なんで今頃WBC予選? という気がしないでもないが、まあいい。

 9月25日、ニューヨーク郊外のマイナーリーグ球場で行われた予選4組本大会出場決定戦で、イスラエルが英国を9対1で下し、1次ラウンドのソウルプールへの進出が決定。2017年のWorld Baseball Classic(以下WBC)に出場する全16カ国が出揃った。

 予選を勝ち抜いたのはイスラエルとオーストラリア、メキシコとコロンビアの4カ国である。オーストラリアやメキシコ、コロンビアはメジャーリーガーを何人も輩出しているのでWBC出場に驚きはないが、イスラエルと聞くと少し不思議な気もする。

 今さら言うまでもないことだけれど、メジャーリーグはWBCを「ベースボールのプロモーションの場」として捉えているので、単純に納得できないようなルールが幾つか存在する。

時代が時代ならディマジオはイタリア代表だった。

 たとえば出場資格。決勝ラウンドの開催地にしてベースボールの生まれ故郷アメリカ合衆国が、「移民の国」という利点を最大限に生かして、親のどちらかが当該国の国籍を持っているか、当該国で出生していれば代表資格を与えている。

 おまけに米国に移民した子孫に比較的、簡単に市民権を与えるイスラエルやイタリアのような国もあり、代表に選出された選手には、いわゆるユダヤ系アメリカ人、イタリア系アメリカ人が多い。もしもの話だが、昔の野球選手が時空を超えてWBCの代表になれるなら、通算4度のノーヒッターを成し遂げた左腕サンディ・コーファックスはイスラエル代表、56試合連続安打のメジャー記録保持者ジョー・ディマジオはイタリア代表になる可能性があるということだ。

 それはともかく、WBC独特のルールがあるがゆえに現在、過去のいずれかにアメリカのプロ野球、すなわちメジャーリーグかマイナーリーグでプレーしている選手たちは多い。祖先が生まれた国への愛国心があるかないかは別にして、「どこかで聞いた名前だな」という選手が代表に名を連ねている。

イスラエルやオーストラリアに現役MLB選手が入る?

 たとえばイスラエル代表には、レッドソックス時代、上原浩治、田澤純一両投手と共に2013年のワールドシリーズ優勝を支えた左腕クレイグ・ブレスロウ投手(今季マーリンズほか)や、メッツ時代の高橋尚成、五十嵐亮太両投手とチームメイトだったアイク・デイビス内野手(メッツほか)らがいる。

 予選を勝ち抜いたオーストラリア代表にも、そういう選手がいる。

 2月に行われた予選1組で勝ち上がり、1次ラウンド・東京プールへの進出を決めたオーストラリア代表には左腕ライアン・ローランドスミス投手がいる。今年大リーグ通算3000安打を達成したイチローと同時期にマリナーズのユニフォームを着ていたこともあるので、ご記憶の方もおられるのではないかと思う。

 オーストラリア代表には他にも、ブレーブス時代に川上憲伸、斎藤隆両投手の同僚だったピーター・モイラン投手、ツインズ時代に西岡剛内野手とチームメイトだったルーク・ヒューズ内野手などがいる。

 WBCの1次ラウンド(東京、韓国、メキシコ、マイアミで開催)が始まれば、新たに(そして大勢の)現役メジャーリーガーが加わる見込みで、オーストラリア代表や1次Lソウルプールを戦うイスラエル代表が戦力をさらにアップさせて、日本や韓国を驚かせることになるかも知れない。

最大の難敵は「環境と対戦相手の突然の変化」では?

 もっとも、侍ジャパンにとっての最大の難敵は1次ラウンドで戦うオーストラリアやキューバ、2次ラウンドで顔を合わせるだろう韓国、イスラエルでもない。東京で行なわれる2つのラウンドを勝ち進んだ後に待ち受ける、「環境と対戦相手、ふたつの突然の変化」ではないか。

 例えば'06年第1回大会での日本は、第2ラウンドで米国、メキシコ、韓国と同組となり、米国で3試合戦い、準決勝に進出した。その第2ラウンドで日本は内外野が天然芝で、外野フェンスが左右非対称の米国の野球場を経験した。また、全員がメジャーリーガー、もしくはメジャーリーガーの多いチームを実戦を通じて体感できた。

今回も2次ラウンドまでは東京開催だけに……。

 ところが前回の'13年大会からは第2ラウンドまでがアジアで開催され、いきなり準決勝でアメリカ(サンフランシスコ)でプエルトリコ代表と対戦し、1対3で敗れている。直前にはアリゾナでミニ・キャンプが行われ、キャンプ中のメジャー球団と練習試合を行っているが、それはあくまでキャンプ施設での練習試合に過ぎない。敗れた選手たちが前述した懸念を原因に挙げたわけではないが、単純に「ホームからアウェーに移って、準決勝から2連勝して優勝しろ」というのは、どんな競技においても簡単な使命ではないと思う。

 今回も日本の入る組は第2ラウンドまでは東京での開催なので、準決勝に進出したらいきなりロサンゼルスでの試合となる。反対側のブロックはどの国が出てきてもほぼ全員がメジャーリーガー、もしくはメジャーリーガーの多いチームであり、それもまた前回大会とまったく同じだ。

 大会の仕組みそのものは今さら対策を立てようもない。与えられた環境でやるしかないのも当然だ。それなのに“これが国際大会の難しいところだ”と単純に納得できないのは、なぜだろうか――。

文=ナガオ勝司

photograph by Nanae Suzuki