今、世の中はバラエティ豊かな恋愛論者で花盛りだ。「恋愛とは何か」を語り、お悩み相談にもバシバシ回答していく。そういった役割は、かつては作家や心理学者の専売特許だった。しかし人々の価値観が多様化し、ウェブやSNSなど発信手段も格段に増えた現在、いろんなバックボーンを持った恋愛論者が登場。医師、AV男優、社会学者、お笑い芸人、占い師、会社経営者、キャバ嬢、バーテンダー、ラブホスタッフ…などなど、性別も職業もキャラクターも様々な恋愛論者が各メディアで活躍している。

そこで気になるのが、「その恋愛論者は一体どんな恋愛をしているのだろうか?」ということだ。それぞれの語る恋愛論は、実際の恋愛体験とどう接続しているのか──。そんなテーマで話を聞いてみたいというのが本連載の主旨だ。

●恋人になってから「AV男優になる」と宣言!?

一人目は、AV監督として20年以上にわたって作品を撮り続け、深い洞察と優しい語り口から“性と愛の哲学者”とも称される二村ヒトシさん。数多くの著書を出版している恋愛論者のトップランナーだ。

中でも有名なのが、男性向けに書いた『すべてはモテるためである』と女性向けの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(ともにイースト・プレス)の2冊だろう。人間心理の奥底まで潜り込み、「恋愛するとはどういうことか」を徹底的に突きつめたこの2冊は、恋愛に苦しむ男女を救うバイブルとも評されている。

「それはとてもうれしいことだけど…何で自分が恋愛の本を書いているのか、ときどき疑問に思うんですよ。僕は大学生のときに知り合った妻と20代で結婚したんだけど、彼女とつき合ったあとに『AV男優になる』って宣言して、そのまま監督になって現在に至ります。つまり、既婚者でありながら仕事でいろんな女優さんとセックスしてるわけですよね。一応妻の理解は得ているつもりだし、今でも仲良く夫婦をやっているけど、おそらく彼女には長年にわたって計り知れない不満や我慢があったはず。そういう僕に、はたして恋愛を語る資格があるんだろうかって…」

●初めて接した“他者としての女性”

そんな葛藤を吐露してくれた二村さんだが、初恋は高校1年生のとき。相手は同じ演劇部で活動していた1つ年上の女子だった。根っからのオタク男子で、男子校で男友達とガンダムやゴジラの話ばかりしていた二村さんにとって、その先輩は初めてまともにデートをした女性だったそうだ。

「うちは早くに両親が離婚していて、開業医の母親と暮らしていました。そんな母と、病院の看護師さんたちに囲まれ、僕はひたすら甘やかされて育った(笑)。だからその先輩は、ある意味で初めて接した“他者としての女性”だったんだと思う。母親たちのように無条件で僕を肯定してくれるわけじゃないし、せっかく誘ったデートでも、何を話していいか全然わからず一方的に好きなアニメの話ばかりしていた。さらに、キスはおろか手もつないでないのに、性的なアプローチまでしてしまい…最後は『男女の関係になるより、友人でいるほうがより良い関係でいられると思う』と書かれた手紙をもらい、あっけなくフラれました」

抑えきれない性欲とエロに対する並々ならぬ関心を抱きながら、生身の女性と上手な距離感を測れず、次第に非モテをこじらせていったという二村さん。しかし次第に“ヤリチン男”と化し、やがてAV男優にまでなってしまう…そこには一体、何があったのか。続きは後編にて!
(清田隆之/桃山商事)

二村ヒトシ(にむら・ひとし)
1964年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学中退。AV男優を経て1997年に監督デビューし、痴女・レズ・女装モノなど特殊なジャンルを開拓する。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)、電子書籍『恋愛で暴走しないための技術』(幻冬舎plus+)などがある

筆者プロフィール
清田隆之(きよた・たかゆき)
恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。これまで1000人以上の悩み相談に耳を傾け、それをコラムやラジオで紹介。雑誌『精神看護』やウェブメディア「日経ウーマンオンライン」などで連載。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)がある


(R25編集部)

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