ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の周辺が騒がしい。日本代表で主力を担う海外組の多くが、所属クラブで出場機会をつかんでいないからだ。直近のリーグ戦で久しぶりにピッチに立った選手もいるが、根本的な解決にはほど遠い。

 所属クラブでゲームから遠ざかる海外組について、ハリルホジッチ監督は「普通の基準なら呼べない」と話した。だが、「長友、吉田、長谷部、香川、清武、本田、岡崎……」と具体的な名前をあげ、「そういう選手を外してしまうと、誰を代わりに呼べばいいのか」と続けた。9月29日の記者会見での発言である。

 チームの主軸となる選手たちに対して、「試合には出ていなくても、信頼をしている」というメッセージを送るのは、代表監督として必要なマネジメントだろう。代表チームのメンバー選考は、代表監督の専権事項でもある。

コンスタントに試合に出ている選手だけで編成すると。

 それにしても、「結果を出している選手が選ばれる」という前提を、置き去りにしてはいけない。ハリルホジッチ監督はヨーロッパ各国のリーグとJリーグのレベルの違いを指摘し、国内組で参加した昨年8月の東アジアカップの走行距離を具体的な根拠にあげた。東アジアカップのゲームは走行距離が短いと言うのだが、中国で行われたこの大会は中2日または中3日の3連戦で、直前までJリーグが開催されていた。

 他でもないハリルホジッチ監督が、北朝鮮との初戦に敗れた直後に「準備期間が欲しかった。チームのフィジカル的な問題で、数人の選手がフィジカル的にキツい状態だった。何人かの選手は、すでにかなりの疲労がある」と振り返っている。海外組の優位性を裏付ける根拠として、東アジアカップがふさわしいものとは考えにくい。

 そもそも、国内組を数多くスタメンに抜擢したチームは、競争力が著しく低下してしまうのだろうか。最終予選を戦うチームとして、本当にふさわしくないのだろうか。

 ということで、「所属クラブでコンスタントに試合に出ている」選手だけで、チームを編成してみる。チームの現状から大幅にかけ離れないためにも、9月に公表された89人の予備登録メンバーから選手を選ぶことにする。

GK、SBは問題なし。吉田麻也のかわりは……。

 GKは西川周作(浦和)で問題ない。第2、第3GKには林彰洋(鳥栖)、東口順昭(G大阪)の常連2人はもちろん、SVホルンでスタメン出場している権田修一、リオ五輪代表の中村航輔(柏)を招集してもいい。

 9月のW杯予選で最終ラインを形成した4人のうち、所属クラブで定位置をつかんでいないのは吉田麻也(サウサンプトン)だ。森重真人(FC東京)とコンビを組むセンターバックに、誰を抜擢するか。

 経験重視の人選なら、槙野智章(浦和)が適任だろう。浦和とはポジションが異なるものの、センターバックとしての資質は備えている。

 丸山祐市を起用してもいい。森重とはFC東京でプレーしており、コンビネーションに不安はない。左足から繰り出すフィードには、攻撃の足掛かりとしての期待も抱ける。とりわけイラク戦では、丸山の攻撃性能を生かしたい。ディフェンス重視の相手を崩すには、センターバックのフィードが有効な手立てになるからだ。

 両サイドバックは、9月の2試合と同じ人選だ。酒井宏樹(マルセイユ)に右サイドを、酒井高徳(ハンブルガーSV)に左サイドを託す。

ボランチから長谷部を外すと浮上するのは?

 ハリルホジッチ監督が作成したリストには、ボランチの候補者が5人いる。長谷部誠(フランクフルト)、柏木陽介(浦和)、永木亮太(鹿島)、山口蛍(C大阪)、大島僚太(川崎F)だ。長谷部は週末のリーグ戦に出場して帰国したが、彼を使わずにダブルボランチを組んでみる。

 イラクの守備網を攻略しつつ、カウンターをケアするコンビとして、柏木と山口をピックアップしたい。浦和の攻撃を牽引する柏木は、攻撃のタクトをふるうだけでなくリスタートのキッカーも任せる。ボールを奪い取る能力に長ける山口は、守備のバランスを整える役割を担ってもらう。

 攻撃に軸足を置くボランチは、大島も選択肢に入ってくる。ただ、所属する川崎Fの戦いぶりに波がある。それならば、リーグ戦で4連勝を飾っている浦和で気持ち良くプレーしており、イラク戦が行われる埼玉スタジアムに馴染みの深い柏木がベターだと考える。

2列目は浅野、原口、齋藤のドリブラートリオ!?

 2列目には好調な選手が揃っている。右から浅野拓磨(シュツットガルト)、原口元気(ヘルタ)、齋藤学(横浜FM)の並びはどうだろう。ドリブラータイプの3人が同時出場することになるが、原口と齋藤はパスの出し手にもなれる。浅野はフリーランニングも持ち味だ。

 イラクは間違いなくディフェンシブで、敵陣にスペースを見つけるのは難しい。それでも、密集を苦にしないのは3人に共通するところだ。スピードスターと呼ばれる浅野にしても、ゴール前の狭いスペースでの仕事に磨きをかけている。2列目の活動量は、相手守備陣にストレスをもたらすだろう。

 3人の誰かを交代カードにしたいのであれば、トップ下に中村憲剛を起用し、浅野をベンチに控えさせる。中村憲の経験と実績とスピリットによって、チーム全体に安定感と安心感が広がるのは間違いない。この35歳が積み上げてきた経験には、ゴール前を固めてくる相手の攻略法ももちろん含まれている。リスタートの局面では、その右足が大きな武器になる。

植田、遠藤航、マイクなど、選択肢は意外に広い。

 1トップには金崎夢生(鹿島)を指名する。謹慎処分をなお解かないのであれば、大迫勇也(ケルン)を使いたい。所属クラブで試合に出ているだけでなく、ゴールという結果も残しているストライカーこそ、“旬”のタイミングで招集したいのだ。

 トップ下に中村憲、1トップに小林悠を同時に起用し、川崎Fで構築されている連係をそのまま生かすアイディアもある。大島を含めた3人のコンビネーションを持ち込む、という考えかたがあってもいい。

 追いかける展開に立たされたら、豊田陽平(鳥栖)の高さをゴール前に注入する。使いかたさえ間違えなければ、高さはチームを助けるオプションになるものだ。

 最終ラインなら植田直通(鹿島)、ボランチなら遠藤航(浦和)、2列目なら小林祐希(ヘーレンフェーン)や南野拓実(ザルツブルク)、前線ならハーフナー・マイク(デンハーグ)や久保裕也(ヤングボーイズ)ら、「所属クラブで常時試合に出ている」との条件を満たす選手はまだいる。選択肢は意外なほど幅広い。

重要なのは誰が出るかではなく、チームの勝利。

 海外組がごっそりいなくなると、チームとしての経験値が下がり、対戦相手への威圧感が薄れるのは正直なところだ。

 ただ、2013年の東アジアカップのような例もある。

 国内組だけで編成されたチームがほぼぶっつけ本番で臨んだが、敵地ソウルで韓国を破るなどして大会初優勝を成し遂げている。時間の無さを問われた選手たちは、「Jリーグで対戦している選手なので、何となくでも特徴は分かる」と話したものだった。「海外組がいないから負けた、と言われるわけにはいかなかった」とも。

 これまでチームを牽引してきた海外組の実力と実績は、もちろん尊重されるべきだ。とはいえ、日本代表でもっとも重要なのは「誰が試合に出るのか」ではなく、「チームの勝利」に他ならない。メンバーの選考は監督の専任事項だが、それゆえに監督は結果責任を負うのである。

文=戸塚啓

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