クライマックスシリーズ(CS)開幕を5日後に控えた10月3日、巨人はルイス・クルーズ内野手の選手登録を抹消した。

 規定では10日間は再登録できないことから、これで8日に開幕するCSファーストステージの出場は不可能となり、ファイナルステージも初戦からの出場はなくなった。

「何と言ったらいいのか……チーム事情としか言えない」

 3日の練習後に報道陣の囲み取材に応じた高橋由伸監督は、こう言って詳細については語らなかったが、関係者の話を総合すると抹消の理由は“懲罰”だった。

 クルーズは今季、最終的には81試合の出場で打率2割5分2厘、11本塁打、37打点という成績だったが、4月28日の阪神戦で左足首に自打球を当て、約2週間に渡って戦線離脱。復帰後の6月にも再び下半身のコンディション不良でリタイアするなどケガに泣かされたシーズンだった。

 その一方で、精神的なムラも激しく、全力プレーを怠るなどして何度もコーチから注意を受ける場面があった。4月の自打球も故障予防のために義務付けられているレガースの着用を忘れるという不注意が原因だった。

 9月10日には夫人の出産に立ち会うために、球団の許可を得て一時帰国。再来日後の同20日に復帰してシーズン終了までプレーした。しかし、1日の阪神との最終戦で一塁への全力疾走を求めるチーム方針に反する挑発的な行為をとったため、これを重視した高橋監督が抹消を決めたという。

戦力的に痛手であることは否めないが……。

 単純に考えれば、クルーズ不在はCSを戦う上では痛手であることは否めない。

 規律違反があるなら、罰金を科すなりして先発を外して代打で使うという方法もあったはずだ。ただでさえ今年の巨人は右の代打不足がチームのウィークポイントで、相手にしてみればクルーズがベンチにいて、得点圏に走者を置いて出てくるなら、それはそれで嫌だったはずだ。

 もちろん高橋監督もそうした戦力面でのマイナスは十二分に考慮した上で、それでも、これ以上、クルーズの和を乱す態度を許すことはむしろチーム全体に悪影響を及ぼすと判断。戦力減は覚悟の上で、登録抹消という結論に至ったようである。

「外国人選手で凌ぐ」が崩壊した今年の巨人。

 そしてこのCS直前のクルーズの抹消劇は、今季の巨人の基本構想の崩壊を決定づけるものでもあった。

「とにかく今年は外国人選手で何とか凌いで欲しい」――こう話していたのは開幕前の堤辰佳GMだった。

 昨オフの原辰徳前監督の退任と、高橋新監督の急転直下の監督交代劇。加えて10月に発覚した野球賭博問題で、ドラフトを含め補強計画は大きな修正を余儀なくされている。

 そこで堤GMが求めたのが、外国人選手による穴埋めだった。

 新たにギャレット・ジョーンズ外野手を4番候補として、また日本球界にも慣れ勝負強い打撃と抜群の守備力を誇るクルーズを二塁のレギュラー候補として獲得。加えて投手陣では5年目のスコット・マシソン投手に2年目のマイルズ・マイコラス、アーロン・ポレダ両投手の3人を軸にスタートした。

 しかし2月のキャンプでマイコラスの右肩故障が発覚し、チーム合流は6月末までずれこんだ。一方、開幕時にローテーションの一角を期待されたポレダも、相手チームの執拗な揺さぶりに制球力を乱し、挙句の果てに左腕の故障で4月29日のヤクルト戦を最後に、一軍マウンドに戻ってくることはなかった。

今季巨人が契約した外国人選手はなんと13人。

 打撃陣も前述したようにクルーズが4月末に戦線離脱し、ギャレットも打撃不振から5月末に登録抹消されてファームで調整を余儀なくされるなど、苦しい状況が続いた。

 こうした事態に備えて球団が“保険”として獲得した選手がことごとく機能しなかったのも、誤算だった。

 今季、巨人が契約した外国人選手は全部で13人。その中で一軍登録されたのは前述の5人の他には打者ではレスリー・アンダーソン外野手とホセ・ガルシア外野手、アブナー・アブレイユ外野手の3人、投手ではエクトル・メンドーサ投手の1人だけだった。しかもいずれも数字的には助っ人としては物足りないものばかりである。

 特にキューバ・リーグの打点王の触れ込みで4月に獲ったガルシアは、一軍7打席でヒットは0本、3三振という成績で、わずか4日間で二軍にUターン。その後は日本の生活に馴染めず8月18日付けで契約を解除すると、キューバへの帰国途中で失踪するというオマケまでついてしまった。

ボタンの掛け違いはグリエルから始まった。

 もちろんシーズンを通してセットアッパーとしてリリーフ陣を支えたマシソンや復帰後は先発陣の柱として4勝2敗、防御率2.24の成績を残したマイコラス。また二軍再調整後は日本の野球に徐々に順応してチーム2位の24本塁打を放ったギャレットはギリギリ合格点を与えられる成績だった。しかし彼らの力でチームの足りない部分を補うほどの結果を残せなかった。

「外国人で凌ぐ」という堤GMの構想は外れ、最後に待っていたのがクルーズの抹消劇だったわけである。

 思えば巨人の外国人補強は、2年前のオフにキューバ代表のユリエスキ・グリエル内野手の獲得を狙ったところから、ボタンの掛け違いは始まっていたのかもしれない。

 DeNAでわがままの目立ったグリエルのお目付役としてフレデリク・セペダ外野手との契約を更新し、ホセ・ロペス内野手を手放した。結果的にはDeNAとのグリエル争奪戦に敗れたことは痛手にはならなかったが、ロペスは新天地としてそのDeNAに移籍。今季は打率2割6分3厘ながら34本塁打、95打点と来日4年目にしてキャリアハイの成績を残し、チームのCS初進出の原動力の1人となった。

 そして巨人は8日からのCSファーストステージで、そのDeNAと対戦するのだ。

 DeNAの主砲・筒香嘉智外野手をどう抑え込むかが勝負のポイントだが、同時に対巨人戦打率3割3分、8本塁打、17打点とシーズン中に痛い目にあったロペス封じも同じくらいの焦点になる。

 巨人の生命線は……外国人選手が握っている。そのことは間違いではなかったようだ。

文=鷲田康

photograph by Hideki Sugiyama