NTTドコモは21日、新潟市におけるドローン実証プロジェクトに関する連携協定を関係各社とともに締結した。ドコモでは、ドローンを活用した「水稲プロジェクト」「海岸保安林プロジェクト」において、ディープラーニングを用いた高精度な画像解析技術などで貢献していく方針だ。

■国家戦略特区、新潟市で2つのプロジェクト

 国家戦略特区に指定されている新潟市ではいま、ドローンを活用した2つのプロジェクトが進行している。記者説明会に登壇した新潟市の篠田昭市長は「全国トップの水田面積をもつ新潟市は、米の算出額もナンバーワン。その新潟市の水田が、水稲プロジェクトの実証フィールドになる。産地間競争に打ち勝つ、高品質米の生産、収穫量の向上、労力の削減も目指していく」と説明。続けて「新潟は全国でも最大級の、砂丘列の連なる地域。この砂丘列の飛散・塩害から街や田畑を守るため、江戸時代から植林をしてきた。海岸保安林プロジェクトでは、その海岸保安林が実証フィールドになる」と説明した。

 「水稲プロジェクト」は、ドコモ、新潟市、ベジタリア、自律制御システム研究所(以下、ACSL)の4者によるもので、実施期間は9月21日から2018年3月31日までを予定している。水稲の病害虫の発生状況の監視や、収穫時期の予測を目的にドローンを活用し、米の品質向上・収穫量増加に取り組む。

 例えばドローンを使えば、これまで田んぼの中まで入って確認しなければならなかった“いもち病”の早期発見が行える。また水田センサーから得た水位、水温などのデータにドローンの空撮画像を組み合わせて解析すれば、病害虫や雑草発生状況の把握、収穫適期の予測などが行える。若手の新規就農者には、穂肥のタイミングを分かりやすく伝えることができる。こうした取り組みにより高品質な水稲栽培を実現、収穫量を向上させる狙いだ。

 「海岸保安林プロジェクト」は、ドコモ、新潟市、ベジタリア、エアロセンスの4者によるもの。海岸保安林のマツ枯れ対策および維持管理の手法開発を目的にドローンを活用し、伐倒駆除の効率化とマツ枯れ被害の防止に取り組む。

 これまで、広大な面積を誇る松林の中からマツ枯れに感染した樹木を見つけるのは大変な作業だった。しかしドローンの空撮画像を利用すれば迅速に、かつGPSにより正確に1本1本の場所を測定できるため、効果的な対策が打てる。将来的にはAI(人工知能)がディープラーニングによりマツ枯れの特徴を学習、自動的に発見できるようにしていく。また、遺伝子診断により感染木の完全除去も目指すという。

 篠田市長は「ICTの取り組みが呼び水となることで、さまざまな企業が新潟をフィールドに活躍いただけるようになる。新潟市のもつポテンシャルを最大限に引き出す、大きな可能性を秘めたプロジェクト。国家戦略特区の効果を最大限に発揮して農村、保安林地域を元気にしていきたい」と述べていた。

■ドコモは高精度な画像解析技術で貢献

 続いて登壇した、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏は「昨年度は、新潟市の農業生産者さまのスマホやタブレットに水田の水位、水温といったデータを送る実証実験を行ったが、このニーズがとても高いことが分かった。そこでドコモでは4月から、ベジタリアさまが提供する水田センサー“Paddy Watch”の販売提携をさせていただいている」と挨拶。

 ドコモではこれまで、農業生産現場における通信エリアの品質管理、農業ICTのサービス展開などにおいて実績を重ねてきた。吉澤社長は「今回はディープラーニングを用いた、高精度な画像解析技術で貢献させていただく。農業生産者の方、保安林を管理されている方の目になることができれば」と抱負を述べている。

 ベジタリア 代表取締役社長の小池聡氏は「新潟市内の460ha(東京ドーム100個分以上)の水田に300以上のセンサーを設置した。水位、水温などのデータをクラウドで管理して、スマホで遠隔から確認が行えるようにしている。昨年のアンケートでは90%以上の管理者の方から、こうした取り組みが有効であると回答があった。今年度は、これにドローンの画像を追加する」と説明。

 また「今年から、水田に加えて海岸保安林も管理する。海からの風、潮、高波、砂といったものから沿岸、田畑を守るのが保安林の役割。砂地でも育つマツが植えられているが、病害でいま全国的にも減少している。管理に航空機、無人ヘリコプターなどが使われることもあったが、小回りがきかず、また地形的な特性にも対応できていなかった」として、今年から始まるドローンによる実証プロジェクトの効果に期待を寄せた。

■ドローンを提供する2社

 水稲プロジェクトにドローンを提供するACSLは、千葉大学発のベンチャー企業。20年にわたりドローンを研究してきたという、同社 代表取締役CEOの野波健蔵氏は「正確な情報を収集するためには、正確な写真が必須。人工衛生とドローンの空撮写真では、アナログテレビと4Kテレビくらい違う。ACSLのドローンでは平均15m程度の風速でもビクともしないため、精細な写真を空撮できる」と性能をアピールする。そして「農業分野での革命を新潟市からスタートさせたい」と意気込んだ。

 海岸保安林プロジェクトにドローンを提供するエアロセンス 代表取締役の谷口恒氏は「これまで、マツ枯れの被害状況は目視で確認してから作業していた。しかし、弊社のドローンに搭載したカメラからの空撮画像の解析結果、GPSによる位置情報、マルチスペクトルカメラによる分析を活用すれば、被害場所がピンポイントで把握できる。このため的確かつ低コストでマツ枯れ対策につなげられる。今後はドローンによる維持管理手法を確立して、新潟市をはじめ全国のマツ林の保全維持に貢献していきたい」と説明している。

■ドコモはセルラードローンに注力

 NTTドコモの吉澤社長は、記者説明会後の囲み取材に応じた。

--- ドローンの分野におけるドコモの今後のスタンス、ビジョンは?

今後は遠隔での制御が可能になる、セルラードローンに力を入れていく。実映像をリアルタイムに伝送するなどのニーズに対応できる。ドローンが上空にあるときの、既存のネットワークに対する干渉の影響、上空でのネットワーク品質などをしっかり検証して、次のビジネスにつなげていきたい。

--- 今後も農業ICT分野への注力をしていく?

第1次産業である農業、水産業、畜産業といった分野でしっかり取り組み、生産性の向上などに貢献していく。どのくらい協力できるか分からないが、実験を重ねながら成果を見ていきたい。

--- 将来的な売上の規模感は?

ソリューションの売上としては、あるレベルのところまでは持っていきたい。