手ごろな大きさ。基本はもちもちなのになぜかパリパリ感もある皮。創業40年の「メキシコ」のタコスは、特製サルサソースでも、最近若手スタッフが勧める塩でも、いや調味料など一切付けなくても実に味わい深い。 現オーナーの儀武直子さん(53)の夫、息次さん(故人)が創業した。熱中すると限度がなかったという息次さんは、当時店があった北谷町で基地ゲートを出入りする人に片っ端から自分のタコスを食べさせ、改良工夫を重ねて独自の味を編み出したという。店の看板に店舗名より「タコス専門店」と大々的に書かせたのも、類似店が少なかった当時「おいしいタコスを出す店とPRする戦略だったんでしょうね」(直子さん)。 メニューはドリンク類を除けばタコス(1人前4ピース600円)のみ。だから席に着くと「何人前ですか?」とだけ聞かれる。今やネットや全国放送でこうした注文の仕方は有名になったが、作業服姿の青年の「6ピース」といった、腹具合に応じた注文にも柔軟に対応する。地元で愛されるゆえんだ。 創業後は三線に打ち込み、毎日のように店で客と歌っていた息次さんが5年前急逝した際は、直子さんは「大切な人を奪ったすべてが憎くて」店も畳もうかと思ったという。そもそも続けようにも息次さんはタコスのレシピを残していなかった。だが「一番身近で作り方を見てきたのは私」との思いで夫の店を守ってきた。皮の揚げ加減など多少の手を加えたところもあるが「あの人ならきっとそうしたはず」と思う。 来年の七回忌を前に、直子さんは店の看板を「メキシコ」を大きくしたものに作り替えるつもりだ。「儀武息次の店」がどう進化するのか、しばらく目が離せない。(中部報道部・前田高敬) 【お店データ】宜野湾市伊佐3の1の3。水曜定休で営業時間は午前10時半〜午後9時。ただし売れ行きの良い夏場など「タコスの皮がなくなり早じまいしてご迷惑掛けることも」と儀武さん。電話098(897)1663。