またも悲願達成はならなかった。

 10月2日、日曜日の日本時間23時5分(現地時間16時5分)に行われた第95回凱旋門賞(仏シャンティー芝2400m、3歳以上GI、1着賞金285万7000ユーロ=約3億2570万円)を制したのは、ライアン・ムーアが騎乗したファウンド(牝4歳、父ガリレオ、愛オブライエン厩舎)だった。日本馬としてただ1頭参戦したマカヒキ(牡3歳、父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)は、16頭立ての14着に沈んだ。

 マカヒキは速いスタートを切るも、勝ち馬と同じオブライエン厩舎のハイランドリール(2着)に外に張り出される格好になり、内にもぐり込むことができなかった。さらに外には、これもオブライエン厩舎のオーダーオブセントジョージ(3着)がポツンといて、やや後ろの内埒沿いにはファウンドがいた。チームオーダーだったかどうかはわからないが、マカヒキは「チーム・オブライエン」の3頭に包囲される形になった。

 またマカヒキは、ある程度ポジションをとりに行って勢いがついてしまい、さらに、前に壁をつくれなかったため、キャリアで初めて引っ掛かってしまった。

 それでも、3、4コーナー中間で、ポストポンドをマークしながら押し上げたときの手応えは、「ひょっとしたら」と期待させるものだった。しかし、直線ではまったく伸びず、ファウンドから20馬身以上離れた14着に終わった。

 騎乗したクリストフ・ルメールは、「リラックスして走れなかった。スタートしてすぐオーバーペースになり、最後は疲れてしまった」とコメントした。

フランス人のルメールにとってはホームだったが……。

 1着から3着までがオブライエン勢で、3頭とも父がガリレオ(ガリレオ産駒はこれが凱旋門賞初勝利)で、オーナーはクールモアの関係者。チームの勝利であった。

 フランス人のルメールにとって、凱旋門賞はホームでの戦いに違いないのだが、周りがすべて味方だったわけではない。チーム・オブライエンの、イギリス、アイルランドをベースとする人馬に、美味しいところを持って行かれる結果になった。

日本馬が1頭だけだと、マークが集中する。

 今回の敗因は、この日のゲートからゴールまでの間だけにあったわけではない。

 確かに、スタートしてすぐ内に誘導できていれば、とか、道中で前に馬を置くことができれば……といった「タラレバ」を言いたくなるが、「チーム・ジャパン」で戦うことができていれば、敵方の包囲網を打ち破ることができたかもしれない。要は、1頭だけではなく、敵がマークしなければならない日本馬が複数いれば、オルフェーヴルが2着、キズナが4着になった2013年のように、違った戦い方ができたはずだ。

 筆者は何度も繰り返しているのだが、コース上にいる日本の人馬を少しでも多くして、凱旋門賞の舞台を日本化することが悲願達成への近道だと思っている。別に、日本馬でチームとしての戦術をとらなくても、複数いるというだけで力になる。

 '11年のドバイワールドカップなどは、勝ったヴィクトワールピサ、2着のトランセンド、8着のブエナビスタとタイプの異なる最強馬が3頭いたため、どんな展開になっても、どれかには有利に働くだろうとレース前から予想されており、他国にとっての脅威となっていた。

 ヨーロッパ調教馬以外は勝ったことがない「超アウェー」の凱旋門賞を、少しでもホームでの戦いに近づけるには、それしかないとは言わないが、ひとつの有用な方法であることは確かだろう。

凱旋門賞には珍しく、3歳馬が振るわない年だった。

 優勝したファウンドは、これで通算19戦6勝。前走までGIで5戦連続2着となかなか勝ち切れなかったが、'14年マルセルブサック賞、'15年ブリーダーズカップターフに次ぐGI3勝目を挙げた。エイダン・オブライエン調教師は'07年ディラントーマスに次ぐ凱旋門賞2勝目、ムーアは'10年ワークフォースに次ぐ同2勝目となった。

 勝ちタイムの2分23秒61はコースレコード。マカヒキと人気を分け合ったポストポンドは5着。斤量的に有利な3歳馬で最先着したのは8着のサヴォワヴィーヴルだった。

 マカヒキの次走は未定とのこと。

馬券が買えると、凱旋門賞との距離が全然違う。

 これが日本で初めての海外競馬の馬券発売レースとなったわけだが、購入方法がパソコンやスマホなどによるインターネット投票だけだったにもかかわらず、41億8599万5100円もの売上げを記録した。競馬場やウインズでも発売された同日のスプリンターズステークスの126億6409万3600円には及ばなかったが、前日のG3シリウスステークスの23億3127万8700万円は大きく上回った。

 スポーツ紙では連日、スプリンターズステークスよりずっと大きく扱われ、ファンにとって、日本馬を応援するだけだったこれまでの凱旋門賞とは異なるレースとなった。馬券を売ると、競馬はこんなに違うのかと、あらためて思わされた。

欧州調教馬以外なら、日本が一番手なのは変わらず。

 さて、同日の第50回スプリンターズステークス(10月2日、中山芝1200m、3歳以上GI)を勝ったのは、ミルコ・デムーロの乗るレッドファルクス(牡5歳、父スウェプトオーヴァーボード、美浦・尾関知人厩舎)だった。

 この馬は日本ハムの大谷翔平ばりの、芝で4勝、ダートで4勝という「二刀流」。結果的に「サイン馬券」になった。

 単勝1.8倍の圧倒的1番人気に支持されたビッグアーサーは、道中折り合いを欠いたうえ、直線で進路を確保できず、12着に大敗した。

 15時40分に秋の短距離王決定戦があり、7時間半ほど経った23時5分から、自国のダービー馬が出て馬券が買える世界最強馬決定戦が行われるという、初めての「世界競馬祭り」とでも言うべき1日が終わった。

 あくまでもファンサイドからの見方ではあるが、「世界」がより身近になったことは間違いない。世界最高峰の頂は高いが、そこはもう見えている。エルコンドルパサーやオルフェーヴルなどの走りを引き合いに出すまでもなく、ヨーロッパ調教馬以外の馬が勝つとしたら、北米や南米、オセアニアや香港ではなく、日本が一番手だろう。次なるチャレンジに望みをかけたい。

文=島田明宏

photograph by Yuji Takahashi