文化放送のアナウンサーであり、気象予報士でもある伊藤佳子アナと鈴木純子アナのお二人。前回は、お二人に天気予報をもっと有効に活用するためのポイントを伺ったが、今回はお二人の著書『いざというときに身を守る 気象災害への知恵』の内容にも触れつつ、気象災害から家族や大切な人、そして自分を守るためのポイントを紹介していこう。

 ちなみに同著ができた背景には、伊藤アナが災害のニュースや天気予報を伝える中で実感したという“天気予報の大きな役割は人の命を守ること”という思いがあるという。その思いは共著者である鈴木アナも共有しており、彼女もまた“気象災害は遠いものではなく、身近にあること”ということをもっと広く知ってもらいたいという思いがあるのだそうだ。

●被害が大きくなるほどなかなか救助は来ない

 この夏は、台風や豪雨を受けて土砂災害や浸水などの危険性からさまざまな場所で「避難準備情報」や「避難勧告」「避難指示」などが出た。しかし、いざそうした情報が出ていても「自分は多分大丈夫」「避難はさすがに大げさでは?」などの思いがよぎって、実際に避難行動に移すのには、ちょっとした心理的なハードルがある。その点に関して2人に質問すると、伊藤アナは開口一番「被害が大きくなるほどなかなか救助は来ない」と語る。

 ごく限られたエリアでの災害ならまだしも、より広域に及ぶ気象災害の場合、事態の深刻度が増せば増すほど避難渋滞が発生したり、至る所で道路が遮断されたり、救助を求める人が増えるため、避難や救助が難しくなると、伊藤アナは指摘する。

 また、災害の初期段階で出される「避難準備情報」は、高齢者や子供、体が不自由な方など、いわゆる“災害弱者”といわれる人に避難をはじめてもらうための情報なのだと鈴木アナは補足する。

 “準備情報”と聞くと、心づもりだけでいいのかと思ってしまうがそうではないのだ。もし、こうした情報が出た場合、家族や近所にお年寄りや小さな子供を抱えた人がいれば、避難を促したり、手助けしてあげることが望ましい。そして、常に早め、早めの行動こそが、気象災害から身を守るための知恵の1つなのだ。

●遅れることもある「警報」や「注意報」

 続いて、各種警報や注意報はどういったタイミングで出るのだろうか? その辺を伊藤アナに尋ねると次のような回答をもらった。

「警報、注意報は対象する現象が発生するおおむね3時間から6時間前に出るというのが目安です。また、短時間強雨の場合は2〜3時間前に発表します。大雨に関する気象情報なら1日前、大雨に関する注意報はおおむね半日から数時間前となっています。ただ、大雨が降り始めた後や、災害が起こってしまった後に出ることもあるので、その辺は先ほどの避難に対する心構えと同じですね。また、“土砂災害警戒情報”というのもあるんですが、これは大雨警報が発表されている状況でさらに土砂災害の危険性が高まった時に出るので、「警報以上」に危険な状況だと意識したい情報です」

 基本的に警報や注意報は、おおむね数時間前に出ることが目安とのことだが、遅れて発表されることもあることを踏まえるならば、先ほどの避難に関する話と同様に、「まさか」に備えて、意識的に気象情報を集めたり、早めに行動することがポイントとなる。

●気象災害を家族でシミュレート!

 ここまで紹介してきたことに加えて、備えておきたいのが気象災害へのシミュレートだとお二人は言う。

 例えば、避難所までの経路に関して。1つのルートしか想定していないと土砂災害や冠水で通れなかったり、クルマでの避難を考えていても渋滞や通行不能状態で徒歩避難を余儀なくされるケースがあるからだ。また、身近に車イスを使っている人や足の不自由な人がいる場合には、階段がないルート、勾配が少ないルート、家族や身近な人が抱えて避難する際に負担が少ないルートなどを検討しておくことは、極めて重要だといえる。

 あとは気象災害の種類によっても避難ルート、避難場所も変わってくるので、その辺についてもあらかじめ想定しておくことでスムーズな避難行動に移れるとのこと。

 ちなみにシミュレートをする際には、自治体が提供しているハザードマップが役立つという。浸水しやすい地域、土砂災害が起こりやすい地域を把握することで、安全な避難ルートを検討しやすくなるからだ。

 また、気象庁のWebサイトでは、気象に関するさまざまな情報を提供しているので、ブックマークしておくと良いと言う。中でも、鈴木アナがオススメするのが、指定河川洪水予報とレーダー・ナウキャスト、高解像度降水ナウキャスト。

 指定河川洪水予報なら、最寄りとなる指定河川のはん濫の危険性をチェックすることができ、レーダー・ナウキャストと高解像度降水ナウキャストなら、全国の降雨状況(レーダー・ナウキャストは雨・雷・竜巻)の推移を把握できるという。

●知っていれば防げることもある気象災害の被害

 今回は『いざというときに身を守る 気象災害への知恵』の内容に沿った形でダイジェスト的に大雨を軸とした気象災害に関する話を聞いてきたが、同著では、大雨、雷、強風、竜巻、花粉症、熱中症、光化学スモッグ、黄砂・PM2.5、台風、霜、大雪、雪崩、吹雪、ヒートショック、気象病という形で、多岐に渡る気象災害に備えるための知恵と知識が紹介されている。

 普段から2人のラジオでのしゃべりを聞いている筆者としては、まるで放送を聞いているかのような口語体の文体なので、同著は、非常に読みやすかった。インタビューを実施した8月31日の段階で既に重版が決定していることからも、同著の人気が推し量れる。

 ちなみに同著には、もう1つ重要なテーマがあるという。それは、お二人が執筆を進める中で合言葉的に使っていたという、「自分の身は自分で守る」という考え。もちろん突き放した意味ではなく、防災対策を考えていく上で、大切だといわれている“自助/共助/公助”の“自助”の部分を指す。「自助」がしっかりとできていれば、共助や公助もより強固で確かなものにすることができる。それが結果として、“天気予報の大きな役割は人の命を守ること”ということに繋がってくるのだ。

 そしてインタビューの最後に伊藤アナが語った「災害は“まさか”ではなく“いつか”起きるもの」という言葉は、誰しもが心にとどめておくべき言葉といえるだろう。