混戦の第21回秋華賞(10月16日、京都芝内回り2000m、3歳牝馬GI)を制したのは、4年前の牝馬三冠すべてで2着になったヴィルシーナの全妹ヴィブロス(父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)だった。勝ちタイムは1分58秒6。

 前半1000mが59秒9、後半1000mが58秒7。速すぎず、遅すぎずの平均ペースではあったが、レースの上がり3ハロンが34秒4だから、最後の瞬発力がモノを言う展開になった。

 そんな流れのなか、好スタートを切ったヴィブロスは、1コーナーまでは行きたがって口を割るシーンもあった。向正面に入っても完璧に折り合っていたわけではなかったが、掛かっていたというより、鞍上の福永祐一が引っ張り切れないほどの抜群の手応えと言うべき行きっぷりだった。

 そして、直線、外から素晴らしい末脚で伸び、差し切り勝ちをおさめた。

 大きな不利を受けながら2着まで追い上げた前走・紫苑ステークスで見せた勝負根性は本物だった。

ジュエラーは4コーナーのもたつきが敗因か。

 単勝6.3倍の3番人気に支持されていたことが示すように、サプライズではなかった。特に勝因がどうのというレースではなく、強い馬が力を出し切った、ということに尽きるだろう。

 2着に来た4番人気のパールコードは、強敵と差のない競馬をしていた春の状態に戻っていたようだ。

 8番人気のカイザーバルは、向正面で掛かりながらも、最後までヘコたれることなく3着と健闘した。ローズステークスでシンハライトからコンマ1秒差の3着だから力はあるわけだし、14日に死亡した伯母の名牝ダンスパートナーが天国から後押ししてくれたのかもしれない。競馬では、身近な馬や関係者が亡くなったとき、それを弔うように馬が頑張ることがしばしばある。

 4着は、2番人気に支持された桜花賞馬ジュエラー。ミルコ・デムーロがコメントしたように、4コーナーで馬群をさばけなかったぶんの負けだろう。結果は出せなかったが、強さを見せることはできた。

 5着は5番人気のレッドアヴァンセで、手応えほど伸びなかったのは、距離に限界があるからかもしれない。

「牝馬は難しい」としか言いようがないビッシュの大敗。

 掲示板に載った5頭のうち、4頭が5番人気以内の馬だ。

 順当と言えそうな決着ではあったが、上位人気馬では、1番人気のビッシュだけが10着に沈んでしまった。

 ビッシュは、他馬と横並びのスタートを切り、ゲートを出たなりの競馬をしているうちに自然と位置取りが後ろになった。鞍上の戸崎圭太が、馬のリズムを最優先にした結果のことだ。道中早めに動いても最後まで伸び切る力があることは前走で確認済みだったし、少し前にジュエラーなどほかの有力馬もおり、けっして後ろすぎたわけではなかった。

 向正面で早めにじわっと進出し、3、4コーナーを回りながら前を射程にとらえようとしたが、そこまでだった。

 せめてそこから差を詰めていれば納得できたのだが、ヴィブロスからコンマ8秒、4馬身ほども離されたままゴールしたのだから、戸崎同様、首を傾げざるを得ない。

 騎乗ミスではなかったし、パドックでも落ちついており、状態はよく見えた。

 馬体重は、前走から2キロ減った418キロ。美浦から京都までの輸送があったことを考えると、「2キロしか減らなかった」と言うべきだろう。

 初めての長距離輸送をしての競馬が、目に見えないところで負担になっていたのか。それとも、第7レースの1000万円下の条件戦でも1600m1分32秒2で決着するほどの高速馬場に対応できなかったのか。あるいは、休み明けの前走を快勝したあと緊張の糸が切れ、いわゆる「二走ボケ」をやってしまったのか。

 牝馬は難しい、のひと言で片づけてしまうと、馬券を買うファンは金がいくらあっても足りなくなるのだが、あえて言いたい。牝馬は難しい。

歴代優勝馬の中で最も軽い414キロの女王誕生。

 もともと18頭の出走馬のうち12頭が関西馬だったのだが、1着から9着までを関西馬が占めた。また、上位3頭はどれもGI初出走の馬だった。

 このレースのプレビューで、筆者はビッシュを本命とし、「小さな女王の誕生」と書いたが、勝ったヴィブロスはさらに軽い414キロだった。歴代の秋華賞優勝馬のなかで最軽量だ。

同世代の強豪が復帰しての女王対決が楽しみ。

 ヴィブロスのオーナーは、姉のヴィルシーナと同じく、元プロ野球投手の「大魔神」こと佐々木主浩氏。JRAで出走させた所有馬は20頭に満たない少数精鋭で、ヴィルシーナに次ぐ2頭目のGI馬となった。同オーナーは、ヴィブロスの半兄ファルスター、ランギロア、そして今年の阪神大賞典を勝ったシュヴァルグランも所有している。

 福永は、ヴィルシーナはスピードの持続力のある馬だったが、ヴィブロスはいい瞬発力を持っている、と話している。

 姉同様、距離に融通は利きそうだが、この先、樫の女王シンハライトや、マイル女王メジャーエンブレムといったほかの女王が復帰してきたら、どこかでぶつかるだろう。あらためて強さを見せた桜の女王ジュエラーを含めた「女王対決」で、そして、強豪牡馬とのガチンコ勝負でも、また私たちを楽しませてくれそうだ。

文=島田明宏

photograph by Yuji Takahashi