40代独身女性の本音に迫るこのシリーズは、読者からの大きな反響をいただき、4回目を迎える。生涯未婚率が高まる中、平成22年度の国勢調査結果によると、40代独身女性でその後の10年間に結婚した人は、たったの「1%弱」。一方で、いま40代の独身女性の30%強が、「結婚願望がある」と答えている(※)。40代独身女性は結婚を、したくなかったのか、できなかったのか、これからするのか。理想と現実のはざまに揺れる女たちのそれぞれの事情。第4回は、不倫愛を貫こうとする「42歳、マミの場合」をお届けする。
(※明治安田生活福祉研究所「20〜40代の恋愛と結婚」より)

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■42歳、福岡県出身、東京都在住、公務員、マミの場合

「出会ったのは30歳の時。仕事で行った、とある受賞パーティーでした。当時彼は39歳のテレビ局ディレクター。最初の5分で意気投合しました。仕事から趣味の話まで、とても合って。その後、銀座のバーで飲み直し、帰り際に『付き合わない?』と言われました。私はその時フリーだったから、『速攻OKするなんて簡単な女と思われるかな』と思いながらも、OKする気まんまんでした。次の一言を聞くまでは。『オレ、結婚してるけど』っていう──」

 文京区の閑静な住宅街の中にひっそりと佇むカフェで、マミの話を聞いた。落ち着いた街並みは、公務員として堅実に働くマミに合っている。若手実力派女優、黒木華似の和風美人。

「既婚者だと知って、ショックでした。でも、結婚してる人と付き合うなんてありえないと思ったから、『なーんだ、結婚してたんですね』って、つとめて冷静に言って、その日は別れたんです。そろそろ結婚しなくちゃと思っていた時期だったし、何より、私の人生に不倫はないと思っていたから。モラルの問題として。私、両親ともに教師の家庭で育った、お堅い人間なんです」

 福岡の進学校から東京の有名私大に進学。やりがいと働きやすさを考え、公務員を選んだ。絵に描いたようなエリート安定街道をゆくマミはしかし、“ありえなかった”不倫へと足を踏み入れてゆく。

「数日後、彼からメールが来たんです。名刺交換をしていたから、職場のメールに。内容は、私たちがパーティーで話した、とある社会問題について、もう少し私の意見が聞きたいというものでした。関連する番組を企画しているから、参考にしたいと。丁寧でビジネスライクな、感じのいいメールだったから、そういう話ならと、友人として、会うことにしました」

 西麻布の鮨屋で、時を忘れて語り合ったという。

「色っぽい会話は全然なくて、政治とか経済について、自分の意見をガンガン主張したんですよ。彼は、そんな私の話を楽しそうに聞いてくれて。大人だなと思いました。こなれていて、でも、ちっとも気取ってなくて。

 付き合った人は、それまで一人だけだったんです。大学の同級生で、生真面目な人。夏休みの宿題を、毎日計画通りに進行して、一週間前に終えるような。私もそういうタイプだから、真面目な人と相性がいいんだと思ってきたんですが、テレビマンの彼に出会って、新しい世界のトビラを拓いた気持ちになりましたね。何度か食事を重ねるうちに、ホテルに行こうと誘われて……。もう、気持ちに蓋ができなくなってしまったんです」

 以来、金曜日の夜、二人で食事をした後、男はマミの家に泊まる。土曜日を一緒に過ごし、夜遅くに男は自宅マンションに帰っていく。平日も、週一回は会う。そんな日々が続いているという。

「専業主婦の奥さんは、浮気に気付いていると思います。10年以上、土曜日は必ずいないんですから。そんな関係でも家庭は成り立つんだなぁと……。私だったらイヤだけど。でももう、相手の家庭のことは考えたくない。私は平日頑張って働いて、穏やかな週末が過ごせればそれでいいんです」

 12年間、不倫を続けながら、結婚を望まなかったのだろうか。

「最初の段階で、妻と離婚はできないって言われたんです。子供が二人いるからと。そういう意味で、彼のやってることはずるいけど、嘘はついていない。私は結婚したかったから、他にいい人を見つけて、早く別れようと思っていました。彼だって私を都合よく使ってるんだから、私だって、食事や旅行に連れていってもらったり、楽しい思いをさせてもらって、利用してやろうって気持ちだった。

 でも、気持ちが不安定になることはあって、何度も喧嘩もしたし、苦しい思いもしました。昔、不倫をしていた女の人が、不倫相手の子供を殺害する事件がありましたよね。あの人の気持ち、わからなくないです。不倫相手に怒りをぶつけると、それは付き合っている自分への自己否定につながるから、どうしても奥さんや子供に憎悪が向かってしまう」

 腐りかけたときは、飲み会で知り合った男性と積極的にデートに出かけたという。しかし、彼を上回る人は現れなかった。

「楽しさが全然違うんです。彼といるときの世界がカラフルだとしたら、他の男の人といるときはモノクロ」

 それでも、子供が欲しかったマミは、36歳を迎えた年に、さすがに別れを決意した。しかし、思いがけない事態がマミを襲う。

「別れ話をした数週間後、彼にガンが見つかったんです。ステージII。私がいないと耐えられないと言われて、別れられなくなってしまいました。お見舞いにはほとんど行けなくて惨めだったけど、彼を精神的に支えたのは私だという自負があります。この時に思ったんです。破たんした家庭の妻よりも、心から愛しあってる愛人に、私はなろうと。幸い私には安定してやりがいのある仕事があるから、結婚にすがりつく必要もないわけですし」

 しかし世の中には、心から愛しあっている夫婦もいるではないか。

「それは本当に幸せな人たちだと思います。私がそうなれなかったのは残念だし、不器用なんだと思う。でも周りには、仮面夫婦とか、セックスレス夫婦とか、たくさんいるんですよ。考えてみたら、若い頃に出会った人と一生愛し続けるって、皆ができることじゃないと思う。私は彼と付き合って12年ですが、今でも会話は尽きないし、セックスも楽しいし、こんなに愛しあえる人と出会えて幸せだと思っているんです。

 あと、最近、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの離婚問題が話題になっていますよね。人から聞いたんですが、不倫略奪して一緒になったカップルって、別れる率が高いんですって。私は、略奪できなかったから続いている面もあるかもしれない」

 堅実に生きてきたのに、ロマンチスト、それがマミだ。最後に、不倫への風当たりが強い最近の状況をどう感じるか、聞いてみた。

「ベッキーがあれだけ叩かれるのはかわいそう。人を好きになったことがある人なら、相手に妻がいると知っても、なかなか気持ちが止められないことくらい、わかりますよね。そして男性は許されがちなのも納得がいきません。ただベッキーは、好感度が売りのタレントだったから、復帰が難しいこともわかるんです。女優さんとか、何か芸のある人だったら、違ったんじゃないかな。

 これって、一般人でも言えると思うんですよ。不倫にはまればはまるほど、潰れないために、他の何かが必要だと思う。だから私は、超仕事人間と言われるくらい働くし、最近は地域のボランティアに参加して、少しでも人に役立つ人間になろうと思っています。不倫だけの女にならないように」