凄まじい破壊力だった。

 浦和レッズは、これまで昨年のリーグ戦、天皇杯決勝などここぞという大事な試合でガンバ大阪に苦汁を舐めさせられてきた。

 しかし、10月1日の試合ではそれまでの屈辱を晴らすような圧倒的な攻撃力で4−0とガンバを粉砕した。柏木陽介曰く「パーフェクトな試合」だったわけだが、その攻撃をリードしたのが浦和の“右”だった。

 右アウトサイドの駒井善成、右センターバックの森脇良太、右ボランチの柏木、右シャドーの武藤雄樹の4人が織り成す連動したプレーは見ていて楽しく、その攻撃力は半端ではなかった。4点中、先制点の高木俊幸、3点目の宇賀神友弥のゴール、4点目のズラタンのゴールは右からの崩しから生まれ、2点目の武藤のゴールは右サイドからのミドルシュートだった。

ガンバは駒井のドリブルにDFラインを下げられた。

 浦和の右で脅威の軸になっていたのが、駒井だ。

 右アウトサイドで高いポジションを取り、ボールが入るとドリブルで仕掛ける。無闇に突っ込むのではなく、先制点のように柏木が横に来てフリーなのを見てパスを出し、ゴールの起点になった。

「あれは練習で出せていた形だったんで、狙い通り美しい崩しでした」

 満足そうな表情を浮かべた駒井だが、その先制点でスイッチが入ったように、キレキレのプレーを見せた。「これでもか」というぐらい仕掛けつづけ、ガンバの守備陣に深刻なダメージを与えたのだ。

 例えば1点目のシーン。

 ガンバはボールラインにラインを設定するので、駒井のドリブルで押し込まれるとラインを下げざるをえなくなった。

 藤春廣輝は背後の武藤の動きを警戒しながら、駒井とは距離を置いていた。本来ならボランチと挟み込むか、あるいは武藤をボランチに任せてスライドして駒井の対応に行きたかったが、それができなかった。

対峙した藤春を疲労困憊に追い込んだ仕掛け。

 サイドから攻撃されるとガンバの選手が完全にボックス内に入って守備をするのを分かっていた柏木は、あらかじめ駒井に「マイナス(のパス)を狙って俺のところを見ててくれ。絶対にフリーやから」と声をかけていたという。

 駒井はドリブルで深いところまで行くとみせかけて、横の柏木にパス。柏木はボックス内で一度引いて、抜ける動きを見せた武藤にダイレクトで出した。ここで勝負ありだった。

 そして、ここから駒井のショータイムが始まった。前半11分、槙野智章に絶好のパスを出して決定機を演出、13分には右サイドから中に流れてシュートを見せ、32分には右から1人でドリブルで持ち込んでシュートを打った。ガンバの大森晃太郎を前半でベンチに追いやり、対峙する藤春にまったく仕事をさせなかったのである。

 藤春は試合後、疲労困憊の体だった。

「まったく上がることができなかったです。駒井くんがキレキレなのは分かっていたけど柏木くんがいて、それに森脇くんが上がってきてずっと3−1でやられていたんで、かなりキツかった。駒井くんはやっかいですね。スピードに乗ったら止められないし、体を揺らしてタイミングをずらすのがうまい。僕の中ではミキッチと同じかそれ以上、イヤな相手です」

ようやく取り戻した「思うようなキレ」。

 一方、駒井はしてやったりの表情を浮かべてこういった。

「最初は常に縦を狙っているんですけど、藤春さんのポジショニングが縦を切っていて、しかもスピードがあるんで、そのまま行ってもキツイなって思ったんです。それで中で揺さぶりつつ縦に行くとか、駆け引きして狙いを絞らせないようにしました」

 ドリブルだけではない。

 京都サンガ時代から豊富な運動量で疲れ知らずだったが、この試合でも後半終了間際、カウンターで30m以上全力で走ってゴールに向かった。

「ようやく体に力が入って、思うようなキレでボールを運べるようになったんです。これを継続していくことが成長につながると思います」

選手層の厚い浦和でも、徐々に存在感を発揮。

 駒井は今シーズン、京都から浦和に移籍した。豊富なFW陣に加え、梅崎司、関根貴大ら優秀なアタッカーが多い中、競争を勝ち抜いて試合に出るイメージを持っていたが、現実はそれほど甘くはなかった。ファーストステージはほとんどが途中出場で、スタメン出場はわずか3試合。慎重な監督の信頼を掴むまでには至らなかった。

 セカンドステージのスタメン出場はガンバ戦で5試合目となったが、ここに来てようやく自分の調子に手応えを感じられるようになったという。

「京都では、ずっとスタメンで90分走れる体だったんですけど、レッズに来て途中から出ることが多くなって、試合の感覚や自分の間合いとかが掴みづらかった。早く結果を出さなあかんというプレッシャーもありました。しかも足首をケガしてから自分のステップが踏めず、いろんな葛藤をしながらプレーしていたんです。

 でも、FC東京戦(9月17日)から足首の調子がよくなって、やっと思い通りの力で踏み込めるようになったし、ムリがきく体になってきた。それが自分の気持ちに余裕を与えてくれて、今のプレーにつながっていると思います」

ドリブル縦一直線から、プレーの幅が一気に広がった。

 3得点に絡んでいるように、プレーの幅が確実に広がっている。前はドリブルも縦一直線で、タッチラインを越えたり奪われてカウンターを喰らうことが多かったが、今は自分で行くところ、パスを出すところを冷静に見極めている。イケイケドンドンのドリブルではなく、自分の間合いで勝負し、周囲との距離感、ボールを受ける位置などバランスが非常にいい。それが破壊力を生んでいる。

「今日は右サイドから点が生まれたし、右サイドの選手としてはすごくうれしいです。個人的にはシュートを決めきれなかったので、あれを決めないともうひとつ上の選手にはなれない。やっぱり得点なり、アシストをしたかったです。ただ、こういう攻撃を続けて、もっと精度を高めていけば武器になると思うんで、つづけていきたいですね」

 駒井は浮かれることなく、冷静な表情でそう言った。

J1で対策されるのはこれから。ドリブルは通じるか。

 ガンバ戦は、藤春が少し距離を空けてきたことで自分の間合いでプレーができた。だが、対戦相手に警戒されるようになれば、当然対策を講じられるだろう。その網をドリブルで突破し、得点に絡むプレーができれば右の脅威はさらに増す。右の破壊力が増せば、今度は逆サイドも生きてくる。そうなれば浦和の攻撃力はより凄味を増すだろう。

 難敵ガンバを打ち破って勝ち点3を積み上げたことは、ステージ優勝、年間総合というタイトルを狙う浦和にとって非常に大きかった。この日のパフォーマンスは、監督の中で駒井がファーストチョイスとして浮上するだけのインパクトがあったはずだ。

「今日の試合に満足せず、今日のプレーを普通のパフォーマンスにできたらと思います。やっぱり試合に出ることがすべての薬になるなって思うんで」

 右で自分が生きる術が見えた。

 この道の先には、タイトル獲得への貢献はもちろん、日本代表も見えてくるはずだ。

文=佐藤俊

photograph by J.LEAGUE PHOTOS