韓国の次期大統領選に立候補の意向を示した潘基文(バンキムン)・前国連事務総長が、従軍慰安婦問題を巡る日韓合意で日本が拠出した10億円について、ソウルや釜山の少女像撤去が条件であれば「(日本に)返さないといけない」と発言した。韓国紙が13日報じた。最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)・前代表ら野党系の有力候補も合意破棄を主張しており、世論に押される形で大統領選の主要候補全員が対日姿勢を硬化している。

 12日に米国から帰国した潘氏が機中で中央日報など韓国紙の取材に答えた。潘氏は、釜山の日本総領事館前に設置された少女像に触れ「日本があれこれ言っているが、10億円が少女像の撤去と関係しているのであれば、間違いだ。それなら、いっそ返さなければならない」と述べたという。

 潘氏は2015年末の日韓合意直後、朴槿恵(パククネ)大統領に電話で「勇断を下した」などと伝え、歓迎する考えを示していた。少女像を支持する世論や野党系の候補に同調するような潘氏の態度については「大統領選で慰安婦問題を争点化したくないとの狙いがあるのではないか」(日韓外交筋)との見方もある。

 次期大統領選の支持率でトップを続ける民主党の文氏は、日本の賠償責任が明記されていないとして日韓合意の再交渉を要求。釜山の少女像に抗議して駐韓大使らを一時帰国させた日本政府を「非常に強気の報復措置だ」と批判し、反日世論をあおっている。支持率で文氏、潘氏に次いで3位につける李在明(イジェミョン)・城南市長も「元慰安婦の女性たちの意思が反映されておらず、世論とも懸け離れている」として日韓合意の全面見直しを主張している。

 一方、尹炳世(ユンビョンセ)外相は13日、国会で釜山の少女像問題について「国際社会では外交公館前に施設や造形物を設置するのは望ましくないというのが一般的だ」と明言。「設置場所について知恵を絞らなければならない」と述べ、撤去に向けて関係者と協議する必要性を示した。だが、朴大統領の弾劾手続きが進む中で政府が少女像の強制撤去に踏み切れば「世論の厳しい批判を受ける」(聯合ニュース)のは確実で、当面は動きが取れないとみられる。

=2017/01/14付 西日本新聞朝刊=