<センバツ高校野球:盛岡大付10−9高岡商>◇20日◇1回戦

 長靴をスパイクに履き替えた盛岡大付ナインが、センバツ初戦で得意の打撃戦を制した。

 取られたら、取り返す。何回でもおかわりする。別名「わんこそば打線」は昨夏の甲子園に続いて今回も健在だ。高岡商相手に松田の1発を含む15安打10得点。延長10回の死闘は10−9のサヨナラ、「猛打ショー」で締めくくった。

 初球から積極的にフルスイングできる盛岡大付の打撃は、見ていて爽快感を覚える。

 「フルスイング・スタイル」は、雪と共存する環境を逆手にとった、関口清治監督(39)の前向きな考えがベースにあった。

 雪に覆われた2月。盛岡市内の同校グラウンドに取材に出向いた。雪に覆われた地面の上で選手たちが3カ所打撃で汗を流していた。

 「汚れますよ。さ、これに履き替えて下さい」。取材前、増沢洵コーチ(26)から長靴を渡された時は「本当に、みんなはこの中でやっているのか…」と感心した。選手たちは全員が長靴。踏み固まった雪の上で、滑らないようにバランスを取りながら、ランニングをしている。バッティングケージ内は、雪が解けて土がどろどろになった状態だ。踏ん張りのきかない中で、大会注目のスラッガー植田拓選手(3年)らが、気にせず竹バットをブンブン振っていた。

 この日は練習の半分以上がフリー打撃だったが、足元が不安な環境が、気付かぬうちに選手の体幹強化となり、足から伝わるの大地のパワーを余すことなく、腕に、バットに伝えられるようになったのだろう。

 北東北地方は、公立高校でも室内練習場を持つ野球部があるが、盛岡大付は室内練習場を持っていない。雪がグラウンドを覆っていようが練習は一日中、屋外で行う。気温が日中マイナス3度位までしか上がらない中でもたくましく練習している。

 関口監督は「冬場は雪で守備練習ができませんので、11〜2月いっぱいは打撃練習しかしません。東北のチームで甲子園で勝ち上がれているのは、得点力のあるチームばかり。全試合5点以上取るつもりで練習しています」とキッパリ言う。昨夏、プロ注目の好投手・高田萌生投手(創志学園−巨人)と2回戦で対戦した時も「15三振してもいいから10安打打つ」という思いきった覚悟で臨み、11対8で勝利。岩手県勢の甲子園10得点は史上初。ぶれないこだわりでチーム最高のベスト16入りを果たした。

 取材時のフリー打撃は「パワーも同時につけるため」(関口監督)と、打った後ゲージ裏でベンチプレス10回(80〜100キロ)を上げるという「合わせ技」だった。県外出身選手が多く、決して寒さに強い子ばかりではない。日が暮れてツララができるほど冷え込んでも、選手たちの動きは活発で「凍った雪の上でも、チャリンコ(自転車)がこげるようになるんですよ」と無邪気に順応力を自慢していた。

 盛岡は11月には初雪が降る寒冷地。だが「雪」や「寒さ」をハンディと思わない、誇りのようなものさえ感じた。

 まだ1回戦を突破しただけだが、こだわってきた打力で勝利した関口監督のインタビューからも安堵(あんど)感が伝わって来た。そして、打力について聞かれた時の答えが、いかにも東北出身の監督らしい、奥ゆかしさと、自尊心が込められた言葉だと(個人的に)強く感じた。

 「自信はありませんが、鍛えては、来ました」。

 前年覇者と対戦する次戦の智弁学園戦(2回戦、24日)も地に足つけた「わんこそば打線」に期待したい。【樫本ゆき】