あえて「謝罪」は口にしなかった。

 9月30日、本拠地最終戦後のセレモニーでマイクの前に立った工藤公康監督は、スタンドを見渡しながら次のように述べた。

「シーズンの結果は2位という成績に終わりましたが、我々の戦いは、これからです。ファーストステージ、ファイナルステージを勝って、最終的な目標は日本一V3です。この偉業ともいえる3連覇を成すべく、キャンプからみんな血のにじむような努力をし、懸命に頑張り、熱く戦ってきました。この目標をぜひ、ファンの皆さんの前で達成すべく、これから一生懸命頑張っていきたいと思います」

 スタンドからは「そうだ」や「まだ終わってないぞ」の声が飛ぶ一方で、筆者の傍にいた地元福岡の放送メディア関係者は「なんだよ。『優勝できずにスミマセンでした』じゃないのか」と毒づいた。野球メディアの世界はどういうわけか、新聞番記者よりもテレビ局のディレクターの方が担当球団への愛情が深い(特に上位常連チームにその傾向が見られる)。だから文句の一つも言いたくなるのは分からなくもない。

 なにせ最大11.5差をひっくり返されたのだ。球史に残るV逸である。

「修正できなかった」と工藤監督は悔いを見せた。

 ただ、ファンには「悔い」を見せなかった工藤監督だが、その後ベンチ裏で行われた囲み取材での姿は違った。厳しい表情を浮かべ、大きな目をきょろきょろと動かしながら率直な思いを吐きだした。

「僕自身が修正できなかった」

「迷った部分があった」

「反省している」

「悔やまれる」

 だからこそグラウンドで見せた、ただひたすら「前だけ」を向いた言葉に強い決意と心意気を感じ取ることが出来たのだ。反省は大事だ。だけど過去を悔いたり振り返ったりするのはまだ早い。

 リーグ3連覇は逃したが、3年連続日本一の夢はまだ道半ばだ。

今季、札幌ドームでは5勝3敗1分けの勝ち越し。

 最後の最後でファイターズとのデッドヒートに敗れたホークスだが、案外、クライマックスシリーズ(以下CS)では勝機があるのではないかと見ている。

 今季の対戦成績は9勝15敗1分と負け越した。だが、CSファイナルの舞台となる札幌ドームに限れば5勝3敗1分と勝ち越しているのだ。

「札幌ドームのマウンドの方が投げやすい」

 何人かの投手はそのように口にする。先発ローテの千賀滉大もその一人で、「札幌ドームのマウンドの硬さ」を理由に挙げた。札幌ドームのマウンドは12球団本拠地の中でも特に硬いといわれる。WBCなど国際大会の導入によって、メジャー流の「硬いマウンド」が日本の球場でも主流になってきたが、札幌ドームはその先駆者的存在なのだ。

 ヤフオクドームも年々改良を施して硬めに仕上がっているが、今季は足を滑らせる投手が散見された。千賀は今季3敗すべてがヤフオクドームで、うち2敗がファイターズ戦だった。しかし、札幌ドームでは2試合に登板して1勝0敗、防御率2.57の成績を残している。

エース格の武田、そして戦列復帰のバンデンハーク。

 若きエース格の武田翔太は今季札幌ドームでの登板はなかったがプロ通算では5戦4勝、防御率1.69の好相性だ。一方、ヤフオクドームでのシーズン防御率4.04と本拠地にもかかわらず苦しんだ。

 その他の主な先発投手も以下の通りだ。

      シーズン   ヤフオクドーム
和田毅   3.04      3.36
中田賢一  3.01      3.38
東浜巨   3.00      3.69

 そして、興味深いのはバンデンハークがシーズン終盤に戦列復帰したことだ。今季ファイターズ戦は1勝1敗、防御率5.21と決して相性は良くないが、札幌ドームのマウンドはいかにも外国人投手向き。一軍昇格後は3試合に登板して「徐々に調子は上向いている」というだけに、CS突破のキーマンに挙げたい。

フェニックス・リーグで復帰の柳田は走攻守とも万全。

 また、帰ってくるといえば、柳田悠岐の復帰はこの上なく大きい。9月1日のライオンズ戦の守備で右手薬指を骨折。全治6週間の診断を受けていた。

「Sports Graphic Number 912号」にて『CS、間に合いたいっす』なる拙稿を書かせていただいたが、その言葉通りに10月3日のみやざきフェニックス・リーグで実戦復帰して最初の打席で安打を放って盗塁まで決める元気っぷりをアピールすると、翌日には「1番センター」で出場して“レーザービーム”で本塁アウトも披露。打っても5打数2安打、走って1盗塁と、準備を整えて6日から一軍に合流した。

 さらにシーズン終盤は右肘痛で欠場が続いた今宮健太も5日のシート打撃で守備に就き、打撃ではヒットも放った。爆弾を抱えてのプレーにはなるが、本人はスタメン出場への意欲を燃やしている。

1stステージは6年連続で3位チームが勝利中だが……。

 しかし、いくらホークスが札幌に乗り込んだ場合の話をしたところで、8日に開幕するファーストステージで敗退すれば何の意味もない。

 相手はパ・リーグ3位のマリーンズ。正直、不気味だ。

 '04年にプレーオフの名で現在のポストシーズン制度が導入されて以降、マリーンズは5度ファーストステージを戦い100%の突破率を誇っている。また、'10年から昨年までの6シーズン、ファーストステージを突破したのはいずれもシーズン3位のチームだ。'14年に最後の最後までリーグ優勝を争ったバファローズもファイターズに足元をすくわれている。

 今季レギュラーシーズンで2位ホークスと3位マリーンズの差は12.5も離れていた。それを「下剋上」されてはたまったものではないが、何が起きるかわからないのが短期決戦。特に2戦先勝のファーストステージでは第1戦の重要性が増す。

 先発予想はホークス千賀に対して、マリーンズは涌井秀章だ。好投手同士の投げ合いとなるが、先述した通り千賀がヤフオクドームでどのようなピッチングが出来るかがカギとなる。一方で涌井は今季のホークス戦2勝2敗。ヤフオクドームでは1勝0敗だが、防御率5.49とあまりよくない。短期決戦はロースコアの接戦になることが多いが、ノーガードで打ち合う派手な試合になるかもしれない。

文=田尻耕太郎

photograph by Hideki Sugiyama