日本で初めて海外競馬の馬券が買えるレースとなる第95回凱旋門賞(3歳以上GI、仏シャンティー芝2400m、10月2日、日本時間23時5分、現地時間16時5分)のスタートが近づいてきた。

 5月の初回登録では過去最高となる11頭の日本馬がエントリーして話題になったが、出走するのはダービー馬マカヒキ(牡3歳、父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)だけとなった。

 マカヒキは、1969年「ミスター競馬」野平祐二を背にしたスピードシンボリが着外に終わってから、この半世紀ほどで延べ20頭目のチャレンジャーとなる。'99年エルコンドルパサー、2010年ナカヤマフェスタ、そして'12、'13年のオルフェーヴルによる4度の2着はあったが、世界最高峰の頂に、いまだ日本の人馬は到達していない。

 悲願達成が期待されるマカヒキは、同じコースで行われた前哨戦のニエル賞を完勝。その後も現地の小林智厩舎で順調に調整が進められている。主戦のクリストフ・ルメールがコメントしているように、70〜80%の出来だったニエル賞よりグッとよくなっており、万全の状態で本番を迎えられそうだ。

気性、走り、3歳、騎手……。勝利の条件は揃った。

 5頭立てという少頭数で、しかも格下が相手となったニエル賞に対し、本番は16頭立てで、メンバーが一気に強化される。

 とはいえ、5月にイスパーン賞を圧勝したエイシンヒカリ、ニエル賞の3日前のGIIIシェーヌ賞を完勝したフランス調教馬のアキヒロ、そしてマカヒキ自身の走りから、ディープインパクト産駒のシィンティーへのコース適性が高いことは間違いない。

 あとは、他馬との力関係だ。日本馬のレベルが世界トップクラスになりつつあることは、ドバイや香港など「中立国」で行われる国際レースの結果が示している。

 そのなかでも今年の3歳はハイレベルと言われており、世代の頂上決戦であるダービーを勝った実力馬が、きっちり仕上がっているのだから、当然期待が高まる。どこに行ってもおとなしく、すぐ横になって眠るという遠征向きの気性、超スローとなった前走でも綺麗に折り合ったチャンピオンディスタンス向きの走り、斤量面で有利な3歳、そして、コース特性やほかの騎手、厩舎、馬主について知り尽くしているフランス人ジョッキーが鞍上と、条件が揃った。

最強馬が完璧な競馬をしても負けるのがこのレース。

 かなりの確率で勝ち負けになる――と言いたいところだが、日本の最強馬が完璧な競馬をしても、「これよりも強い馬がいたのか!?」と驚愕させられる馬が出てくるのが凱旋門賞というレースである。

 最大の難敵は、今年のドバイシーマクラシックで日本のドゥラメンテを2着に下したポストポンド(牡5歳、父ドバウィ、英ヴェリアン厩舎)だろう。昨年のキングジョージVI&クイーンエリザベスステークスでGI初制覇を遂げてから、もっかのところ6連勝中。展開不問でどんなレースでもでき、叩き合いに強い「化け物」だ。

 日本でも騎乗経験のあるマキシム・ギュイヨンが乗るレフトハンド(牝3歳、父ドバウィ、仏ラフォンパリアス厩舎)も力をつけている。前走、凱旋門賞に直結することで知られる牝馬GIのヴェルメイユ賞を制しており、オーナーのヴェルテメール兄弟(ファッションブランド「シャネル」経営者)とラフォンパリアス調教師は、4年前、オルフェーヴルが圧勝するかと思われたレースで勝ったソレミアと同じコンビだ。

 フォワ賞を勝ったシルバーウェーヴ(牡4歳、父シルバーフロスト、仏バリー厩舎)、GIで5戦連続2着と高いレベルで安定しているファウンド(牝4歳、父ガリレオ、愛オブライエン厩舎)、イギリスとアイルランドのダービーを制したハーザンド(牡3歳、父シーザスターズ、愛ウェルド厩舎)、今年のキングジョージの覇者ハイランドリール(牡4歳、父ガリレオ、愛オブライエン厩舎)、そのハイランドリールを昨年のフランスダービーで下し優勝したニューベイ(牡4歳、父ドバウィ、仏ファーブル厩舎)など、勝っても不思議ではない馬がゴロゴロいる。

舞い上がりすぎないように、マカヒキは3番手。

 ということで、結論。

◎レフトハンド
○ポストポンド
▲マカヒキ
△ファウンド
×ハーザンド
注シルバーウェーヴ

 マカヒキを3番手としたのは、あまり期待しすぎて舞い上がらないように、と自制した部分もある。

自分のパソコンで馬券が買えるようになったなんて……。

 それにしても、世界最高峰の凱旋門賞で、こうして予想の印を打ち、そして自分のパソコンで馬券が買えるようになったなんて、初めてこのレースを現地で観戦した22年前の'94年のことを思うと隔世の感がある。日本の人馬がここまで来たというひとつの到達点でもあり、技術の進歩でもあるのだろうが、ともかく、楽しみが身近になるのはいいことだ。

 同じ10月2日には、日本で短距離王を決めるスプリンターズステークス(3歳以上GI、中山芝1200m)も行われる。

 こちらには、マカヒキの全姉ウリウリ(牝6歳、父ディープインパクト、栗東・藤原英昭厩舎)が出走する。この馬と、武豊が騎乗するブランボヌール(牝3歳、父ディープインパクト、栗東・中竹和也厩舎)の馬連とワイドでも買おうかな、と思っている。

 2頭ともディープ産駒だ。洋の東西で時間差をつけてディープ旋風が吹き荒れるか、楽しみに待ちたい。

文=島田明宏

photograph by Yuji Takahashi