ここ最近、コンビでありながらピンでテレビ出演する芸人が増えている。なかには、漫才やコントなどのステージ以外で、コンビとしてほとんど見なくなった芸人もいる。そうした動きが加速しているのはなぜか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 ピース・綾部祐二さんが来年4月からニューヨークで活動することを発表しました。コンビは解消しないものの事実上の活動休止であり、来年3月でレギュラー番組9本を降板することからも、本気のほどがうかがえます。

 綾部さんは渡米の理由として、「以前からハリウッドが夢で挑戦を決めていたが、来年40歳になるから」「先生(相方・又吉直樹さん)の芥川賞受賞が刺激になった」を挙げていましたが、その背景には芸人をとりまくテレビ業界の事情が垣間見えます。

 見逃せないのは、コンビ芸人の単独出演が年々増えていること。アンジャッシュ、博多華丸・大吉、ハライチ、オードリー、メイプル超合金など、年齢や芸歴を問わずコンビ芸人の単独出演が増えていますし、サバンナ・高橋茂雄さんや麒麟・川島明さんなどは情報番組のコメンテーターをそつなくこなしています。

 かつて制作サイドは「コンビで呼ぶのがセオリー」、芸能事務所も「まずはコンビで売れてから」と考え、双方とも「そのほうが持ち味を発揮できる」とみていましたが、現在は必ずしもそうとは言えません。

 特に現在のバラエティーは、放送時間よりも長く撮影したなかから、面白いコメントやボケ、ツッコミなどをダイジェスト版のように編集しています。短い言葉でテンポよく笑いを取れる芸人でなければ画面に映りにくく、その技量がなければ、いないのと同じ。「それなら話術と個性のある1人だけで十分」ということなのです。

 昨今、どのテレビ局も制作費の削減を迫られている上に、芸人の全体数は増える一方。制作サイドが「多くの候補から、話術と個性のある芸人のみをピックアップしよう」という買い手市場になっているのです。また、特番以外はネタ番組がなくなり、コンビでのテレビ出演機会が激減したという厳しい現実が、「単独出演で生きる道を探さなければ」という気持ちを高めています。

 さらに、芸人MCが増えたのもポイントの1つ。芸人MCが進行役に加えてツッコミ役を兼ねる形が定着して、コンビのツッコミ役が活躍しにくくなりました。コンビのツッコミ役がバラエティーではボケ役に回りがちなのはそのためであり、特にひな壇のある『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)のような番組では、本来のツッコミ役・ボケ役を問わず、MCがすべての芸人にツッコミまくっています。これは裏を返せば、「コンビのツッコミ役はいかにボケられるか?」が単独出演の成否を握っている」ということでしょう。

 このように芸人たちは、コンビで培った話術や個性とは別のものを求められ、それを身につけなければバラエティーに出演できないということ。もはや、コンビ芸人の“単独出演”というよりも“ピン芸人化”というほうがしっくりくる気がします。

 そんなコンビ芸人の単独出演を見ていて感じるのは、自分のキーワードを増やす努力。分かりやすいところで言うと、アンジャッシュ・渡部建さんのグルメ、高校野球、夜景、恋愛心理学、オードリー・春日俊彰さんのケチ、ボディビル、フィンスイミング、メイプル超合金・カズレーザーさんのバイセクシャル、破天荒エピソード、インテリなど、複数のキーワードで番組に呼ばれ、話を振ってもらえるように準備しています。そのキーワードを芸人同士で奪い合うような状態なのは気がかりですが、しばらくはこの流れが続くでしょう。

 最後にふれておきたいのは、“コンビ格差”。「コンビとしてもうワンランク上に行くために、単独出演を頑張ろう」という前向きな芸人は多いのですが、その結果“コンビ格差”という副作用が生じやすいのが難しいところ。彼らの理想は、「劇場でのライブだけでなく、バラエティーにもコンビで出演すること」ですが、「個人出演が充実してもコンビ格差があるうちは、それが叶いにくい」という悩みを抱えているのです。

 コンビ芸人たちはそんな悩みを抱えながらも、「活躍の場を確保し、自らの話術と個性を伸ばす」ために個人出演を続けていくでしょう。今後は「あれっ、この人ってコンビだったの?」という芸人がますます増えるかもしれません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。