2016年9月23日、第2次世界大戦後最多に膨らんだ難民・難民対策を討議する国連サミットが19日に開かれ、保護強化を求める「ニューヨーク宣言」を採択した。しかし、主要な受け入れ先の欧州諸国では難民などへの反感が強まる一方。ドイツのメルケル首相が「時計の針を戻したい」と対策の誤りを認めるなど、混迷を深めている。

サミットには約80カ国の首脳や閣僚が参加。宣言は難民や移民の人権を守る対策を強化するとともに、国際的な責任を分担し、受け入れ国への支援などを約束する。さらに18年末までに、難民と移民に関する問題を恒久的に解決するための包括的枠組みを示す合意文書の採択を目指す。

難民危機打開に向けた各国の「政治的意思」を示す狙いがあるが、宣言は具体的な受け入れ人数には触れておらず、今後に課題を残した。宣言に法的拘束力はない。

経済協力開発機構(OECD)によると、紛争などの影響で母国を脱出し、OECD諸国に難民申請した人数が15年は過去最多の165万人を記録した。申請人数は10年以降、増え続けており、15年は前年から倍増した。

15年の内訳はシリアが全体の約22%に当たる約37万人で最も多く、アフガニスタンン約25万人で約15%、イラクが約18万人で約11%と続く。この3国で全体の半数近くを占める。

全体の75%以上が、欧州連合(EU)加盟のOECD諸国に申請した。最も申請が多かったのはドイツの約44万人で、3分の1 がシリア人だった。ハンガリーが約17万人で2位だが、実際にはハンガリーにはとどまらず、他国へ向かうケースが大半。英国やフランスの増加率はドイツに比べて低く、申請者の出身国もエリトリアやスーダンなどアフリカ大陸の国が多いという。

これに対し、欧州諸国では反難民・移民感情が高まっている。EU離脱を決めた6月の英国の国民投票で、難民・移民対策が大きな争点になったのは記憶に新しい。

これまでに100万人以上が流入した独でも7月にメルケル首相の地元の北東部メクレンブルク・フォアポンメルン州で行われた州議会選挙で、反難民などを訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」が台頭。メルケル首相率いる保守系のキリスト教民主同盟を第3党に追いやった。ベルリン市議会選挙でもAfDが躍進。メルケル首相は19日の記者会見で「できることなら時計の針を何年も戻したい」と述べ、難民受け入れ対応に問題があったことを認めた。

EUが難民の受け入れを加盟国に割り当てることを決めてから約1年。ハンガリーは割り当て決議の無効を訴えて欧州司法裁判所に提訴したほか、10月に割り当て受け入れの是非を問う国民投票を行う予定だ。 フランスではイスラム系移民の排斥などを掲げる極右政党の「国民戦線」が支持を伸ばしている。(編集/日向)