10年ぶりの世界は、日本サッカー界にとって至上命題となる。

 10月13日に開幕するAFC U-19選手権。この大会でベスト4以上に入ると来年の韓国で開催されるU-20W杯の出場権を獲得することが出来る(※U-20W杯開催国である韓国がベスト4以上に残った場合、5位決定プレーオフで第5代表がU-20W杯出場)。

 U-20W杯はU-17W杯と同様、世界中のトップレベルの選手達が集結し、しのぎを削る世代最高峰の戦いだ。過去のU-20W杯のMVP選手を並べても、リオネル・メッシ('05年オランダ大会)、セルヒオ・アグエロ('07年カナダ大会)、ポール・ポグバ('13年トルコ大会)と、錚々たる顔ぶれだ。

 将来のスターの登竜門であるU-17W杯とU-20W杯。先月、U-16日本代表がAFC U-16選手権でベスト4に入り、来年のインドU-17W杯の出場権を掴んだ。一方でU-19日本代表はこれまで4大会連続で準々決勝で敗れ、世界へのキップを逃している。2007年のカナダ大会以来となるU-20W杯へ。U-16に続くべく、そして世界との真剣勝負が出来なかった“空白の10年”を埋めるべく、内山篤監督率いるU-19日本代表が決戦に挑まんとしている。

プロになることで実戦経験不足、試合勘の鈍化が。

 内山監督がこの代表を率いるにあたって、立ち上げ時からチーム作りの根幹として持ち続けている選手選考の基準がある。

「ゲームコンディションが重要になってくる年代。ここは我々もかなり注意を払っている」

 U-19年代において、一番の懸念材料となるのが、“実戦経験不足による試合勘の鈍化”だ。この年代はプロ1年目となる選手が多く、これまでの高校やユースチームでの立ち位置と違い、序列が一気に一番下となることで、実戦から遠ざかってしまうという現象が起こる。

 これにより、選手にとって一番重要な90分のゲーム体力と試合勘が鈍る。いざU-19代表としてスタメンから試合に出場すると、ゲームコンディションが上がらず、思うようなプレーが出来ないまま終わってしまうパターンにはまって行く。

柿谷、宇佐美、南野……涙を飲んだ準々決勝。

 過去のU-19の戦いを見ても、ピッチに立つ11人のゲームコンディションにばらつきが生じ、チームとしての一体感や組織的な連動の妨げとなり、相手の勢いに飲まれてしまう。それが同大会準々決勝で4連敗中という結果に直結していると言っても過言では無い。

 2008年のAFC U-19選手権(サウジアラビア)ではC大阪でレギュラーだった香川真司と、出場機会を得ていた柿谷曜一朗が軸となっていたが、柿谷が初戦で負傷し、その後の試合に出られなくなった。そして香川はJ2を戦うチーム事情で、グループリーグ3戦を戦った後、準々決勝を前にチームを離脱し帰国してしまった。

 さらにこの年代の中心選手になるはずだった金崎夢生も、ナビスコカップ(現・ルヴァン杯)の日程と重なったため、この大会の出場を辞退した。Jリーグでレギュラークラスの選手が抜けたチームは、準々決勝で“黄金世代”と呼ばれたU-19韓国代表に0−3の完敗を喫した。

 '10年の中国大会(AFC U-19選手権、U-20W杯は2年に一度の開催)も、宇佐美貴史、酒井高徳らを擁しながらも、準々決勝でまたしても韓国に2−3で敗れた。'12年のUAE大会と'14年のミャンマー大会は特にコンディション格差が顕著で、'12年は久保裕也、'14年は南野拓実という絶対的エースを擁しながらも、コンディションが上がらないままの選手との連携が悪く、孤軍奮闘に陥って準々決勝の壁を破れなかった。

内山監督は「90分戦える選手」を重視して選んだ。

 内山監督は前回のAFC U-19選手権をコーチとして戦い、この現状を目の当たりにしている。

「中2日で(1試合で)3人しか選手を代えられない中での連戦となるので、前提としては90分戦えるという選手を連れて行かないといけない。90分ゲームが出来ていない状態で大会に臨んで、3人しか交代出来なければ厳しい状態になるのは、前回大会を見ても明らかだった」

 エース南野を支えたのは、当時高3の井手口陽介と奥川雅也だった。彼らはそれぞれG大阪ユースと京都サンガU-18で中心としてプレーしており、90分のゲーム体力、試合勘は十分だった。一方で関根貴大は、当時1年目からトップチームのゲームで出番を得ていたが、途中出場が多く、スタメンから中心としてプレーするコンディションではなかった。

 前述したようにこうしたばらつきが、チームとしての戦いに大きく影を落としてしまう。それがU-19年代の恐ろしさでもある。

今回のU-19世代はJ1でスタメンを張った選手もいる。

「45分だけの選手が10人いたら、3人の交代枠では絶対にやられてしまうので、90分やれる選手を選んだ」(内山監督)

 今回のメンバーは柏レイソルでレギュラーを張るCB中山雄太、アビスパ福岡で定位置を掴んだCB冨安健洋、湘南ベルマーレで存在感を放つMF神谷優太、前々回のU-17W杯を経験し、川崎フロンターレで頭角を現して来たMF三好康児、J1でスタメン入りするなど着実に経験を積んでいる遠藤渓太(横浜F・マリノス)といったJ1でスタメンを張れる選手を選出。さらに今年からスタートしたJクラブのU-23チームのJ3参戦により、実戦経験を積めているG大阪のDF初瀬亮、MF堂安律、市丸瑞希。C大阪のFW岸本武流を選出した。

 そして、前回の井手口、奥川のように、所属チームの中心として活躍するGK廣末陸(青森山田高、FC東京入団内定)、DF舩木翔(C大阪U-18)、MF原輝綺(市立船橋高、アルビレックス新潟入団内定)、FW岩崎悠人(京都橘高、京都サンガ入団内定)の高3の選手に加え、GK若原智哉(京都U-18)、FW中村駿太(柏U-18)の高2の選手も選出した。

異例の国内合宿で得点源の小川らの実戦感覚を磨いた。

 さらに内山監督は9月25日から26日の1泊2日の異例の国内合宿を敢行し、日体大と90分ゲームを行った。

「日体大戦で90分を久しぶりにやった選手が何人かいて、試合をこなして行くことによって少しでも向こう(バーレーン)に入るまでの不安を取り除いた。思った以上にコンディションが上がらない選手がいたので、それを何とか上げながらやっていきたい」と語ったように、FW小川航基(ジュビロ磐田)、DF町田浩樹(鹿島アントラーズ)など、ベンチ入りは出来ているが、実戦に多く出られていない選手に、90分ゲームを経験させて本番に臨ませる狙いがあった。

 過去の反省を深め、真っ向から“U-19問題”に向き合い、内山監督は10年ぶりの世界に向けて準備を着々と進める。

「これからUAEで暑熱対策や時差対策をしっかりとやりたい」

中東包囲網と鬼門も準々決勝を突破できるか。

 バーレーンに入る前に同じ中東のUAEに入って、身体を慣らしてから決戦の地に臨む。本番モードと化して行くU-19日本代表には、厳しい戦いが待っている。日本が入ったグループCはイエメン、イラン、カタールと、まさに“中東包囲網”が敷かれる組み合わせとなった。

 まずはこれを打ち破って準々決勝へ進まないといけない。そして、準々決勝の相手はウズベキスタン、オーストラリア、中国、タジキスタンのグループD。ウズベキスタンかオーストラリアが予想されるだけに、茨の道となる。

 だからこそ、この道を歩き抜くことは、世界へのキップだけでなく、大きな経験値を得ることにも繋がる。

「ミーティングでも、“もう内容ではなく、結果がすべての段階に来ている”と話をしました。世界に出たいと言う気持ちが重要。東京五輪、W杯に向けての決意のある23人を選んだ。最後はみんなを信じたい」(内山監督)

 決戦の幕は10月14日のイエメン戦から切って落とされる。

文=安藤隆人

photograph by Yuki Matsuo