年齢・性別不詳、独特のハスキーボイスで鮮烈なデビューを果たし1990年代、『サヨナラ』で120万枚を超えるヒットを記録した女性シンガーのGAO。『サヨナラ』の秘話や、意外なプライベートの素顔についても迫った。

――1991年、年齢・性別不詳でデビューされたのが印象的でした。

GAO:バンドの勝ち抜きコンテストでデビューしたんですけど、そこで出会ったレコード会社のディレクターが、「男か女かわからない、何才かわからない」ボーカリストを探していたんです。そこで「性別も年齢も不詳にしたらどうでしょう」と私から提案したんです。

 元々音楽は、年齢とか性別を知って聞くものではないと思っています。どんな人が聞いても、自分のことだと受け止めることが多いと思うんです。私もそういう音楽の聞き方をしてきましたし、この年齢の人が歌っているから、この年齢の人が聞かなきゃいけない、という先入観を持たずに聞いてほしいと思っています。

――それが、今でも生年月日を明かしていない理由?

GAO:そうですね。音楽に年齢は関係ないと思います。たとえば、13才の頃に作ったメロディーを元に作った曲を、Twitterにアップしています。13才の時に感じた詩に、今メロディーをつけたらこんな感じだろう、続きをつけたらこんな感じだろうというのが新鮮だったんです。何十年も前の自分とコラボレーションをしたような経験をしました。

――年齢は今でも明かされていませんが、女性だというのは公になりました。

GAO:デビューした後にショップに行くと、あまりにも男性ボーカリストの棚にCDが並んでいるので、「女性ボーカルの棚に置いて下さい」と言って回りましたから(笑い)。

――今でも男性と間違われる?

GAO:そうですね。公衆のトイレですれ違うと、振り返られることがあります。昔は、「なに、あなた!」ってトイレの清掃員のかたに囲まれたことがありますよ(苦笑)。20代の頃、デビュー前に銭湯に行っていたのですが、「こっちは女風呂です」と何回も言われました。髪がベリーショートだったせいもあるんでしょうね(笑い)。

 GAOの活動を休止していた頃は、結べるくらいに髪を伸ばして金髪にしたんですけど、ハードロックをしている男性に間違われました。

 あと実は、ワンピースを着てライブしたことがあるんです。男装だとか宝塚みたいだとあまりにも言われるので、スカート姿でライブをしたんですけど、お客さんの反応はイマイチでした(苦笑)。

――GAOさんが女性と知って、泣きだしたファンもいたそうですね。

GAO:私は山口県出身なので、そのころ一人称は「わし」を使っていたんですけど、デビュー前のライブのMCで「わしも一応女性なので、男性のお客さんも応援してください」と言ったんです。すると、会場の空気が止まったんですよ。ライブが終わった後に何人か女性が来て、「GAOさんって女性なんですか?」と聞かれたから「そうだよ」って答えたら、泣きながら走り去ってしまいました。

 デビューしてから、たくさん手紙をもらったんですけど、性別と年齢を不詳にしていたので、だいたい1行目に「ごめんなさい」と書いてあったんです。男性と間違えてごめんなさい、という意味なんですけど(笑い)。これは勘違いされ過ぎだな、女性だと言わなきゃいけないと思いました。

――男性からも女性からも、モテモテなんでしょうね。

GAO:全然モテないですよ。音楽をやっている人ってちょっと変わってるので、人気者になることはありますが、それほどモテないんです。たとえばギターリストは1日何時間もギターの練習をしているんですよ。それって、恋人は耐えられますか?

 私はボーカルですから、発声の研究でいつ大きな声を出すかわかりません。部屋にいても「あー!」って突然声を出したり歌い出すので、友達が驚きます。街を歩いていても、突然声を出しますから。いかに自分の出したい声に近づけるかで、いつも頭がいっぱいですからね。

――『サヨナラ』は切ない失恋ソングですが、歌詞は実体験?

GAO:あの歌詞を書いたころは失恋をしたことがなかったんです。恋愛的な失恋にはなっていますけど、そのほかに大切な人との別れとか、身内の別れがあって、そういうものに喪失感とか切ない思いを感じていたんです。そこからもう一歩前に、生きている人間は進んでいかなきゃいけないという思いを込めて書いた曲です。

――経験を経て、歌い方は変わった?

GAO:変わりましたね。1990年代に作った曲は自分の経験というよりも、想像や人の話、本を読んで作るものが多かったんです。こうして年齢を重ねてきて、いろんな経験をすると、リアルに感じてくる部分はあります。自分の書いた詩で、今まで響いたことがない言葉に、泣きそうになることもあります。

 たとえば、『LOVE』という曲があるんですけど、母にプレゼントした曲なんです。結婚がテーマになっていますが、運命的な出会いなどを歌っています。母は数年前に亡くなったのですが、その曲を歌うと、思い出がよみがえってきます。

 その曲に、「誕生日にいつかくれたギターで やっとふさわしい歌を届けよう」という歌詞があります。私が歌手になりたいと言った時、一番の応援者は母でした。母は「いいギターで弾いた方がうまくなるから」と言って、中学生の私に高いギターを買ってくれました。やっとふさわしい曲でお返しができるという、母への気持ちを込めた歌なんです。

【GAO(がお)】
9月14日生まれ。山口県出身。1990年、NHK『全日本勝ち抜きロック選手権 BSヤングバトル』にバンド・GAOとして出場し優勝。翌年、ソロシンガーとしてメジャーデビュー。1992年4月、セカンドシングル『サヨナラ』が累計123.6万枚のミリオンセラーに。1996年3月GAOの活動を休止、2000年よりギャングスタラッパー・REAL Gと名前を変えて活動。2008年、GAOとしての活動を再開。2016年09月25日、池袋・アブソルートブルーにて『ギター・ツイッター・ライブ』開催。

撮影■黒石あみ