10月7日から開幕する今年の日本GPは、随所に熱い戦いが繰り広げられそうだ。

 まずメルセデスAMGのチームメート同士の王座を賭けた戦いだ。

 メルセデスAMG勢によるタイトル争いは今年で3年連続となるが、過去2年と異なるのは形成が逆転していることだ。昨年までの2年間はルイス・ハミルトンがポイントリーダーとして日本GPを迎えていたが、今年はニコ・ロズベルグが首位で鈴鹿に乗り込んでくる。しかも、ロズベルグは夏休み明けの4戦中3勝を挙げ、8月と9月に未勝利だったハミルトンに比べると明らかに勢いがある。

 そんなロズベルグにとって、唯一気がかりなのは、ポールポジションは獲得しているものの、いまだ鈴鹿では勝利していないということだ。

 だが、ロズベルグは「僕が初めて日本へ行ったのは、カートのワールドカップに出た2000年のこと。カートコース同様、F1が行われる国際コースは世界でも屈指のチャレンジングなレイアウト。だから、鈴鹿ではドライバーもマシンも最高でなければ勝てないけど、僕たちにはそのパッケージがそろっている」と、自信を持って三度目の正直となる鈴鹿に臨む。

パワーユニットに原因不明の不調を抱えるハミルトン。

 一方、追う立場となったハミルトン。

 彼にはロズベルグとの戦いとは別の戦いにも向き合わなければならない。それは前戦マレーシアGPをパワーユニットのトラブルでリタイアしていることだ。

 シーズン序盤にもパワーユニットの問題に悩まされたハミルトンは、8月のベルギーGPにグリッド降格ペナルティと引き換えに、3基のパワーユニットを使用するという戦略を採っていた。ところが、そのうちの1基がマレーシアGPで壊れた。メルセデスはまだ原因を明らかにしていないが、もしパーツに根本的な問題があった場合、ストックしてある残る2基にも同様の問題が起きる可能性がある。

 しかし、ハミルトンの心は折れてはいない。

「可能性がある限り、僕はあらゆる手段で戦い続ける。パワーユニットの信頼性に疑問があって、フリー走行を制限しなければならないのなら、僕は走らなくたっていい。チェッカーフラッグを受けるためなら、なんでもやるよ」

レッドブルとフェラーリの巻き返しに注目!

 このメルセデスAMGに続くであろうレッドブルとフェラーリの戦いも目が離せない。

 前戦マレーシアGPで優勝したのはレッドブルのダニエル・リカルド。レッドブルのマシンは、パワーユニットを除く車体性能ではメルセデスAMGに匹敵すると言われている。マレーシアGPでのハミルトンのトラブルも、レッドブル勢が激しく追っていたことが遠因となっていたかもしれない。

 そのレッドブルには、今年のスペインGPで史上最年少優勝を遂げたF1界のホープ、マックス・フェルスタッペンもいる。鈴鹿はフェルスタッペンにとって、リザーブドライバーとして初のグランプリ走行を果たした地。その思い出の場所で、どんな走りを披露するのか楽しみだ。

 フェラーリには、2人の鈴鹿ウィナーがいる。

 セバスチャン・ベッテルは現役最多賞となる4勝を挙げており、メルセデスAMGがシーズンを席巻したこの2年間も表彰台を獲得、鈴鹿を熟知している。マレーシアGPでの接触事故を問われ、日本GPでは3グリット降格のペナルティを受けるものの、2戦前のシンガポールGPでは最後尾からスタートして5位でフィニッシュ。

「鈴鹿は神が作ったコース」と言うベッテルの神がかった走りにも注目したい。

ソフトタイヤが投入される日本GPはライコネン有利!?

 ベッテルのチームメートであるキミ・ライコネンも「優勝した2005年の日本GPはベストレースのひとつ」と言うほど、鈴鹿には特別の思いがある。

 ライコネンの真骨頂は、タイヤに優しいドライビング。

 今年の日本GPはこれまでのミディアムとハード以外にソフトも投入されるだけに、タイヤに厳しい条件になった場合はダークホース的な存在になるだろう。

 そして、我らがホンダである。

 鈴鹿は、日本で初めて造られた本格的なロードサーキットである。提案したのは、当時社長だった本田宗一郎の「クルマはレースをやらなくては良くならない」という思いだった。それ以来、鈴鹿はホンダだけでなく、日本のモータースポーツ界の聖地となった。'87年にF1を鈴鹿に誘致したのもホンダである。したがって、ホンダにとって、鈴鹿で開催される日本GPは21戦分の1グランプリ以上に重みのある戦いである。

アロンソ、バトン、ホンダにとっての聖地。

 鈴鹿が特別なのは、ホンダのパワーユニットを奏でる2人のドライバーも十分認識している。

「鈴鹿はドライバーにとって特別な場所だが、ホンダのパワーユニットで走る僕とジェンソンにとっては、さらに特別なサーキットだ。愛する日本のファン、一緒に仕事をしているホンダのスタッフのためにも、全力で臨みたい」とフェルナンド・アロンソが熱く意気込みを語れば、チームメートのジェンソン・バトンも次のように抱負を述べる。

「今年は東京やさくら(栃木にあるホンダの研究所)へ行って、ホンダのスタッフやファンと会ってから鈴鹿へ向かう。期待しているみんなのために、昨年よりも良い成績をプレゼントしたい」

 もちろん、ホンダのF1プロジェクトを指揮する長谷川祐介総責任者の思いは、さらに強い。

「鈴鹿はホンダにとってだけなく、個人的に私にとっても非常に特別な場所。鈴鹿には素晴らしい思い出がたくさんあり、モータースポーツを理解し、熱心に応援してくれる多くのファンがいる。そんな皆さんにトップ3チームに続く戦いを披露したい」

 鈴鹿の名に恥じない誇りを感じるレースを期待したい。

文=尾張正博

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