけにはいきませんから」