国民的学園ドラマとして人気を博した『3年B組金八先生』。だが、現役の公立高校校長・森虎雄氏は「先の大戦を日本の侵略戦争と断じ、反自衛隊を訴えた金八先生は若者に誤ったメッセージを送った」という。

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『3年B組金八先生』(TBS系)は1979年から2011年までに全8シリーズが制作・放送され、私の赴任校でも多くの生徒が視聴していた。

 武田鉄矢演じる中学教師の坂本金八が教え子の悩みに体当たりで応える感動物語だが、気になったのは随所に登場した「反日思想」だ。

 最たるものは1982年10月放送のスペシャル版「贈る言葉」である。

 視聴率33%を記録したこのスペシャル版では、桜中学を卒業した教え子が同窓会を計画するのだが、物語の最中、弥市という体格の良い男子生徒が「高校を出たら自衛官になりたい」と口にすると、和やかなドラマの様相が急転。おどろおどろしい音楽が流れ、顔面蒼白の金八先生が「弥市が自衛隊……」とうめく。

 その後、多くの登場人物が自衛隊を「攻撃」するこんなセリフを次々と呟く。

〈自衛隊と言っているけど、ありゃ軍隊だろ。軍隊なんてものは、戦争するためにあるんだろ〉

〈私、やだ。弥市に鉄砲、持たせるなんてこと。自衛隊の練習、ほらテレビで見たでしょう。あれはまるで戦争よ〉

 当時、日教組の強かった学校現場では、確かに「反自衛隊」の風潮があった。実際、ある高校生が担任に「自衛隊に入りたい」と相談したら、「お前は軍事オタクか」とからかわれた例もある。日教組教師は自衛隊を悪と決めつけて断罪し、自衛隊こそが国や国民を守るという視点が欠如していた。

 ドラマで最も激しく自衛隊を批判するのは、兄が学徒出陣で戦死したという君塚校長(赤木春恵)だ。兄の志を継ぐため教職を選んだ彼女はこう語気を強める。

〈当時の教師のスローガンというのは、『教え子たちを二度と戦場に送るな』でした。ところが近頃は就職斡旋の一つとして、自衛官募集のパンフレットを生徒に手渡す学校や教師が出てきた。これは一体どういうことでしょうか〉

「教え子を戦場に送らない」は日教組のスローガンであり、君塚校長の言葉は典型的な日教組の主張である。国民的な学園ドラマで政治的なスローガンを垂れ流すのは、放送の公共性に鑑みて問題ではないか。

 しかも視聴者の中には親が自衛官という生徒もいたはずだが、その子の心境をまったく考えていない。今なら自衛隊関係者の人権問題にまで発展しかねない、悪質なヘイトスピーチと言えるだろう。

【PROFILE】森虎雄(もり・とらお)/1956年、東京都生まれ。上智大学文学部卒業。明星大学大学院人文学部研究科教育学専攻修士課程修了。公立高校の教員、教頭・校長を歴任し現職。森虎雄のペンネームで出版した著書『反日日本人は修学旅行でつくられる』が話題に。

※SAPIO2016年10月号