長い1年の終わり。昨年10月に開幕したアメリカPGAツアーは、最終戦でローリー・マキロイが優勝を飾ってシーズンの幕を閉じた。

 ジョージア州アトランタでの決着は劇的で、最終日はケビン・チャッペル、ライアン・ムーアとの三つ巴のプレーオフに突入。4ホール目でバーディパットを沈めた直後の雄叫びとガッツポーズがシーズンエンドにふさわしかった。

 この最終戦の勝敗が意味するのは、ただの1試合の結果に留まらない。シーズンの成績を通じたポイントレースによる年間王者が決定。昨年の夏場まで世界ランキング1位に君臨していたマキロイは、プレーオフシリーズの2勝目とともにフェデックスカップ王者の称号も手に入れた。

 最終戦の賞金のほかに、1000万ドル(約10億円)が年間王者に与えられるボーナスは、ランキングで2位以下の選手にも支払われる。2位のダスティン・ジョンソンには300万ドル、3位パトリック・リードでも200万ドル。参戦3年目で自己最高のランキング13位で終えた松山英樹も28万ドルを獲得した。

 2007年から導入されたこのプレーオフ制度も、節目の10シーズンが終了。4試合のプレーオフシリーズにおける分配ポイントの変更など紆余曲折を経て、ようやく定着した印象がある。以前はそのシーズンの王者といえば賞金王に他ならなかったが、いまは違うのだ。

賞金が一番多いのはマキロイではなく……。

 では今季の米ツアーで、もっとも賞金を稼いだ選手は誰だったか。

 1位は全米オープンなど3勝を挙げたダスティン・ジョンソンで936万5185ドル。2位が同じく3勝、世界ランク1位のジェイソン・デイで804万5112ドル。3位のアダム・スコット(647万3090ドル)を挟んで、マキロイは4番目。579万585ドルは、ジョンソンが稼いだ62%ほどの額だ。ちなみに、松山は419万3954ドルで9位と、ポイントレースよりも優れた順位で終えていた。

欧州ツアーでも、賞金からポイントに中心が変わった。

 マキロイが王者となったフェデックスカップの配分ポイントは、各大会の賞金額とは比例せず、プレーオフシリーズでのポイントが大きいために起こる現象だ。いまだに賛否はあるが、賞金レースとはまた違った価値を付加することで、シーズンを最後まで見どころのあるものにしようという米ツアーの“仕掛け”である。

 米ツアーのポイントによるプレーオフ導入に倣い、欧州ツアーも2009年からレース・トゥ・ドバイというポイントレースが進行中。獲得賞金の1ユーロ=1ポイントで計算され、シーズン終盤の3試合はポイントが1.2倍になるシステム。いまや賞金レーストップという称号以上のタイトルを作るのが世界的な潮流だ。

 ところで日本の男子ツアーにも、制度の見直しや、新しい仕掛けが必要な時期に差し掛かっているのではないかと思う。このままで、いいのかと。

谷原秀人が悩む、賞金王かマスターズ出場か……。

 シーズン終盤戦を迎えるにあたり、谷原秀人が悩んでいた。

 谷原は今季、夏場に2勝をマークして賞金ランキングトップを走っている。開幕から予選を通過した11試合のうち9試合でトップ10入り。ショットに悩んでも得意のショートゲームが安定した成績の下支えになっている。

 シーズンが終盤戦に差し掛かるにつれて、谷原の周囲ではにわかに「賞金王」のフレーズがささやかれるようになってきた。だが本人はそんな周りの期待にも今のところ「そうですね」とクールに受け流すだけ。

 もちろん日本ツアーはここから賞金の高い試合が連なり、まだ意識する時期としては尚早という思惑もあるだろうが、どうもキャリアで初めての称号とはいえ、“マネーキングの価値”にピンと来ていないようでもある。

 いま谷原の頭に賞金王よりも強くあるのは、今年末の「世界ランキング50位以内」というターゲット。来年のメジャー初戦・マスターズの出場権が獲得できるハードルだ。

「いまは賞金王になればマスターズに行けるというものではなくなったから。昔とは違うからね」と谷原が言うように、2014年の賞金王・小田孔明、昨年のキム・キョンテはいずれも年度末の「世界ランキング50位以内」の資格を満たせず、翌年春までにマスターズ委員会から招待状が届かなかった。

 '04年に同様の形で賞金王になった片山晋呉には特別招待の知らせが届いたし、現行の世界ランキングシステム導入前の1998年以前は、日本ツアーの賞金王=マスターズ出場という慣例めいた図式があったのだが……。

10月の世界選手権は賞金王レースに加算されない。

 谷原が目下「迷ってるんですよね。どっちを狙うべきか」というのが、10月末に中国で行われる世界選手権シリーズ(WGC) HSBCチャンピオンズへの出場である。大会前週の月曜日の時点で、日本ツアーの賞金ランク5位までの選手から希望者ふたりに出場権が付与される。WGCの獲得賞金は、以前は日本ツアーの賞金ランキングに加算されていたのだが、2010年から対象外になった。

 優先すべきは、日本の賞金レースか、それともWGCで得られる高い世界ランキングポイントか、と実に悩ましい。

日本人がマスターズで優勝したら春先に賞金王決定!?

 そしてWGC獲得賞金が加算されない一方で、4大メジャーで得た賞金は日本男子ツアーの賞金ランキングに100%反映される。かねて懸念されているのが、日本ツアーの選手がメジャーで大活躍した場合の賞金レースの動向だ。

 マスターズの今年の優勝賞金は180万ドル(約1億8000万円)だった。もしも日本ツアーのメンバーがグリーンジャケットを着ていたら、昨年キム・キョンテが賞金王に輝いた際の額1億6598万1625円を春先にいきなり上回ることになる!

 もちろんマスターズ制覇という偉業は、日本ツアー賞金王の称号よりも大いに讃えられるべきではあるが、後半戦のタイトルを巡る争いは長いシーズンの醍醐味のはずだ(ちなみに、いま日本人でもっともメジャー制覇に近いであろう松山の場合は、優勝しても日本のツアーメンバーではないため賞金王にはならない、というオチがつく)。

「日本人選手が活躍したら、賞金レースがつまらなくなる」なんていう、ネガティブな発想でメジャーを見るのは、ちっとも楽しくない。お隣のアジアンツアーは、メジャーでの獲得賞金はランキングに50%の額を加算することで、バランスを保っているという。

 現行の日本の賞金レースは、精査して考えていくと、どうもそんな“いびつさ”が気になる。選手とファンが、日本ツアーのシーズンと、世界での戦いを前向きにリンクさせる、新しいシステム。世界的に賞金王の価値が揺らぐいまだからこそ、検討する時期としてはふさわしいかもしれない。

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文=桂川洋一

photograph by AFLO