2016年10月7日、国際通貨基金(IMF)「特別引き出し権」(SDR)の構成通貨に今月1日から加わった中国の人民元。これにより、人民元は米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円に並ぶ国際通貨に仲間入りした。しかし、中国には日米欧などにはない金融規制が存在する。市場の透明性をどう高めていくかが大きな課題だ。

SDRはIMFが89の加盟国に出資額に応じて割り当てる仮想通貨。国際金融の安定のため1969年に創設された。日本円は74年から構成通貨入りした。通貨危機などで外貨不足に陥った国はSDRと引き換えに他国から米ドルなどの外貨を受け取ることが可能。最近では2015年5月に債務問題を抱えたギリシャがIMFからの融資を返済するため、SDRを使った。

新たなSDRの構成比は、米ドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、日本円8.33%、ポンド8.09%の順。IMFは昨年11月にSDRへの採用を決めており、9月30日、チャイナドレス風の上着をまとって記者会見したラガルドIMF専務理事は「中国と国際通貨体制にとって大きな変化となる」と歓迎した。

人民元のSDR入りは、世界2位の国内総生産(GDP)を誇る中国にとって悲願の一つ。特に米国への対抗心を燃やす習近平政権は「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)創設や中国と欧州を海陸で結ぶ「一帯一路構想」などと共に中国主導の国際経済秩序の確立を目指している。

中国国営新華社通信はIMFから国際通貨としての「お墨付き」を与えられた意味を「SDR入りで中国経済に対する世界の信頼が高まる」と解説。中国共産党中央委員会機関誌・人民日報の電子版は、中国人民銀行(中央銀行)の責任者の話として「中国側は人民元のSDR構成通貨入りを契機に、一層金融改革を深化し、金融開放を拡大し、世界経済の成長促進、世界の金融の安定維持、世界経済ガバナンスの整備に積極的に貢献する」と伝えた。

これに対し、麻生太郎財務相は9月30日の記者会見で「中国のマーケット、為替など通貨の管理をきちんとオープンにしてもらわないといけない」「(中国が)すぐに通貨の価格管理などをやるとなるとSDRを維持する資格に欠ける」などとけん制。米国のルー財務長官も、SDRの構成通貨になることと、各国が外貨準備として積極的に保有することは「大きな違いがある」と指摘。「各国が対外決済目的で保有する準備通貨からは程遠い」との見解を示した。

背景にあるのは、為替管理などの不透明性。人民元は固定相場制と変動相場制の間に位置付けられる「管理変動相場制」を採用。中国人民銀行が毎朝、その日の取引の基準値を公表し、一定の範囲内で相場変動を認める。将来的には変動相場制に移行するとしながらも、現在は対ドルで基準値の上下それぞれ2%までの値動きを許容しているだけだ。

加えて、資金流出を恐れる中国は国境をまたぐ自由な資金移動を完全には認めておらず、外国人の対中株式投資には厳しい規制が残る。こうした点について、ラガルドIMF専務理事も「さらなる改革への取り組みが中国と国際経済の安定には好ましい」と注文を付けている。(編集/日向)