太田宏介と小林悠。

 ハリルジャパンに名を連ねている2人は、麻布大学附属渕野辺高(現麻布大学附属高)サッカー部の同級生である。親友かつライバル。29歳になった今も、お互いに刺激しあう間柄だ。

 2人はアギーレジャパンで顔を合わせていたが、ハリルジャパンでは同時に招集されてこなかった。9月のUAE戦、タイ戦のメンバーにそろって選出され、代表の舞台で久々に再会を果たしている。だが太田に出場機会は与えられず、小林もタイ戦で残り5分に出場したのみと、「共演」を果たすことはなかった。精度の高いクロスと万能のアタック。2人の「あうんの呼吸」は、ハリルジャパンの新オプションとなる可能性を秘めている。

「(イラクはクロスに対して)ボールウォッチャーになる感じがある。オーストラリアにサイドを崩されて、ファーにマークがついていなかった場面があったし、個の打開とサポートが大切になってくる。タイとの試合で(酒井)宏樹が(原口)元気にアシストしたような形をチームとしてもっと出していければいいんじゃないかなとは思います。セットプレーも武器になる。ニアに人数がいても、決められているので」

 代表合流前にオーストラリアとイラクの一戦を映像で予習してきたという太田は、クロスやセットプレーがチャンスになる感触を得た。左足のキックに自信を持つ者として、試合を具体的にイメージしながらトレーニングに臨んでいた。

「あうんの呼吸というものは絶対にある」

 タイ戦は、右サイドを上がってきた酒井宏からのクロスに対し、逆サイドの原口がヘディングで合わせて先制ゴールが生まれている。

 太田が胸に刻みこんでいるのがこのシーンだ。

 逆サイドでクロスボールを待っているのは、小林かもしれない。そう尋ねると、彼は言葉に力をこめた。

「プロになってから同じチームになったことはないけど、そこは小学生のときから知っている仲ですからね。あうんの呼吸というものは絶対にあると思うし、(お互いに)自信もあります」

2年前、代表でもすぐに開通したホットライン。

 2人がそろって代表の舞台に立ったのが、ちょうど2年前の親善試合ジャマイカ戦だった。小林が交代出場して代表デビューを果たし、残り時間わずかのところで太田もピッチに入った。

 そしてすぐにホットラインは開通した。太田の左クロスに合わせたのは、ゴール前で待っていた小林。ヘディングシュートは外れたものの、息の合った2人だからこそのシーンであった。当時を思い起こして、太田は言った。

「僕が入ってファーストプレー。あれは決めろよと思いました(笑)。ボール1個分、もうちょいゴール寄りだったらピンポイントだったかなと思います」

 次のブラジル戦では2人とも先発で起用され、最初のチャンスも「ホットライン」がつくっている。左サイドを駆け上がった太田がニアに鋭いクロスを送り、相手のクリアに反応した逆サイドの小林がボレーシュートを放った。

 2人そろっての出場はこの2試合のみ。2015年1月のアジアカップでは2人ともメンバーに招集されながら出場ゼロに終わった。「しっかり準備しておこう」、「辛抱して待つことも大事」と2人はお互いに声を掛け合って、モチベーションを高めていた。

「ブラジル戦以来、2人で一緒には代表戦のピッチに立ってないわけですからね。もちろんまずは自分がピッチに立たなきゃいけないけど、2人で一緒にという思いも強い。同じ町田出身で、同じ年で、ずっといい意味でライバル関係でやってきて、今一緒にこの場に2人でいるというのは幸せだと思いますから」

代表のユニフォームを一緒に着よう、という約束。

 日本代表のユニフォームを一緒に着よう――。

 小林が結婚式を挙げた際、出席した太田は親友からメッセージカードを受け取っている。心に響くものがあった。

 2010年1月のイエメン戦で先に代表デビューを果たしているとはいえ、以降は代表から遠ざかっていた。その約束を実践に移すべく、2014年4月に小林は代表候補合宿に呼ばれた。太田は「嬉しかった」と同時に、嫉妬心も膨らんだ。

 あのとき彼はこう言っていた。

「悠が点を取ったら僕は嬉しいし、Jリーグのなかでも一番応援したい選手。その悠が候補合宿に呼ばれて僕も嬉しかったんですけど、『じゃあ自分は何してんだよ』って。悠が入って、自分が入っていないという立ち位置はやっぱり悔しかった。ポジションは違うし、(高校を卒業してからの)経緯も違う。でも一番、身近な存在であり、一番のライバルなんです」

“友情コンビネーション”炸裂はきっと間もなくだ。

 小林の代表候補合宿に奮起した結果、2人とも同じタイミングでハビエル・アギーレから声が掛かったのだった。

 刺激の対象。それはずっとずっと変わらない。

 太田は昨年12月、フィテッセと契約して「海外組」となってからも小林のことをチェックしてきた。

「活躍は刺激になりますよ。でも嫉妬もあります」

 今季、首位を争う川崎フロンターレの原動力となっており、日本人トップタイの15得点を叩き出していることを嬉しく思うだけではない。一方でまた小林が太田に対しても同じ感情を持っていることは想像に難くない。

「日本代表のユニフォームを一緒に着よう」から「日本代表で一緒に活躍しよう」へ。

 太田がクロスを上げ、小林が仕留める。

 “友情コンビネーション”が炸裂する日は、きっともう間もなくだ。

文=二宮寿朗

photograph by JFA