2016年10月6日、倉田秀也・防衛大学校教授が「北朝鮮の核・ミサイル脅威と日米韓抑止体制」と題して日本記者クラブで会見した。「北朝鮮のミサイルに対する防衛には日米韓の連携が必要だが、韓国は中国と敵対するミサイル防衛網に組み込まれるのを拒否してきた」と指摘。米THAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)導入に当たっても、レーダーが見通しにくい山間部に設置を予定するなど「中国に配慮している」との認識を示した。発言要旨は次の通り。

北朝鮮は2013年と16年の核実験後に核先制不使用宣言を行ったが、自らの核兵器があくまでも自衛的手段であることをアピールすることを狙った。中国が1964年に実施した初の核実験の際、無条件の核先制不使用を宣言したが、自らの核兵器が自衛的であると主張する上で効果があった。

北朝鮮は核先制不使用を公言する一方で、16年5月の党大会で金正恩氏は核先制不使用について「侵略的な敵対勢力が核でわれわれの自主権を侵害しない限り」との条件を示した。核先制不使用に条件が加えられたことは、核先制使用を許す状況が拡大したことを意味する。

金正恩氏は水爆実験直後の米韓合同軍事演習に対抗して、3月11日に「神聖なわが祖国の一木一草に少しでも手出しするなら、核手段を含むすべての軍事的打撃手段に即時の攻撃命令を下す」と述べた。核先制不使用を公言しながら、最高指導者がそれと逆行する発言を繰り返すことで、核先制不使用の信憑性を著しく落としている。中国やインドは(核開発初期段階で)そのような発言をしていない。

北朝鮮のミサイルに対する防衛には日米韓の連携が必要だ。米国は韓国に対し応分の約束を果たしてほしいと期待するが、韓国は中国と敵対するミサイル防衛網に組み込まれるのを金大中政権以来頑なに拒否してきた。北朝鮮のミサイルのみを対象とするという論法は朴槿恵政権も同じだ。米THAADミサイル導入を決定したが、サードの射程は200キロにすぎない。中国が警戒しているミサイル追尾X-バンドレーダーも長距離を見通せない山間部に置き、透視距離600〜800キロ程度。中国の内陸部を対象にしておらず、中国に配慮している。

各国が実施している対北朝鮮経済制裁は効いていない。メディアの多くは「中国が経済制裁のカギとなる」と報じるが、実際には中国が本当に石油を含めた民生部門を止める覚悟があるか疑問だ。徹底的に締めて一番困るのは中国なので、避けたい国がカギを握るというのは説得力がない。金融制裁や海上封鎖に近い制裁は効くが「戦争」ではないのできない。

共和党の大統領候補トランプ氏なども言及している「日韓核武装論」について、日本の一部の人たちは「日本も保有すべきだ」と賛意を示すが、私は反対だ。日本が核武装することによって米国でも防げなかった北朝鮮の核開発を防ぐことができるのか。米国の「核の傘」は効いている。米国の抑止が揺らいだなら日本は考えなければならないが、現段階で日本の核武装がもたらす効用は限りなくゼロだ。米国が日米同盟やめると言わない限り、核武装は意味がない。(八牧浩行)