長寿と食生活に密接な関係があるのは誰もが知る常識だが、裏を返せば「何を食べるかによって寿命が縮む」ということだ。

「損失余命」という用語がある。WHO(世界保健機関)など各国の医療機関・団体で使用されている「何らかの行為によって縮まる寿命」のことだ。『それで寿命は何秒縮む?』(すばる舎)の著者・半谷輝己氏が解説する。

「大気汚染や騒音といった環境から、ストレスや性交渉といった生活行為に関するものまで損失余命の研究が進められていますが、中でも食事については、食材ごとの摂取量ベースで算出されつつあります」

 そう聞くと「命を縮める食べ物」を早く知りたいところだが、損失余命を知る際には重要な注意点がある。

「数値はリスク面のみを積み上げて算出され、プラスに寄与する要素を考慮していません。そもそも人間は何も食べずには生きられない。多くの食べ物に何らかのデメリットとメリットがあるわけで、損失余命は“食べてはダメ”という短絡的な指標ではないです」(同前)

 この前提を踏まえたうえで、どんな食事に、どの程度の損失余命があるとされているのか見ていく。

 最近、国際的なニュースになったのが「加工肉」だ。昨年10月にWHOが「加工肉と赤肉(哺乳類の肉のこと。「赤身肉」ではない)の発がん性リスク」について発表して物議を醸した。

「福井県立大学の岡敏弘・教授の研究を基に算出すると、ロースハム1枚で19秒、ジャンボフランクフルト1本で1分14秒の損失余命となります」(半谷氏)

 古くから研究対象となっている「コーヒー」。米ピッツバーグ大学のB・コーエン名誉教授は1979年に、「コーヒー1杯で平均寿命は20秒縮む」という研究を発表している。含有カフェインが膀胱がんの発症率を高めるという理屈だが、これもやはりリスク要因だけに着目した数字だ。コーヒーには血栓をつくりにくくする効果があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを低下させるといった研究もある。

 半谷氏の著書では日本人の主食「コメ」にも触れ、「お茶碗1杯の白米で39秒縮む」とある(前出・岡教授の試算に基づく)。その根拠になっているのは米糠に含まれる無機ヒ素だ。

 ヒ素といえば豊洲市場の地下水が話題だが、実はミネラルウォーターにも一定量のヒ素が含まれるため、「軟水1リットルで59秒縮まり、硬水はそれ以上という試算」(半谷氏)という。

「ミネラルウォーターには放射性物質のラジウムも含まれる場合があるので損失余命が増える。その点で見れば、塩素消毒によるリスクはあるがヒ素やラジウムを低減している水道水の方が理論上のリスクは低いといえます」(同前)

 では、こうした情報をどう受け止めればいいのか。管理栄養士で日本抗加齢医学会指導士の森由香子氏は、こうアドバイスする。

「個人によって栄養状態は異なり、これさえ食べればよい、あるいは食べなければよいという食べ物はありません。白米から得られるブドウ糖は脳に必要なエネルギー源ですし、米を食べないで揚げ物や肉ばかり食べ続けると認知症リスクが高まるといわれています。摂らないことのデメリットも考えないといけません。腹8分目が前提ですが、食べたいものを食べるということも大切です」

 要はバランス、なのだ。

※週刊ポスト2016年10月14・21日号