2016年10月14日、11月8日投票の米大統領選挙まで約3週間に迫った。ここにきて、「わいせつ発言」で共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏の「包囲網」がさらに縮まっている。それでも強気の姿勢を崩さず、民主党候補のヒラリー・クリントン氏に対抗するトランプ氏。強気を支えるのは、米国内にくすぶるは既成政治への不満だ。

トランプ氏の敵はクリントン氏だけではない。米国各地の新聞を敵に回している。米紙の多くは大統領選をめぐって旗幟(きし)を鮮明にする。例えば、リベラル寄りのニューヨーク・タイムズは民主党候補を支持してきた。

ところが今回は事態が一変。伝統的に共和党候補を支持してきた保守系の地方紙がトランプ氏の大統領としての資質を問題視してクリントン氏支持を打ち出した。米政治専門紙「ザ・ヒル」の集計によると、米国での発行部数が上位100位に入る新聞社で、トランプ氏支持はゼロ。1982年の創刊以来、大統領選で中立の立場を守ってきた全国紙のUSAトゥデーはトランプ氏に投票しないよう呼び掛けている。

さらに、ニューヨーク・タイムズは1日、大統領候補が通常公開する確定申告書の提出を拒んできたトランプ氏が「1995年にホテルなどの事業破綻で約9億1600万ドル(約930億円)の巨額損失を申告し、税額控除を受けて最大18年間にわたり連邦所得税を支払っていなかった」と報道。ワシントン・ポストも7日、トランプ氏が2005年、テレビ番組の収録に向かうバス内で、既婚女性との性的関係を持とうとしたことを下品な表現で自慢げに語る音声をバス外からの映像とともに公開した。

トランプ氏は、これまでにもミスコン優勝者を「子豚」と呼ぶなどして女性蔑視の批判を招いてきたが、ワシントン・ポストが暴露した「わいせつ発言」は衝撃的だった。トランプ氏は謝罪したものの、米メディアによると、共和党下院トップのライアン議長は「私はトランプ氏を擁護しない。皆さんも自分の選挙区事情を考え、ベストな行動を取ってほしい」と今後はトランプ氏を応援しない考えを明らかにし、党所属の各議員も支持撤回をためらう必要はないと呼び掛けた。

それにもかかわらず、逆に共和党主流派を公然と批判するトランプ氏。米政治哲学者のフランシス・フクヤマ氏は読売新聞への寄稿で、最大の人口集団である白人の労働者層の根強い不公平感を背景に「最終的にはやはり接戦になるだろう」と予測している。

この中でフクヤマ氏は「過去10年以上にわたり、米国でも欧州でも、政治エリートたちは大きな間違いを重ねてきた」と指摘。「米国の場合、イラクとアフガニスタンという不人気な戦争に突入し、大恐慌以来最大の金融危機の下地を作り、庶民を傷つける一方、自分たちは利益を得た」と述べている。

その上で、「ソーシャルメディアや一日も休まない24時間ニュース放送によって、政府や企業、教会、警察など諸制度の信頼が損なわれている」などと言及。「既成エリートたちに対する反発が高まり、エスタブリッシュメント(既成支配層)への反旗を掲げる候補者たちが台頭している」と分析している。(編集/日向)