ゴールを決める。結果にこだわる。原口元気はそう言い続けてきた。それでもやはり、最も大切なのはチームが勝つことだ。

 オーストラリアとのアウェーゲームを終えたあと、手ごたえも課題も口にしたが、最も悔しそうに話したのは後半40分のシーンを振り返るときだった。

「悔やまれるのは(浅野)拓磨に出したボールだよね。DFとキーパーの『間』でしょう? (ボールは)もっと弱くてよかった。ああいうところでのクオリティが自分はまだ、もうひとつ足りない。デブライネだったらああいう場面で100%、ピンポイントで合わせているはずだから」

 後半40分、1−1の状況で原口は左サイドをえぐってクロスを送ったが、浅野の伸ばした足はわずかにボールに届かなかった。そのシーンを振り返るときに原口が比較対象に選んだのは、ブンデスリーガ史上最高額となる7400万ユーロの移籍金で、昨シーズンにヴォルフスブルクからマンチェスター・シティへと移籍した天才MFのプレー。もっとも、彼とは同い年で、誕生日も約1カ月半しか違わない。

 活躍してもなお、改善できるところを探る。それが原口の成長を支えている。

自分のパスカットから反転して、自ら決める。

 オーストラリア戦に左FWとして3試合連続先発を果たした原口は、3試合連続のゴールを決めた。その全てが貴重な先制ゴールである。

 そして、10月のイラク戦でも今回のオーストラリア戦でも、原口のゴールはいずれも彼自身のパスカットから生まれている。

 激しい守備から、スピードに乗った攻撃へ。

 3年目を迎えるヘルタ・ベルリンで常に意識してきたプレーが、ここにきて代表の舞台でも実を結び始めている。

 オーストラリア戦のゴールは、パスをカットして長谷部誠へ渡したボールが本田圭佑に入ったあと、本田と事前に相談していた通り「ワンテンポ遅らせて出て行く」タイミングで飛び出し、決めたものだ。

わざと倒れた相手FWにも、「あれは僕のミスです」。

 もっとも、後半6分には失点にも絡んでしまった。

 相手の右サイドからクロスが入ると、慌ててペナルティエリアまで戻ってきた原口がユリッチに身体をぶつけた。そこでユリッチが倒れたことで、主審はファールと、PKを宣告した。

「相手に前に入られて、危ないと思いながら下がっていたので、強く当たってはいないんです。あんなに身体の強い選手があれくらいで倒れるわけはないので、完全に(ファールを)もらいに行っていた。ただ、そこが上手さだろうし、あれは僕のミスです」

 もちろん、ミスについては反省する。ただ、それだけでは終わらない。あのシーンを自分にあてはめて考えてみる。自分がボールを持って、相手陣内のペナルティエリアに入ったときにはどうなるか――。

つっかけてファールをもらうのは「僕の役割」。

「自分にも、ああいうずるがしこさも大事になってくると思います」

 わざと倒れるシミュレーションは、もちろん論外だ。ただ、ハリルホジッチ監督がチームにつけてきた注文のなかに、相手ゴールに近い位置でファールを誘うプレーが少ないというものがある。

 長谷部が「この最終予選4失点はすべてPKやFKなど、セットプレーからのもの」と語ったように、ゴールに近い位置でファールをもらうことは得点に直結する。

 そして原口自身も、ボールを持って相手陣内に入っていく必要性を以前から説いていた。例えば、UAE戦の翌日にはこう話していた。

「ゴール前につっかけていったときにファールをもらえる可能性もあるし、自分も他の選手と違うものは出せるかな。上手い選手ばかりではなくて、強引にいける選手も(監督からすれば)欲しい部分だと思うので。僕がそういう役割をできたら、武器になると思います」

 確かに、今回は小さくない「代償」を払った。ただ、予選はまだ終わっていない。むしろ、今回のミスを今度は自分たちが勝つために参考にしていければ、「代償」は「教訓」に変わる。

アジアならシンプルにスピードだけで行ける。

 攻撃面では、原口はチーム最多となる2本のシュートを放ち、本田の決定的なシーンにつながるクロスを送り込んだ。

「個人的に今日はやりやすかったです。相手のサイドバックはそこまでスピードはなかったし、センターバックもカバーに出てこなかった。だから、相手のサイドバックに『上がってこい、上がってこい』と思っていて。『ボールをとったら、お前の裏に絶対に行ってやる』って。前半の(本田)圭佑くんのシュートも、サイドバックの裏に走って、そこから生まれたわけだし。

 この2試合、ドリブルに関しては良かったと思います。ただ、アジアだからシンプルに、スピードだけで行けたわけで。ブンデスリーガだと、ここからさらに駆け引きが必要だから、まだまだ……」

監督に伝えられた「まだ満足していない」を糧に。

 最終予選が始まる前の最後の試合、6月のボスニア・ヘルツェゴビナとの試合のあと、チームで最初にロッカールームを後にした原口は、ホテルに戻ってから監督のもとを訪ねている。試合に出られなかったのは何が足りなかったからなのか。本来のサイドのポジションではなく、当時はセンターの引き気味のポジションで使われていたのは何故なのか――。

 監督の答えはシンプルだった。

「まだオマエには満足していない」

 原口は心に誓った。

「満足するくらいに成長して、監督の考えるメンバーの中心に入っていけるようにするしかない」

 だからこそ、3試合連続でゴールを決めたことは、自身の成長を結果で証明したという意味で、大きな成果を残したとも言えるはずだ。

本田や香川に「追いつく」という挑戦者の視点。

 しかし、原口はそうは考えない。

「もっと、だよ! こんなもんじゃないでしょう、目指しているところは? これを何年も継続して、ようやく『本田圭佑』とか『香川真司』になれるわけで。彼らに追いつくのは、簡単なことじゃないから。3試合連続でパンパンパンと決まったけど、彼らはそれを何年もやってきた。だから……僕はやっと最初のステップを踏んだくらいですかね」

 理想はもっと先にある。

 10月の最終予選における原口にとっての収穫は、ゴールを決めたことでも、代表を引っ張るのだという気持ちでプレーする大切さでも、ないのかもしれない。

 もっと上を目指さなければ。そう思えたことが彼にとっての最大の収穫ではないだろうか。

文=ミムラユウスケ

photograph by Takuya Sugiyama