打たれ弱い部下にどう接するか
現在、多くの管理職が部下との対話に苦労している。部下と良好な関係を築くためには、どのような心がけや行動、そして言葉が有効なのだろうか? 部下のタイプ別に、取るべき具体策を専門家に聞いた。
2010年、ワールドカップ。前評判を翻して大健闘した日本チーム、最大の功労者が岡田武史監督である。あれだけのバッシングを浴びながら結果を出したわけだから、半端な打たれ強さではない。うちの部下にもあの強さが何分の一かでもあったら……そんな上司のタメ息が聞こえてきそうだ。
最近の若手は弱くてすぐ折れる。きつい言葉をかけると欠勤する。揚げ句の果てには辞めてしまう。そんな話はよく聞く。何不自由ない豊かな時代、蝶よ、花よと大事に育てられたいまの若手に、岡田監督並みの打たれ強さを求めることは八百屋で鯛を求めるようなものだろう。
日本におけるコーチングの第一人者、本間正人氏は「打たれ弱い人が急に打たれ強い人になるわけではない」と断言、「特訓合宿に行かせて根性を入れ替えさせれば何とかなる」という安易な論を退けたうえで、こう話す。「現にそうでも、こいつは打たれ弱い奴だ、と思って接しないことです。人間関係には、自分が相手に対して抱く期待や予測が実現してしまうというピグマリオン効果が働くからです。そのうえで認識すべきは、打たれ弱さそのものは変えられないけれど、仕事の場面で弱さが出ないようにすることは可能、ということです」。
具体的にはどうすればいいのか。「まずは自分の胸に手をあてて、部下が弱くなっているのは自分に原因があるのではないか、自省してみることです」(本間氏、以下同)。「失敗するなよ」と繰り返し、いざしくじると、「おまえってヤツは……」と、人格攻撃に及ぶ。対応策を相談に来たときも、「自分で考えろ」とにべもない。上司がこういうふうであれば、部下が萎縮し、ひ弱になっていくのは当たり前だ。
そうではなくて前向きの失敗なら許し、逆に褒め称えることだ。さらに部下に接する際のコミュニケーションを変えることだ。自分は何も変わらず、部下にだけ変化を求めるのは虫がよすぎる。
ポイントは失敗したときの叱り方にある、と本間氏はいう。「人と事を分けて、人の部分は否定しないことが重要です。顧客へのフォローが足りなかったとか、値引き額をすぐに提示できなかったとか、部下がとった事柄の欠点は指摘してもいいのですが、おまえが悪いとか、人格に関わる批判は行わないこと。さらに、対応策を部下自身に考えさせたうえで、適切な助言を加え、名誉挽回のチャンスを与えることです」。
気をつけるべきことは「怒る」のではなく、「叱る」ことだという。「怒るというのは、相手がやったことに対する感情的かつ否定的な反応でしかありません。叱るというのは、相手がやったことを否定しつつ、しかるべきビジョンを示す理性的な対応なのです」。
また、叱った後のフォローも大切だ。部下の仕事を完膚なきまでに否定してもいいが、「俺も若い頃は部長にケチョンケチョンに駄目出しされてさ……」と、自分の若い頃の失敗談を最後に付け加える。あるいは、「おまえの着眼点はいいけれど、この部分の掘り下げが弱い」と、長所を褒めつつ欠点を指摘する。職場ではいいにくかったら、アフター5に飲みに連れ出してもいいし、道すがらのエレベーターホールや社員食堂で伝えてもいい。「叱られたら、誰でもエネルギーレベルが下がってしまい、明日は会社を休もうかな、と弱気になるものです。そんなときには、仕事はうまくいかなかったけれど、おまえは必要とされているんだという態度を示して、人間としてのつながりは断ち切らないようにすること。そうすれば、次の日も元気に出社してくるはずです」。
こうした打たれ弱い部下を支えるためにも、本間氏は月1回、15分でいいから、各部下との定期面談の時間を持つことを勧める。1回15分で毎月だから、年間で3時間となる。「たったこれだけの時間で、部下の働きぶりを改善させることができるのです。いきなり退職を申し出てきたり、心の病気で入院したりしてしまう事態も確実に防止できます」。
※すべて雑誌掲載当時
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本間正人 ほんま・まさと●NPO学習学協会代表理事、帝塚山学院大学客員教授、東京大学文学部卒業、ミネソタ大学大学院修了。NHK教育テレビ「実践ビジネス英会話」の講師などを歴任。コーチングやポジティブ組織開発、ほめ言葉などの著書多数。----------
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