日本シリーズ進出を賭けたクライマックス・シリーズ(CS)が始まる。どこのチームが駆け上がるが気になるのはもちろん、大人にとって大事なのは勝ち負けを超えて楽しむこと。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が「CSを大人として10倍楽しく見る方法」を伝授する。

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 セ・リーグもパ・リーグも、12日からクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージがスタートします。セはレギュラーシーズン3位のDeNAと首位の広島、パはレギュラーシーズン2位のソフトバンクと首位の日本ハムが激突。6試合制(首位のチームに1勝のアドバンテージ)で先に4勝したほうが、日本シリーズへの出場権を獲得します。

 プロ野球の話題は、なんだかんだ言って大人の定番でありたしなみ。ひと味違う大人を目指しつつ、CSを「10倍楽しく見る方法」を考えてみましょう。「あれ? どっかで聞いた言い回しだな」と思った方は、さすがよくご存じでいらっしゃる。エモやんこと江本孟紀氏が1982年に、プロ野球の内実を暴露した『プロ野球を10倍楽しく見る方法』という本を出版。大ベストセラーになって、映画化されたり続編が出まくったりしました。

 たぶん30代以下には馴染みが薄い言い回しなので、頭をプロ野球モードにする意味を込めつつ、随所で使ってみましょう。「企画書を10倍魅力的に見せる方法を教えてやる」とか「ホッピーを10倍おいしく飲む方法を知ってるか」とか。若い世代は新鮮味を感じ、中年世代はニヤリとしてくれるはず。どちらも、具体的な方法は各自でお考えください。

 話は戻ってCSですが、2007年にスタートして今年はちょうど10年目です。10年のうち、3位のチームが2位のチームを倒してファイナルステージに進出したのは、セが今年含めて4回で、パはなんと7回。ただ、さらにファイナルステージも制して、3位のチームが日本シリーズに進出したのは、2010年のロッテだけです。ちなみに2位のチームでは、2007年中日と2014年阪神が進出しました。

 もし今年DeNAが広島を倒して3位からの日本シリーズ進出を果たせば、CS史上2度目の快挙です。DeNAファンは「一度あることは二度ある」を合言葉にしつつ応援すれば、より盛り上がるに違いありません。セで2位以下のチームが進出という意味では「二度あることは三度ある」を合言葉にしてもいいでしょう。

 いっぽうの広島は、2013年、2014年(どちらも3位)に続いて3度目のCS出場ですが、過去2回とも日本シリーズ出場は逃しています。ファンは「三度目の正直」を合言葉に、熱い声援を送りましょう。「二度あることは三度ある」は論外ですが、うっかり「仏の顔も三度まで」を合言葉にしてしまのもタブー。三度目の今回は、DeNAの下剋上を寛大に許してもいいという意味になってしまいます。

 パは2位のチームが順当にファイナルステージに進んだ年は、今年を入れて3回しかありません。そして過去2回とも、1位のチームに負けています。2位からファイナルに進んだソフトバンクは、まさに「三度目の正直」を狙いたいところ。この場合は「仏の顔も三度まで」も間違いではありません。首位の日ハムのファンは、そんなケナゲな願いをけ散らす意味で「二度あることは三度ある」を合言葉にしましょう。

 短期決戦でカギを握るのは、何といっても第1戦の勝敗。しかも首位チームには1勝のアドバンテージが与えられているので、初戦をものにすればいきなり2勝のリードとなります。アドバンテージがつかなかった2007年も含めて、これまでの9年間で首位チームが初戦で勝ったのは、18ゲーム中11回。なんと、すべて首位チームが日本シリーズに進出しています。初戦を落とした場合も、7回中4回は首位チームに軍配が上がりました。

 仮に今年も広島や日ハムが初戦で勝利をあげたとしたら、過去のデータを当てはめると100%そのまま進出ということになってしまいます。広島ファンと日ハムファンは、「最初に勝てば、もう大丈夫」と早めに祝杯をあげるのも一興。いっぽうDeNAファンとソフトバンクファンは、もし初戦に負けても落ち込んでいる場合ではありません。「史上初の快挙」を目指すという壮大な目標に向かって、さらに応援に熱を入れたいところです。

 DeNAやソフトバンクが初戦に勝ったとしたら、ファンは「よし、これで4割2分以上の確率で勝てる! バッターだったらイチローをはるかにしのぐ高打率だ!」と、一気に期待をふくらませましょう。まあ、相手が勝つ確率は5割を大きく超えているわけですが、そこは目をそらすのが大人のひいき目です。そもそも初戦の結果がどうであろうと、首位チーム以外が勝ち抜ける確率は6分の1なんですけど、「6分の1もあるのか!」「競馬よりよっぽど高確率じゃないか!」と数字を前向きにとらえて応援を楽しみましょう。

 応援の甲斐なくひいきのチームが日本シリーズへの進出を逃したとしても、気を抜いてはいけません。最後の仕上げが残っています。オフィスでここぞというタイミングを見計らいつつ、思いっきり悲しそうに「ああ、クライマックスシリーズで負けちゃうなんて、最大限に暗い気持ちになっちゃうよ。……クライ、マックス」とかましましょう。少なくとも同情の笑いを得ることはできるはず。野球って、本当にいいもんですね。