人気お笑いコンビ・ピースの綾部祐二が来春から拠点をアメリカ・ニューヨークに移し、将来的には俳優を視野に活動することが明らかになった。一般的に日本人のショービジネス界への進出は難しいと言われているが、その成功のカギはどこにあるのだろうか。
 
 まずは語学力。これに関して彼は「まったく話せないのでニューヨークに移住後、2〜3年は下積みとして勉強する」と話している。

 だが綾部が尊敬する俳優として挙げた渡辺謙は映画『ラストサムライ』に出演が決定した後に猛勉強。結果、5か月後の本番までに英語のセリフを流暢に読みこなすだけでなく、現地メディアからのインタビューも通訳もつけず、全て英語で対応できるまで高めたと言われている。

 つまり、撮影まで日が迫っていたために習得スピードが速まったともいえるのだ。それにならって綾部も「夢の日付」を細かく設定したほうがいいのかもしれない。

 続いて渡米後の生活についてだ。「俳優としてレッドカーペットを歩く前に、まずはコメディアンとして活動する」と語っていたが、どんなコメディを志すのかも重要である。

 お笑い芸人でいえば例えば、ニューヨーク、ロサンゼルスと先日から自身初となるワールドツアーを行い、今月18日に台湾でフィナーレを迎える渡辺直美や、これまで韓国やラスベガス、ロサンゼルスを回ってきた陣内智則がいる。

 2人がいずれも成功しているのは、言葉の壁を必要としない芸で勝負しているからだ。渡辺なら100kg超の体の動き、陣内は音と映像で笑いをとっている。

 また目下、謎のシンガーソングライター・ピコ太郎による動画『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』が世界中で大ヒットしているが、これも簡単な英語に加えてクセになるリズム、そして彼自身の強烈なビジュアルインパクトがセールスポイントとなっている。

 そこでコメディアンとして名を売るのであれば、まずはピコ太郎のような万国共通でウケるネタを渡米する来春までに「名刺代わり」として作り、You Tube上で流すのもテかもしれない。

 だが綾部の最終的な夢は、いずれ俳優になりたいというものだ。しかも渡辺謙を憧れの俳優に挙げているところを見る限り、映画『マスク』や『トゥルーマンショー』などの映画で知られるジム・キャリーのようなコメディ俳優ではなく、重厚な演技派をめざしているもよう。

 だが演技力に関しては、昼ドラ『別れたら好きな人』(東海テレビ)で主演するなどキャリアとしてはないほうではないが、エンターテインメントの本場で生き残るのは並大抵なことではない。

 ただ、その中で活路もある。好例がかつて俳優・今井雅之が作った戯曲『THE WINDS OF GOD』(ザ・ウインズ・オブ・ゴッド)だ。神風特別攻撃隊をテーマとしたこの作品は、オフブロードウェイやイギリスなど世界でも上演され、高い評価を受けた。
 
 つまり何か言いたいかというと芥川賞作家である相方・又吉直樹の筆力もいっそのこと借りて、1本、世界に通じる舞台作品もしくは映画を作るのである。もちろん主演は綾部。こうすればレッドカーペットも夢ではない。
 
 最後に、渡辺謙と同じく『ラストサムライ』の出演をきっかけに渡米し、現在もハリウッドを拠点に活動している俳優を紹介しよう。それが真田広之だ。

 真田は最近ではスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めるテレビドラマシリーズ『エクスタント』に、スピルバーグの指名で2年間出演するなど活躍しているが、その彼がwebのインタビューで海外での日々を振り返って答えているので引用してみたい。

≪何のあてもなく、怖いもの知らずで飛び込んで10年あまり。なかなか思うようにいかない時期もありました。畑を耕すところから始めて、種をまいて、水をやって、肥料をやって、気がついたら月日が経って、ようやく芽が出てきたかなというのが、この10年という時間だった気がしますね≫

 あの真田広之でさえ10年かかって今「ようやく芽が出てきた」と語っているほどハードルはやはり高いのだ。

 だが……。自分の人生、無謀な挑戦かどうかなんて他人が決めることではない。さらには人を楽しませるエンターテインメントの世界である、ロジカルに生きても面白くない。成功のカギは実は自分の心の中にあるのだろう。

 いつか「世界の綾部」がオスカー像を手にし、アカデミー賞授賞式の画面越しにピースサインをする日を楽しみに待ちたい。

(内堀隆史/放送作家・コラムニスト/歌謡曲、演歌、ドキュメンタリー、トーク番組、旅番組/テレビ構成、急な執筆依頼も受けるのがモットー)