「ゴールを決められる、ストライカーとしての怖さを示して、自分に対する認識を変えなくちゃいけない」

 レスターの岡崎慎司は常にそう繰り返してきた。先発リストから名前が消えた現在はもちろんだが、守備力や運動量などが評価されていた昨季も「そういうところを評価されるのは危険だ」と言い、FWとしての存在価値を示そうと戦っている。

 昨季に続き今季も先発出場を続けるヘルタ・ベルリンの原口元気だが、守備に奔走させられ、攻撃での仕事がなかなかできない現実のなかでもがいている。攻撃時にパスすら出てこない。9月24日のフランクフルト戦も10月1日のハンブルガーSV戦でも、原口の状況は同じだった。

「どうやって攻撃で力を出せるのか、というのは常に考えている。でも今日も、後半はほとんどチャンスがない状況だった。一番のチャンスはイビセビッチやシュトッカーに集まる。変な話、アシストを増やしていったほうが良いのか、と言う考え方もある。自分がやるべき守備やボールを繋ぐという仕事は問題なくやれているし、でもそれは去年から出来ていること。今年はその先の一個、何かやることを目指しているので、それがなかなか出来ず、悔しいですね」

武藤も、宇佐美も欧州でもがいている。

 試合出場機会を得ようと、ある種の便利屋としての任務をこなす。それは破壊力抜群のストライカーが持ち合わせない、日本人の選手ならではの強みを発揮することでもある。しかし、そこで留まりたくないと彼らは今、試行錯誤を続けている。

 怪我による長期離脱から復帰したマインツの武藤嘉紀は9月29日のヨーロッパリーグで1ゴールを決め、先発入りに大きくアピールしたものの、その試合で右ひざの負傷が再発してしまう。アウクスブルクに移籍したばかりの宇佐美貴史は、ベンチ外が続いていたが、9月29日の試合前日練習で負傷。両者は代表も辞退することになった。

大迫勇也、ただいま絶好調。

 苦しむ日本人FWが多いなかで、爆発的な活躍を見せているのがFCケルンの大迫勇也だ。開幕戦こそ途中出場だったものの第2節から5試合連続で先発出場し、第4節、第5節で連続得点。負け無しで4位に位置するチームを文字通りけん引している。

 前線でくさびのパスを受けて、リンクマンとしてゲームを動かす。第5節のライプツィヒ戦で決めたゴールは、右足でトラップし、左足で仕留めた。大迫の高い技術をドイツメディアも絶賛している。

 10月1日、敵地ミュンヘンで行われたれ第6節バイエルン・ミュンヘン戦でも、3本のシュートを放っている。1本はGKにキャッチされ、CKからのヘディングシュートはわずかに枠を外れた。そして、素早い飛び出しからのシュートはゴールネットを揺らしたがオフサイド。ケルンの総シュート数が5本だったことを考えると、ケルンの大迫からは点取り屋としての風格が漂っている。

 バイエルンのこの日のシュートは27本。ポゼッションでも大きくケルンを上回ったが、試合は1−1のドロー。絶対王者に先制点を許したものの、ケルンは動じることがなかった。立ち上がりは受け身になってしまったが、時間経過とともに落ち着きが増し、同点に追いついたあとも慌てなかった。2トップの大迫とモデストがパスを引き出し、それをさばく。前線でボールが収まることもまたケルンの安定感を生んだ。

フンメルスやシャビ・アロンソを背負って。

 バイエルンのセンターバックはフンメルスとハビエル・マルティネス、そしてボランチはシャビ・アロンソ。そういう選手を背負いながら、大迫はほとんどミスのないプレーを披露した。

「落ち着いてできている。力が入っていなくて。力みなくできているので、それが一番じゃないですかね。(バイエルン相手でも)気負うことはまったくなかった。それじゃあ意味がないし。チャレンジすること、ゴールに向かっていくことが一番大事だと思うから。それしか考えていなかった。でもやっぱり、シュートは決めたかったですね。ヘディングもあったし。オフサイドになったプレーも、飛び出すタイミングをもう少し我慢できれば良かった。もっと頭をクリアにしておけば大丈夫だったのに。ちょっとあのときはいっぱいいっぱいになってしまった」

 そのオフサイドのシーンだが、前線で楔のパスをうけて、中盤に蹴り返したボールのリターンを要求する。しかし大迫の希望に反して横パスが出た瞬間には、今度は裏を狙い縦へと動き出している。その切り替えの速さも、大迫の武器だ。

ボールを持った選手が、いつも大迫を探している。

 バイエルン戦では数が限られたものの、ライプツィヒ戦では、受けて、出して、ターンしてという連動が何度も見られ、パスを出したあとDFを引き付けて味方のパスコースを作り、その直後の縦パスに反応するなど、クレバーかつ機敏な動きも多かった。ボールを持った選手が、いつも大迫を探している様子がとても印象的だった。

「2トップになって、今はFWとして見てもらえていることが大きい」

 大迫は、自身の現状をそう語った。

 チームが1トップを採用していた昨季、大迫は左アウトサイドやトップ下で25試合に出場したが、評価はそこまで高くなかった。実際、サイドで大迫の強みが生きるケースは少ない。彼は中央に立ってこそ生きる選手なのだ。

 それはシーズン途中に移籍し、15試合出場6得点を決めて「9番と10番の仕事ができる」と評価された1860ミュンヘン在籍時もそうだったし、鹿島アントラーズ時代も動きなおしの質の高さで、ボールを引き出し、チャンスメイクし、自ら得点を決める選手だった。

「2トップでやるんだったら、絶対に負けない」

 力を買われ、'14-'15シーズン、1部に昇格したケルンに加入し、28試合3得点。しかしチームはその後1トップに変わり、大迫の立場も微妙なものになったのだ。

 彼の言葉を借りれば、昨季は「FWとして見てもらえなかった」。苦しい状況をどんな想いで過ごしていたのだろうか? バイエルン戦後に聞いた。

「去年は1トップでずっとやっていたから、そこはちょっと自分として難しい部分はあった。でも2トップでやるんだったら、絶対に負けないと思っている。なかなか試合に出られなくて苦しいときも、絶対にいいことがあると思って、我慢しました。このブンデスリーガで本当に活躍したい、結果を出したいということ、それしか考えていなかった。

 もっとここで目立つプレーヤーになりたいし、そうなれるという自信はありました。自分のいい感じの流れに持っていければ、絶対にうまくいくと思っている。今シーズンもまだまだこれから、始まったばっかりなので」

 自分の武器を認めてもらいたい。その気持ちが指揮官にも伝わったのだろう。

「監督からの信頼は強く感じています。いつも前向きな言葉をかけてくれるし、“お前の好きなようにすればいい”と言ってくれる。その信頼や期待にもっと応えたいですね」

当初、大迫のドイツ移籍は代表を意識してのものだった。

 日本代表に入り、W杯に出場し、そこでプレーしたい。

 そういう決意のもと、大迫は2014年1月ドイツへやってきた。W杯のピッチには立ったが納得のいく大会とはならなかった。それでも大会後にケルンに移籍し、2部から1部へとステップアップを果たし、さらに上へと願ったものの、ハリルホジッチ監督のメンバーリストにはもう1年以上大迫の名前はない。

「代表ウィークの間もたくさん練習して、たくさん試合をやって、いろんなことがプラスになっている。今はケルンのことしか考えていない。本当に今はリーグに集中できているから、楽しいです。やっぱりチームで充実しないと。

 クラブでのプレーが一番だなとつくづく思うんです。代表はそのご褒美みたいなもの。毎試合レベルの高い相手と戦える今の環境が自分を成長させてくれると思うし、それが一番いいことだと思うから。代表のことはまったく考えていないんですよ」

 時折笑顔を交えながら、充実した日々について話した。

「FWなんだから、ゴールに対する勢いを出さなくちゃ」

 代表招集を知らせる協会からのレターが届くのは、試合の2週間前。つまり欧州でプレーする選手の多くは、メンバー発表を待たずとも結果はすでに知らされている。代表落ちを試練と考えたこともあったに違いない。けれど、代表との距離が生まれたことが、結果的に大迫にとってはチャンスになった。レターが届かなくなったら、もう向き合うのはクラブでの競争だけだ。だから、どんなに厳しい状況に立たされても逃げる場所はない。大迫はケルンでの毎日を必死で戦ってきた。

「絶対にやれる」と自分を信じ、FWとして生きるためのチャンスを待った。

 そんな大迫の姿をケルンのシュテーガー監督はずっと見てきた。そして、大迫に賭けた。2トップにシステムを変更した本当の理由はわからないが、大迫が生きるポジションがピッチの中に生まれたのは事実だ。

「FWなんだから、もっとゴールに対する勢いや相手に対しての怖さを出していかなくちゃいけない」

 ケルンで掴んだチャンスを飛躍のきっかけに変える。そんな強い決意が大迫から感じられた。試練を乗り終えた自信が彼を輝かせている。

文=寺野典子

photograph by AFLO