U-20W杯2017の出場権をかけて、10月13日からAFC U-19選手権バーレーンを戦うU-19日本代表のメンバーが発表された。

 26日に日体大とメンバー発表前の最後の選考試合を行ったが、目立ったのは2得点を挙げた小川航基(ジュビロ磐田)と、後半途中出場で流れを変えた岩崎悠人(京都橘高)ぐらい。

 堂安律(ガンバ大阪)や神谷優太(湘南ベルマーレ)らJリーグの試合に出ている選手は招集されていなかったが、彼らの不在を生かして選考に波風を立てるような選手は出てこなかった。

 結局、アジア予選を戦う代表メンバーでも、チームの立ち上がりから主力である堂安、坂井大将(大分トリニータ)、三好康児(川崎フロンターレ)らが順当に入り、サプライズとなるような選手は選出されなかった。

小川航基はU-19のエースになる資質がある。

 U-16日本代表が、一足先に来年のU-17W杯の出場権を獲得。エース久保建英のプレーが注目されており、結果内容ともに比較されることになるだろうが、U-19日本代表にもチームを勝利に導くエースの素質を持つ選手がいる。

 FW小川航基である。

 日体大との練習試合では2得点を挙げ、FWとしての存在感を示した。

 ボックス内での動き、裏を取る動きにも鋭さを増し、シュートへの意識も一段と高くなった。春先は「ボックス内でタイミングよく動き出せ」と名波浩監督に口酸っぱく言われていたが、最近は「点を取ることよりもシュートの数を意識しろ」と言われるようになった。段階を踏んで監督からの要求も変わり、成長を感じられるようになった。

「最初は試合にも絡めず、ベンチにも入れずに苦しい時間がつづいたんですけど、そこで監督がどういうことを求めているかを意識するようになって、最近ベンチに入れるようになりました。ただ、ベンチからピッチに出れていないのはまだ信頼が薄いんだろうなと思います。監督の信頼を勝ち取るためにも与えられたチャンスを活かし、代表に呼ばれたらしっかりと結果を出さないといけない」

 小川が言うように、ジュビロでベンチには入れるようになったが、ピッチはまだ遠い。ジェイや森島康仁に比べるとフィジカルが弱く、体が細いことは本人も自覚している。シュートの精度や守備などの課題もあり、リーグ戦はいまだ出場ゼロ。チームが残留争いの真っ只中におり、ルーキーの選手を試合に出すほど余裕がなく、リーグ戦出場が難しい状況になっている。

クラブで出場機会を掴みつつある三好や堂安。

 一方、三好は川崎フロンターレで徐々に出場機会を掴み、堂安もJ3ながらコンスタントにゴールを奪うなど、個々の選手が活躍するようになった。小川は普段から彼らと連絡を取り合っているが、代表合宿で会うと、試合に出ている選手に風格を感じることがあるという。

「同世代で活躍している人を見ると、葛藤はあります。別にそんなの気にしないぐらいの気持ちでやりたいんですけど、やっぱり気になりますし、そういう部分では負けていると思います。でも、選手として自分が劣っているとは思わない。なんで自分が出れないんだという気持ちでやるように心がけています」

 試合に出られない時期が続くと、試合勘が鈍っていく恐さがある。クラブでは出場のチャンスがない分、余計に代表での練習試合を「すごく重要だ」と考えている。試合が一番自分を成長させてくれるからだ。それが練習試合での2ゴールという結果にもつながっている。

手倉森監督に言われた「U-20からA代表へ」。

 夏には、リオ五輪の練習パートナーとして貴重な経験をした。

「チームにはA代表クラスの選手がたくさんいましたし、そういう選手がどういう声掛けをして、どういうプレーをして、どういう振る舞いをしているのかを感じることができました。自分がまだ劣っているところが見えたし、逆にやれる気持ちになれたところもあります。手倉森監督からは、『U-20からA代表へと、もうひとつ前を見るように。そこを目指せ』と言われました。東京五輪が近付けば期待も感じられるでしょうし、そういう経験をしてみたいので代表に選ばれるように点を取り続けたいです」

 東京五輪を主力として戦うための前哨戦と言えるU-20W杯。出場するには、アジアの予選を勝ち抜かなければならない。U-16世代が活躍しており、2007年以来のU-20W杯出場に向けても期待は大きく膨らむ。だが、現時点では不安の方が大きい。

「このままだとまずいですね。チーム状況が悪い時、声を掛けてリーダーシップを取れる選手がいないし、まだ人に任せている部分がある。悪い状況になるのは本大会でも絶対にあると思うので、そういう時に何ができるか。それは自分の役割としてやっていきたいなと思っています」

この世代も、リオ世代のように大人しい。

 チームのキャプテンは坂井だが、本当の意味でのリーダーがいない。他の選手から認められ、一目置かれるようなタイプがいないのだ。また、今時の選手の気質なのだろうが、おとなしい選手が多い。日体大戦も、ピッチに響いていたのは内山篤監督の声だけ。ピッチからはほとんど声が聞こえてこなかった。

 おとなしいままアジアを制したリオ世代の例もあるが、気持ちを前面に出したり、言葉に出してプレーすることは特に劣勢時には重要なことだ。

 精神面以外の課題も少なくない。

 日体大戦では途中から守備のブロックを敷いて守っていたが、簡単に失点してしまった。中東勢のカウンターやスピードは大学生の比ではない。彼らを封じ込めて大会で勝つためには、守備力がポイントになってくる。ブラジルを始め世界の強豪国は、どこも守備に力を入れている。攻撃に比べてやや脆弱な守備を、初戦までにどう整備していくかは極めて重要な課題だろう。

中東から点を取るには、この3人の爆発が必要。

 また、小川は堂安や三好、岩崎ら攻撃の選手との連係を深めていく必要がある。チームは2トップ体制で、今年は堂安と組むことが増えた。4月の静岡合宿では前半2トップでプレーし、後半はともにベンチに一緒に座り、試合を見ながらお互いの考えを擦り合わせた。堂安は「連係は悪くないけどオレは足元、小川くんは裏狙いでバラバラだったんで、細かいところを突き詰めていかないと」と今後の課題を口にしていたが、あれから5カ月が経過した今もまだ十分ではない。

 この2トップ、それに好調な三好が爆発しない限り、守備が堅い中東勢からゴールを奪うのは難しい。3日からの合宿でコミュニケーションとコンビネーションをどれだけ詰めていけるかが重要になる。

東京五輪で主役を張る覚悟はあるか。

「中東は暑いですが、暑いのは嫌いじゃないですし、連戦も問題はないです。中東のチームは何をしてくるのか分からないので不気味ですけど、自分たちはここまでしっかりと準備してきたつもりですし、コミュニケーションを取ってきている。いい結果を報告できると思います」

 小川は、自信たっぷりの表情で、そう言った。

 2016年、U-19日本代表はほぼ毎月フランス、アメリカなどの海外遠征や国内合宿などで活動し、強化を続けてきた。これほど時間と費用をかけて強化してきたチームは、この世代としては過去に例がない。それもすべて、10年ぶりにアジア予選を突破し、U-20W杯の出場権を獲得するためだ。彼らの世代が東京五輪で主役を演じるためにもアジア突破は必須である。

 その主役を張る覚悟を小川は持っている。

文=佐藤俊

photograph by J.LEAGUE PHOTOS