2016年10月11日、前日銀理事の門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストが日本記者クラブで講演。2013年1月以来の日銀・異次元金融緩和について「2%の物価目標達成への道筋は見えていない」と指摘。9月21日の日銀総括検証と「量から金利」への政策枠組み変更について、「2%目標が達成できないことを日銀自身が認めたもの」との見方を示した。「2%は事実上の中長期目標になり、今後は80兆円の国債買い入れにこだわらず、緩和の長期戦に持ちこたえるようにした」と述べた。

日銀による異次元金融緩和は「2年をめどに消費者物価指数の前年比上昇率を2%とする」との目標を掲げたが、達成できず、3年経過した今年4月には「2017年中」に先送りした。3年半も大規模な緩和を続けたにもかかわらず、この目標の達成も絶望的だ。

門間氏は景気を過熱も引き締めもしない中立金利(自然利子率)がほぼゼロの状況なのにゼロ金利状態を続けたため、(異次元緩和は)ほとんど効果がなかった可能性がある」と分析した。

さらに「日本の潜在成長率が人口減少などにより0.5%以下と低いため中長期的な成長率について企業や家計は自信を持ちにくく、賃上げや消費拡大に動かない」と指摘。経済成長や賃金から見る限り、「2%物価目標」が実現しやすい環境は整っていないと結論づけた。

中立金利のゼロ環境で取るべき政策について、(1)低い潜在成長率を構造改革によって引き上げること、(2)財政政策の積極的な活用、(3)マイナス金利の効果を上げるためのキャッシュレス化━を挙げた。

その上で、門間氏は「基本的な理論では中長期的な物価上昇率は、中央銀行が目標としてコミットメント(約束)した値を実現できることになっているが、実際は理論と現実のギャップが生じている」とし、金融緩和の不足が問題の要因ではなく、マネーの量は既に潤沢との認識を表明。「2%の物価目標達成の是非を含め物価安定の意味や金融政策の根本的な考え方をめぐって、内外の議論が進むことを期待する」と求めた。(八牧浩行)