新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」が13日、皇居・宮殿で開かれ、大分市古ケ鶴の調理師、長野幸一さん(71)の作品が佳作に選ばれた。作品は天皇、皇后両陛下が目を通された。県内からは1首で、長野さんは「とにかくびっくりした。一生の運を使い果たしたんじゃなかろうか」と喜びをかみしめている。
 今年の題は「野」。2万205首(うち海外163首、点字29首)の中から、入選10首、佳作21首が選ばれた。長野さんの作品は「週末の老々介護の身支度に野良着忘れずカバンに入れる」。10年前から毎週末、母の介護のため、市内吉野の実家に帰る妻の美喜子さん(65)と、畑仕事をする長野さんの日常風景を詠んだ。
 8年前、歌会始の新聞記事が目に留まり、独学で短歌を始めた。息子が高校時代に使っていた辞典を引っ張り出して推敲(すいこう)を重ね、毎年応募している。「日本語は調べれば調べるほど難しい」と話す長野さんに、美喜子さんは「佳作はコツコツと真面目に生きてきた夫へのご褒美でしょう」とねぎらった。
 臼杵高校を卒業後、働きながら大阪市内の調理師専門学校を卒業。ホテルやレストランで腕を磨き、1979年に古ケ鶴に食堂「よしの」を開いた。朝の仕込みをしながら頭をひねり、客足が落ち着いた頃、店のいすに腰掛けて小さなノートに思い浮かんだ歌を書き留める。「これからも身の丈に合った歌を詠み続けたい」と笑顔を見せた。