■加瀬加奈子(ガールズケイリン第一人者)

この夏、48年ぶりに復活した女子競輪の「ガールズケイリン」。そのエース的存在に躍り出たのが、男勝りの32歳、加瀬加奈子である。トラックレーサーと呼ばれる自転車のハンドルには黒字でモットーの「男道」との二文字が書かれている。

女だからと甘えず、強く生きたいとの思いが込められている。目指すは先行逃げ切り、パワフルな走り。「自分は男前のレースをしたい」という。竹を割ったような性格。「本当は男だろ? とよく言われる」と豪快に笑い飛ばす。いえいえ、どうして。実はチャーミング。ケイリン仲間に細かいアドバイスを出すなど、気配りの人である。

人気も急上昇。9月。NHKのスポーツニュースで特集されたりもした。でも浮かれない。本人はいたって謙虚である。
「メディアに取り上げられてもらうのはうれしいですけど、まだそれに応えられる走りはできていない。まだまだ。もっと鍛えて、強くならないといけない」

トライアスロンの元国体選手で、得意だった自転車を生かすべく競輪選手に転向した。新潟出身。子どもの頃、両親が離婚し、母の女手ひとつで育てられた。「親のスネばかりかじってきた。これから賞金を稼いで、親孝行したい」と漏らしたことがある。

ガールズケイリンは赤、青、黄色などのカラフルなディスクホイールの自転車、ユニフォーム姿で走るから、男子と違い、とても華やいで見える。だが、やはり公営ギャンブル。車券を買われる立場の気苦労は計り知れない。時にはファンから罵声も飛んでくる。
「大きなプレッシャーを感じている。自分が勝って周りが喜んでくれたり、負けて怒ったりするのも(ケイリンの)面白さです」

3月の競輪学校の卒業記念レースを完全Vで制し、ガールズケイリンで勝利を積み重ねている。目標は年末のガールズグランプリ制覇&賞金女王、夢が「賞金女王を20回獲って引退すること」。いずれ賞金を稼いでフェラーリを買いたいそうだ。

(松瀬 学=文・撮影)