5月16日はトヨタ2000GTが1967年に誕生した日。
2023年で56年を迎える。
当時、世界水準のスポーツカー製作という威信と映画007のボンドカーへの起用が重なった影響は大きく、コスト度外視の急場しのぎの設定も多い。
また、保安基準に適合させるための改良部分も、前期・後期それぞれの特徴である。
ここではそれらの違いをチェックして、発展の歴史を検証したい。

【TOYOTA 2000GT 56th Anniversary トヨタ2000GT前後期比較 パワートレイン編】

 前期型と後期型、その違いについて、数多くのトヨタ2000GTのレストアを手掛けてきたビンテージカーヨシノ代表取締役、芳野 正明さんに伺った。

「前期型はすべて初めてのことだったことや映画用に見栄えを考慮したこともあって、特別な設定個所が多いです。もちろんトヨタの威信を担っていることからも、当時の国産でもっとも良いと思われるパーツをコストを意識せずに使用しているクルマです。そして後期型は自動車本来の乗りやすさや安全対策、そして法令遵守のための対策などをしっかり行っており、この時代ならではの仕様変更を強いられています。とはいってもプロダクトとしての完成度を追求しているのが後期型の特徴で、前期型の問題点を対策した変更点も多く、トヨタ 2000GTの完成形といえるのが後期型ですね。特別感は前期型の方が勝っている部分も多いですが、デザイン的に後期型のシャープな顔を好む人も多く、どちらも2000GTの高貴なアイデンティティーは失っていません。それぞれに当時の開発者たちの思いがしっかり伝わって来る、特別なクルマなんです」。


>>【画像34枚】ウォールナットをあしらったウッドタイプが採用されていたものが、車両法の改正や運輸省の指導による安全対策がすべての自動車に課せられていく時期と重なったことから、後期では内部にラバーを仕込む仕様に変わったホーンボタンなど


エンジン補器類やオイルパンの形状も対策仕様に

 エンジン関係に関しては、一気に改良しているわけではなく、年式によっても改良が施されており、少しづつ違いがある。
 エンジンヘッドやシリンダー内部は前期型も後期型も一緒だが、後期型は補器類やマネージメント系パーツが対策仕様となって改良されている。特にオイルパンの取り付け位置やオイルポンプ自体が異なっており、高回転型エンジンの安定性を高めるための設定としている。



ミッションやキャブレターの内部は改良されていた

 エンジンのコーナーでも触れたが、本体には前期型、後期型に変更はないが、補器類やマネージメント系パーツは改良が施されている。

 キャブレターも2バレルの40φというのは同じだが、内部は改良されている。またミッションも同様で、ギアレシオなどに変化はないが、内部のパーツに改良が施されている。



ラジエーターの構造を変更

 ラジエーターは決定的な違いがある。前期型はオールアルミ製を採用。冷却水のタンク位置が両サイドにあり、水が横方向に流れる設定としてる。後期型は真鍮製となり、冷却水タンクも上側に変更されて、水は上から下に落ちる仕組みに変更される。アルミは熱しやすく変化しにくいという理想的な材質であり、オーバークオリティーな設定だった。写真はビンテージカーヨシノが製作している前期型の完全再現品。



マフラーは主に騒音対策で径と長さを変更

 このコーナーで何度も言っているとおり、2000GTが現役だった時期は、法律の改正や安全性の見直しなどが1年ごと変化している。そのために対策をする必要があり、マイナーチェンジすることになったと思われる。エキゾーストも騒音対策から、パイプ径と長さが異なっている。

 エキゾーストも騒音対策から、パイプ径と長さが異なっている。さらに後期型はマフラー内部に消音対策のパーツが設置されている。とは言っても、この当時のクルマなので、現代のレベルからすれば排気音は大きいし、エキサイティングなサウンドを奏でてくれる。


【1】【2】から続く