9月6日、まだ夏の蒸し暑さが残る台湾で、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)による『アンダーアーマー・アジア・キャンプ SC Clinic』が開催された。台湾のほか、フィリピン、日本などから集まった18歳以下の選手たちに、カリー自身がドリブルやスリーポイントなどのスキルを教えるというもので、日本からは、コンバインを勝ち抜いた大倉颯太(北陸学院高校)と水谷槙之介(延岡学園高校)の2選手が参加した。

 実は水谷は、クリニックに参加する前はカリーのことを特別好きというわけでもなかったのだと言う。

「テレビや動画では、ただ細くて3Pのプレーばっかりで、シュートが入るだけやんとか思っていた」

 しかしその印象は、実際にカリーに会い、そのプレーを間近で見て完全に変わった。

「シュートだけじゃなくて、ドリブル・ハンドリングとかも巧い。あと、日本人とか高校生にはないすごい雰囲気をもっていて、『この人、すげえな』っていうのが見た瞬間にわかった」

大倉は普段からカリーの映像を見て研究する大ファン。

 一方の大倉は、以前からカリーの大ファン。ウォリアーズが出たNBAファイナルの試合を全部見て、ふだんからカリーのワークアウト映像を見て研究しているほどだという。

「(カリーは)ずっと冷静で、シュートが入らなくても打ち続けるシューターであり、ポイントガードでもあると思うんです。ぶれないメンタルっていうか、そういうところがすごいなと思います」と熱く語る。

 キャンプは2部構成で行われた。まずは一般公開前の非公開でグループに分かれてのクリニック。それを終え、選ばれた10選手が観客の前でピックアップゲームを披露した。

 非公開クリニックで、カリーと同じチームになることが多かった水谷は「一緒にプレーやらせてもらって、いい経験になりました」と言う。カリーと一緒にできたことに加え、アジアの他国の選手たちと、片言の英語やジェスチャーでコミュニケーションをとった経験も貴重だったと語る。

カリーのマークを相手に決めた大倉の3P。

 公開ピックアップゲームに参加する10人に選ばれた大倉にとっては、嬉しいサプライズがあった。試合は当初、台湾やフィリピン、日本などアジアの高校生選手同士で行われていて、カリー自身は張り切って審判を務めていたのだが、途中から相手チームに加わることになった。そして、加わって最初にマッチアップすることになったのが大倉だった。

「テレビで見ていた存在が、ちょっと手を出したら触れるところにいて、目があったりとか、それだけでもドキっとして、すごく楽しかったです」(大倉)

 カリーが加わってすぐ、大倉のところにパスが回ってきた。目の前にはカリーがディフェンスしている。それまで、まだ一度もシュートを打っていなかった大倉だが、ここぞとばかりに思い切って3Pを打ち、見事に成功させた。

「思い切って打ってみようと思ったら、ブロックもされずに、いい形でワンプレーできました」(大倉)

罰ゲームの腕立て伏せもカリーはもちろん参加。

 カリーは、最初から最後まで楽しみ、場を盛り上げていた。ピックアップゲームの前に行われた3Pゲームでも、ピックアップゲームでも、カリーが入ったチームは負け続きだったのだが、そのたびに負けチームに科された腕立て伏せを、高校生選手たちに混じってやり、勝負ごとには真剣な一面を垣間見せた。

 イベント後、大倉と水谷の2選手に、今回のクリニック参加したことが、自分にとってどんな経験になりそうか聞いてみた。

 将来的に、アメリカに挑戦し、代表入りして日本を担う選手になることが目標という大倉は、「短い時間だったんですけれど、他の国の選手とも関わったのは、これから自分の成長につながる財産だったと思います」と言う。

水谷「バスケって好きなやつがあがっていく」

 一方で、公開ピックアップゲームの10人に選ばれなかった水谷は、悔しさもあらわにした。

「10人に入れなかったのは、全然届かないところじゃなかっただけに悔しい。上には上がいると思った。また、ステフィン・カリーという人が今プレーしている世界の大舞台で、自分も頑張りたいと思い、そういうモチベーションを高くもって、これからも頑張っていこうと思います」

 将来は日本のプロを目指したいと言い、夢としてNBAも意識しているという水谷は、今後の目標を「楽しくバスケットボールをし、色々なステージにチャレンジすること」だと言う。今回、クリニックを主催したカリーも、バスケットボールを楽しみ、まわりに楽しさを見せてくれる選手なだけに、バスケットボールを好きで楽しむことが何より大事との思いをさらに強くしたという。

「バスケって好きなやつが上に上がっていくスポーツだと思っているから。だから、自分のスタイルを貫き通して、これからも頑張っていきたいと思います」(水谷)

文=宮地陽子

photograph by Naoya Sanuki